表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/52

第3話 ……おいはぎ?

 


「――この通りは毎日新鮮な野菜や肉が(おろ)されている領地一の市場だ。この先をまっすぐ行くと広大な畑が連なっている。それでこっちの通りが――」


 ノルヴィス様の案内で街を進んでいく。

 背の低い私の歩く速度に合わせて進んでくれているのでとても時間がかかってしまう。


 とても申し訳なかったが、彼は気にした様子もなく機嫌(きげん)よさげに歩き続けていた。



 そんなことでも喜びを感じてしまって、途中から街の話よりも彼の顔をじっと見つめてしまう。

 なんだかふわふわと変な感じだ。



 そうこうしていると一軒のお店の前で立ち止まった。




「ここは公爵家御用達(ごようたし)のブティックだ。店主の腕が良くてな、今屋敷にある服飾品はほとんどここに頼んでいるんだ」


 品のあるロイヤルブルーとホワイトで統一されたお店だ。


 店先の看板には「アヴァンシアテール」と書かれ、ひと際目を引く大きなガラス張りのショーウィンドウの中には女性なら誰しも目を奪われるであろう美しいドレスたちが飾ってある。


「わぁ! キレイ!」


 私も一瞬でくぎ付けになってしまった。

 だってこれだけいろんなデザインなど見たことがなかったから。



「いつもは屋敷にきてもらうんだが今日は場所を教えておこうと思ってな」


 店に入ると店主がすぐに顔を出す。

 亜麻色の髪のきれいな女性だった。


「いらっしゃいませ公爵様! お待ちしておりました!」


「ああ。今日はよろしく頼む」


「ええ、お任せください! こちらのお美しい方が奥様のフラリア様ですね? 初めまして、店主のサルディ・フロウと申します!」


「あ、はい。フラリアです。ん? フロウ?」


 女性と目が合う。

 彼女の外見はどこかで見たような気がしてならない。


 それにフロウという名前は……。


 何かが引っかかって首を傾げているとサルディさんはニコリと笑った。


「お話は息子から聞いております。公爵家騎士団1番隊隊長、ラウ・フロウの母親です!」



「ええ!? え!? だって年が……」


 若々しいサルディさんはどう見ても20代くらいの見た目をしている。

 ラウは確か10代後半のはずだ。


 どう考えても年齢が合わない。


「うふふ、奥様ったら! 私は40代ですわよ? 成人した子供の一人や二人いてもおかしくありませんわ」


「嘘でしょう!?」


 若見えなんて次元(じげん)じゃない。


「サルディは昔から見た目が変わらなくてな。そういうものだと思った方がいいぞ」


 驚き過ぎて言葉を失っているとノルヴィス様が遠い目でそう言った。

 もはや(さと)りを開いたような顔だった。


(ノルヴィス様にそんな顔をさせられるなんて……!)


 変なところに感動していると、ふいに視線を感じて振り返る。




 サルディさんに上から下までじっくりと見回されていた。

 笑顔だけれどはちみつ色の目だけは爛々(らんらん)と輝いている。



(……何だろう、少し怖い)


 敵意は全くこもっていないが別の何か……熱意のようなものがこもっているからだろうか。


 なんとなく顔が引きつる。



「ようやく奥様専用の服が作れるだなんて、光栄なことですわ! 公爵様、よろしいんですわよね?」

「え?」

「ああ、できるだけいろんなデザインのものを頼む」

「え?」


 1人だけ話についていけずに固まっていると、どこから出てきたのか店員さんが脇をがっちりと固めて奥の部屋に連行されていく。




「ああ嬉しいですわ! 今までは既存の服しか差し上げられませんでしたから! でもそれも今日で終わり! ようやく奥様のお体に合うものを作れるのです! 気合を入れましてよ!」


 大きな鏡のある衣装室に来ると、サルディさんは腕をまくり上げてテキパキと準備していた。


 メジャーやどう使うのか分からない計測器が立ち並び、助手さん達はメモをすぐにとれるようにスタンバっている。



 興奮気味に着々と準備を進めていく彼女たちとは対照的に私は嫌な予感に襲われていた。


 私専用の服を作るって、まさか……。



「さあさあ! ではさっそく採寸(さいすん)を始めましょう? まずは今お召の服を脱ぎ去ってくださいませ!」


「あ、出来合いのもので結構ですので帰ってもいいですか?」


「却下でございますよ~! 公爵様から厳命(げんめい)されていますの。しっかりと測って合う服を作るようにと! ということで、お覚悟くださいませ~」


 ニコリ。

 笑顔の圧がすごい。


 いつの間にか助手さん達に逃げ道をふさがれてしまい逃げ出すこともできない。


「さあさあ! お早く!」


「きゃー!? いやー!」


「すぐに済みますので! さあ奥様? 腕をお広げになってくださいませ!」


「あ、待って! て、手袋してください!」


「奥様のご体質については把握しておりますので抜かりはありませんよ! 我々一同細心(さいしん)の注意を払っておりますのでご安心を! はい、ばんざいしてくださいませ!」


 スポーンと脱がされ、シャシャシャッと次々にメジャーで測られて、目まぐるしく変わる状況に何が何だか分からない。



 結局私はそのまましばらくされるがままになっていたのだった。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


などと思っていただけた方はぜひとも下の評価機能(☆☆☆☆☆が並んでいるところ)から評価をお願いいたします!


おもしろいと思っていただけたら星5つ、つまらないと思ったら星1つ、本当に感じたままに入れてくださるとうれしいです。


また、ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


皆様から頂いた時間や手間が作者にはとても励みになりますので是非とも!宜しくお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ