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人生逆転

 寝る前にね、お布団に潜ってスマホを見てるのが私の一番楽しい時間。



 かわいい動物の赤ちゃんを見たり、誰にも言えないちょっとした悩みごとを書いておいて、知らない誰かからアドバイスもらったりとか。



 学校には役立たずな先生がいて、クラスには敵と、一見仲良しの友だちぶった敵(フレネミー)が数人いて、(向こうも私をそう思ってるんだろうけど、立ち位置護るためにはお互いに必要不可欠な人たち)、家に帰ればウザい大人がいる。


 私はとても辛い日々。


 このおやすみ前の30分は、私の1日の中で、心が休まるほんのわずかな貴重な時間だよ。


 で、これ。今日も恒例、おやすみ前の癒しの時間。スマホ見てたら、面白そうなアプリ広告が出て来て、さっそくインストールしたんだ。



《将来に不安を抱えているあなたへの応援ツールです♡ 今だけ、これが表示されたあなたへだけの特典アプリです。今すぐインストール!》



 なんかさ、自分用にカスタマイズされた広告が出るんだよね。私、広告にまで心配されちゃうなんて。ありがとうね。キミは人間より優しいんだね。



 えっと、クチコミでの評価は‥‥?



『これのお陰で運命が変わりました。神アプリです。これからも使い続けます!』


『ホントに信じられないです。こんなアプリがあったなんて!』


『疑った俺がバカだった。これを信じていればあれは回避出来たのに‥‥‥チクショウ!!』



 どうやら、自分の未来が分かる占いツールみたいだね。




 今の私の写真を3枚、ここに貼っておくとね、24時間後に再びアプリを開けた時、それが未来の自分の姿に変わってるんだって。


 その知りたい未来の日時設定は、何時でも可能らしい。ただし、指定できる未来は一点だけ。



 よーし、さっそく始めてみよう!!



 ♡まずは名前を教えてください。



 ──えっとね、ネットでは私は『VENOM(ヴェナム)もっちー』だよ。そう、毒持ち。



 ♡カメラを起動させて、今のあなたの姿を3枚ここに貼ってくださいね。


 

 カシャッ、カシャッ、カシャッ‥‥‥


 ──暗いとこで撮ったから幽霊みたくなっちゃった。ま、いっか。誰かに見せる訳じゃないし。



 ♡あなたのお誕生日はいつですか?


 ──20XX年 3月 XX日だよ。


 あ、そういえば私、もうすぐ13才のお誕生日だ。


 どうせ、何も貰えないよ。去年プレゼントにせがんだスマホが、ママのお下がりのこれだよ。それをWi-Fiで繋いでるだけ。ガマンだよ。わがまま言ったら、ママが困るからね。ママは昼も夜も働いて忙しいのに。



 ♡あなたが知りたい未来はいつ?


 ──えーっと‥‥‥そりゃ、運命の人と出会って、その人との運命的な瞬間だよね。


 入力フォームは具体的日時指定にはなってないし、そういう抽象的でもいいのかな? 



『運命的に繋がってる人との運命的な瞬間』‥‥っと。



 入力出来るってことはこれでもいいんだよね?



 えいっ! これで《登録》押して、OK?



 これで行ける?‥‥‥いけいけ‥‥‥あ、出来たみたい。



 《登録完了出来ました! 明日のこの時間をお楽しみに!!》




 ***




 次の日の夜、私は寝る前にさっそくあのアプリを開いてみることにした。



 だって、すっごく楽しみにしていたんだもん。


 だって未来の私の彼氏が見られるんだよ? 



「‥‥‥‥‥何コレ。思ってたのと違う‥‥‥」



 私は、『運命的に繋がってる人との運命的な瞬間』が見たかったんだよ?


 私が未来の彼氏と出会うところを。




 一枚目は、未来じゃなくて過去の写真じゃん。


 ママが、今の新しいお継父(とう)さんを連れて来て、私に見せた半年前の秋頃の。


 この人は、ママに働かせて自分は家にいて威張っててキライ。


 ヒドイ時は昼間からお酒飲んでウザ絡みしてくるから、私は自分の部屋に鍵かけて籠ってるんだよ。



 二枚目は‥‥‥


 嘘でしょう? テーブルの上には私の13才のお誕生日ケーキ!? あのお継父(とう)さんが私を祝ってるなんて?


 ワンホールのケーキに、13本のろうそくを立てて、私はとても嬉しそう。


 ここにママは写って無い。ママは相変わらずで、私の誕生日の夜も仕事でいないのね‥‥‥



 三枚目は‥‥‥


 床に落ちてぐちゃぐちゃに潰れたケーキ。


 ‥‥‥私、床にこんな格好で無理やり何されてるの??? 口に詰め物? 私、すごく泣いて苦しんでる顔だよね? アイツに馬乗りされて。‥‥これってもしかして首、絞められてない?



 私、誕生日にアイツに殺されるの? いつもみたいに絡まれたり叩かれるだけじゃなくて?



 ───そっか。



 次の誕生日にはそういうことになるんだ‥‥‥なるほど。



 不思議なアプリが教えてくれた私の未来。私はこれを信じるべきか、疑うべきか。




 う~ん‥‥‥来るか来ないかわかんない災害にだって事前の備えが重要なんだよね。


 ならさ、これだって同じことが言えるんじゃないかな───




 ***




 ───私の13才のお誕生日の夜に、私のみすぼらしい小さな木造のおうちは火事になった。



『──その火事で、煙を吸い込んで軽傷の子ども1名と、焼け跡から身元不明の大人1名の遺体が発見され、連絡の取れないこの家に住む父親と見られ、身元の確認を急いでいます。火元は、ケーキの上のろうそくと見られ、調査されています』


 そんなニュースが流れてんのを、ママと一緒に病室のテレビで見た。




 ママは家が無くなってすごく落ち込んでいたけれど、火災保険が降りることになって、少し元気になった。


 でもって、あの男が主導してたからママはすっかり忘れてたみたいだけど、そう言えばお継父さんの提案により、ママたちは再婚してすぐ、お互いが受取人として生命保険に加入していたんだって。


 お陰で、お継父(とう)さんの命と引き換えにより、保険金がたくさん貰えることになって、ママは複雑そうだったけれど、私は大喜びになった。



 これで、ママと私は二人で、新しいきれいなおうちで暮らせるらしい。やったー!!


 そのうえママは夜まで働かなくて済むようになるって。わーい!!


 

 そうだ! アプリのクチコミ書いておかなくちゃ。


 


『最高のアプリです。お陰で災害から身を護ることが出来ました。おまけに金運まで上がりました。一生感謝です』‥‥っと。




 ほんと、賢いし役に立つし、人よりずっと優しいアプリだよね~。


 ママとマックス感謝だよー。お継父(とう)さん ♪( ´∀`)人(´∀` )♪



 クスッ‥‥‥‥

 




                                オワリ  

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