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第1話 新たな日々

 

「あ! おはようございます奥様!」

「おはようございます!」

「本日は新鮮なお魚が入ってますのでディナーにお出ししますね!」


「ふふ、皆おはよう! 今日もよろしくね?」


「「「はい!」」」



 公爵邸に来てから5か月が経った。


 今では屋敷を歩くたびに使用人の皆さんから挨拶(あいさつ)を受けられるほどにはうち解けられてきたと思う。


 赤毛メイドの事件があってから敵意のこもった眼差しを送ってくる人もきれいさっぱりいなくなったし、私の毒がコントロールできるようになった影響も大きいだろう。


 毒のコントロールはまだまだ練習中だけど少なくともうっかり肌を触った程度では毒も薬もでなくすることはできている。


 それもこれも今頭の上に乗っている精霊が居てくれるからだ。


「アコニ」

「フュ?」


 頭から精霊をおろして手にのせる。

 掌よりも小さいこの精霊を、私は”アコニ”と名付けた。


 アコニは私とお揃いの緑色の髪を持った精霊で、他の精霊と比べても明らかに小さい。

 恐らく私の中の力から生み出されたからあまり力がないのだろう。


 他の精霊のように自然世界の何かを(つかさど)っているわけではなく、本当に私の力を制御(せいぎょ)することを専門(せんもん)に行う精霊のようだ。


 そして力が少ないからか、言葉も話せない。


「まあでもなんとなくこの子の言いたいことは分かるから問題はないんだけどね」

「フュー!」


 指でアコニの頭をなでてやれば嬉しそうにニコニコと笑っている。

 私もそれにつられて笑ってしまった。


 反応(はんのう)が小さな子供のようで非常に和むのだ。


「ああ、もう本当に可愛い! 私とノルヴィス様以外に見てもらえないのが残念で仕方がないわ! ねえイニスは本当に見えていないの?」


「ええ残念ながら。わたしもできるのなら見たかったです~!」


 後ろについてきていたイニスに話を振るけれど、やはり見えていないみたいだ。


 人間には精霊が見えない。


 でもノルヴィス様にはアコニだけは見えているそうだ。

 精霊王の泉でアコニの誕生の瞬間を見ていたからだろうか。


(それか精霊王からの嫌がらせとか?)


 どうにもアコニは何かとノルヴィス様と(きそ)っているというか、ノルヴィス様相手にマウントをとったり挑発(ちょうはつ)をしたりしている時がある。


(案外、本当にそうだったりして……)


 そう考えるとついため息が出てしまった。


「奥様?」


「あ、ごめんね。ちょっと考え事というか」


「お悩みですか? また気晴らしに使用人たちとパーティーでもしますか?」


「い、いえ! それは大丈夫よ!」


 キラキラと目を輝かせているイニスには悪いが、家の者達だけのパーティーをやる気はない。


 先日、私に触れても大丈夫となった時、使用人の皆はそれはもう大喜びしてくれて身内だけのパーティーまで開いてくれた。


 それはもちろん嬉しかったのだが何故か私と握手を求める長蛇(ちょうだ)の列が形成されてしまい、2時間耐久握手会となってしまったのだ。


 全使用人が列を為すものだから断ることもできなかったし、なぜ握手なんかと思ったがどうやら赤毛メイド事件の時に使用人たちの為に行動したことで好感度が爆上がってしまったかららしい。




「そうですか……残念です。でもやりたくなったらいつでも言ってくださいね! 爆速で準備するので!」


「あ、ははは。ええ、まあそのうち、ね?」


 もちろんパーティー自体は楽しかったし私の好みに合わせて作ってくれたお料理の数々も美味しくて涙が出そうだったけれど、しばらくは休ませてほしい。


 私はあいまいな微笑みを残して再び廊下を歩き始めた。


 向かう先は執務室だ。


「ノルヴィス様、フラリアです」

「ああ、入ってくれ」


 執務室に入るとノルヴィス様は剣を腰に(たずさ)えて使用人たちに指示を出しているところだった。

 これからどこかへ出かけるような姿にまたたく。



「どこかへお出かけですか?」


「ああ。町の視察にな」


「視察?」


「そう。月に一度変わりがないか様子を見に行くのも領主の役目だ」


 普段のおちゃらけた様子からは考えられないが、ノルヴィス様は仕事に対してはすこぶるまじめだ。


 以前の王都への遠征でも手早く片を付けて予定通りの帰還していたし、使用人たちに聞いても領主としての仕事も(とどこ)ったことがないという。


(意外と根はまじめなのかもしれないわね)




「そこでだ。フラリア、お前も一緒にいかないか?」


「え?」


「まだ領地の案内もしていなかっただろう?」


 そう言われればそうだ。

 今までは毒がいつ暴発するかという心配があったから街に出ることなんてできなかったが、今はそれが可能になった。


 だからこその提案だろう。


「もちろんお前のことは俺が守る。騎士たちも隠れてついてくるように言ってある。どうだ?」


 ノルヴィス様はこてんと首を(かし)げた。


(ずるいなぁ)


 そんな言い方されたら行きたくなるに決まっている。


 もちろん提案をのんだのだった。



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