表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス転移に巻き込まれた僕、魔王に殺された後、なぜか幼女に転生させられてしまいました…  作者: sironeko*
3章 蠢動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/91

甘いお菓子と甘くないお話

しろねこですが、腹の中が黒いのでくろねこかもしれません。どうもお久しぶりですsironeko*です。

さて、少しずつお話が進んでいきます。見えないところでもね。

「ん〜〜っ! ふわっふわでおいしいっ!」


 目の前のショートケーキを一片(ひとかけ)口へ運ぶと、途端に甘くておいしいって信号が脳内を駆け巡った。

 思わず頬を押さえて唸ってしまう。

 なんかこれだけ聞くとやばいモノみたいだけどそんな事ない。スイーツはやっぱり至高だ。


「ははは、喜んでもらえたなら良かったよ。君がそこまで感動してくれるとは思わなかったけど……」

「っ……! い、いまのなし! 聞かなかったことにして」

「はいはい」


 反対のソファーに座っている男、ゼノにそう言うけど、彼は茶化すように返事をした。

 紅茶の件といい、私の体はおいしいものにはとことん弱いみたいだ……。


「しかし、3ヶ月前の君じゃ考えられないな。どうやら、君をこの店に連れてきたのは正解だったようだ」

「ちょっと、勘違いしないでね? 私がここにきたのはあなたが話をしたいって言うからだし」

「そうだったな」


 ゼノはまた茶化すようにそう言った。

 なにか言い返したいけど逆効果になりそうだしやめておこう。


 さて、私は今、ゼノと二人で下町の方にあるカフェに来ている。主要な道路からは少し奥に入った、路地裏的なところにあるお店だ。

 ひっそりとやっているお店だけど、ここのスイーツとか、コーヒーなんかは全部おいしい。私の知ってる範囲だけどね?

 唯一不満なのは、1ヶ月くらい前にこの店に初めて連れてきて、存在を教えてくれたのがゼノってことだ。


「しっかし、同じ嗜好を持つ人が近くにいるのはいいものだね。魔族(おれたち)は基本的に甘いものよりも塩やスパイスの効いたものを好むから、仲間を探すのは苦労するんだ」

「それ、シ――私の知り合いも言ってたよ。こんなに素敵な味を楽しめないなんて残念だって思っちゃうけど」

「全くだ」


 ゼノは楽しそうに頷いた。

 何度か話してて思うけど、ゼノって思ったよりも子供っぽい。

 実際若いらしいけど……一体何歳なんだろ。

 魔族基準で若いとか言われても想像つかないし。


『大体歳は25ってところか。まだまだ子供だな、こいつは』


 えっ、そんなに若いの……?

 てっきりこの(なり)で50歳です! とでも言われるものかと思ってた。

 見た目相応か、ちょっと年齢が上くらいかな。


「その点、ここのお店の店主さんも変わり者なのかな?」

「はははっ、そうかもね。一体どこでこの技術を磨いたんだか。……まあ、俺は美味しければなんでもいいんだけど」

「適当だな……」


 ゼノは私の言ったことなんて聞いてませんとばかりに、紅茶の入ったティーカップを口元へ運ぶ。

 ……ゼノの頼んだ焼き菓子もおいしそうだなぁ。今度買いにこよ。


「――って、そうだ! 話ってなんなの?」

「まあ雑談もいいけど、そろそろ話すか」


 大事なことを思い出してゼノに聞くと、彼はティーカップをテーブルに置いて私に向き直った。


「近頃、周辺の情勢が怪しくてね。いよいよ本当に戦争が起こりそうだ」

「……え? どういうこと?」

「そのままの意味だよ」


 せんそう? ……戦争!?


「ちょっ、ちょっと待って? 伝えるにしてももっとタイミングとか、場所とかあるよね? ていうか、本当に?」

「まあいいだろ? ここには俺と君以外居ないんだから」


 動揺している私に、目の前の男はそう言い放ってみせた。


 たしかに、お客さんはいないけどさ。店主さんもお店の奥に引っ込んじゃったし……。にしても、急すぎない?


「国境付近を人族(ヒューマン)の小隊が彷徨(うろつ)いてる。おそらく、こちらの様子を確認しに来てる先遣隊ってところだろう。

 今のところ被害はない。でも牽制のつもりなのか知らないけど、鬱陶しい事には変わりないね」

「そんな……。相手は王国? どうして急に……?」

「さあね。けど、おそらく王国だろう。俺だって今朝知ったんだ。適当な理由をつけて君をここに呼んで雑談でもしようってつもりだったのに、こんな話をしなくちゃならなくなるなんて、迷惑な話だよ」


 ゼノも今朝知ったんだ。てことは、本当につい最近の話なのか。

 ていうか今日ここに呼び出したのって、元々はただの雑談のためだったんだ……。


「ただ、アイツらだって今日明日戦争を仕掛けようって訳じゃないはずだ。俺の見立てでは、向こうの気が既に固まっていたとしても、少なくとも開戦までに半年か一年は猶予がある。

 アイツらからしたら、魔国(ここ)まで兵を持ってくるのも一苦労だからね」

「それもそうだけど……。様子見ってだけで攻めてこない可能性もあるんだよね?」

「ああ。でも、いずれ起こる。いいだろ、待ちに待った機会なんだ。盛大に暴れてやればいい。

 何を怖がってる? 何も恐れることはない、だろ? 今の君の実力なら、雑兵(ぞうひょう)なんて相手にならない。隊長クラスでも十分戦える」


 私が恐れてる……? そんなことない。

 だって、私は死なない。それに負けない。

 この世界の誰とやったって、きっと勝てる。

 だからか、戦場に出て戦うなんて言っても、なんだか自分のことに思えない。他人事みたいだ。


 ただ、突然のことでびっくりしてて、気持ちの整理ができてないのかもしれない。戦争のことをまだ、本当の意味で分かってない気がするし。

 それに、やっぱり心に引っかかるモノがある。


 それは私に必要なことなのか。

 私の目的に必要なのか。


「私って甘いのかな。戦争はさ、敵味方関係なく、人がいっぱい死ぬよね。

 私はできることなら殺したくないよ。王国は嫌いだし、国の中枢が腐りきってるのも知ってる。それに殺してやりたいくらい憎い相手もいる。

 けど、それは王国の人間全員じゃない」


 恐る恐るだけど、私はゼノに向かってそう口にした。目は見れなかった。

 彼はしばらく何も言わなかった。

 けれど、呆れたようにため息を一つ()いて、話し始める。


「甘いというより、狂ってると言った方が正しいだろうね。君は、まるでどこか知らない世界から来たみたいな、変なことを言うね。

 知っての通り、俺たちはやらなきゃやられるし、種族だけで差別される。国際情勢を見れば一目瞭然だ。王国だけじゃない、帝国や学園都市、人族(ヒューマン)以外にも森妖精(エルフ)矮人(ドワーフ)だって俺たちの敵だ。

 周り全てが敵なんだよ。俺たちからしたら、個々人の善悪なんて構ってられない。些事なんだ。何せ余裕がないからね」


 それはその通りで、私も分かってる。分かってるけど――


「って、他の奴らは言うだろうね」

「……え?」


 ゼノはさっきまでの低いトーンから一変して、いつものふざけた様な調子になってそう言った。

 けれど、一体何を言っているのかよく分からない。

 思わずポカンとした顔で彼の方を見つめてしまう。


「ハハハッ、どうしたんだよそんな面白い顔して。別に変なことは言ってないだろ? 俺は他の奴らとは違って余裕があるんだ。だから、もっと冷静に見つめられる。

 そうじゃなかったら、見つけた時点で君たちのことなんてとっくに殺してるさ」


 ……なんだか騙された気分だ。

 でも、私が言ったことがこの世界じゃ、おかしな事ってのはよく分かってる。

 コイツも頭がおかしいから許してるけど、他の人に言ったらきっと怒られるだけじゃ済まない。


「俺にだって人族(ヒューマン)の中に殺したい奴がいる。君と同じようなものさ。けど、逆に言えばそいつ以外はどうでもいい。せいぜい退屈凌ぎのエンターテイナーってところだ」

「なんか、ゼノってすごいよね。私にはそんなふうに考えられないかも」

「まあ、俺だって今の状況には不満を持ってる。けど、戦争を仕掛けて黙らせるってやり方が気に食わないんだ。そういうのじゃ熱くなれない、それだけさ」


 まあ強い敵と正面から戦ってどうこうみたいなのが好きそうだしね、ゼノって。


「それで、私はどうしたらいいの?」

「君が? まあ、いざ戦争になれば俺についてくればいいよ。足手纏いにはならなそうだしね。だが、今のところはこれまで通り訓練に付き合ってもらう。うちの兵士たちも待ち遠しそうにしてるんだよ、君と戦うのを」

「えぇ、それほんとに? この前やった時はそんな感じしてなかったけど……」


 少し前に訓練とか言って軍の魔族たちと戦ったけど、みんな終わった時にはヘトヘトになって死んだ目をしてた。

 しょうがないよ。あの人たち弱くないし、むしろ私と同じか全然それ以上に強いけど、相手が悪い。

 連続で動けば流石に疲れるけど、少ししたらすぐ回復するし、なんなら魔法の力を頼れば無尽蔵に動けるから……私と戦うなら体力がいくらあっても足りない。

 ゼノみたいに、おちょくるみたいに私のことを簡単に()なしちゃうような相手なら別だけど。


「ハハハッ、本当さ。それに次はこの前外回りで居なかった奴が何人か帰ってくるんだ。きっとアイツらも君とやりたがってるに違いない」


 ゼノは笑いながらそんなことを言う。


 絶対嘘だよね、これ。あんまり周りの人から嫌われたくないんだけどなぁ……。


「本当のところはどういう意図なの? なんか、楽しそうだもん。ドッキリに引っかかりそうな人をモニタリングしてるみたいな……そんな感じ」

「おいおい、心外だなぁ。俺は断じて楽しんでなんかいないさ。

 ただ俺は――――クハハッ、ダメだやっぱり隠せないな。だって面白いだろう? 君のことをただの子供だと舐めてかかって、それで負けた時のあの顔、驚きよう、笑うなって方が無理な話だよ」


 やっぱりか! コイツ、楽しんでる! 人をいじめて楽しんでるよ!


「ちょっと、私とあの人たちで遊ばないでよ」

「悪い悪い、でもちゃんと訓練にはなってるだろ?」

「それは、そうかもだけど……」


 目に涙を浮かべてまで笑われると、ちょっと……やっぱコイツ性格悪い!

 けど、悪いことしてるかといえば……どうなんだろ? なんか強く言い返せない自分が憎いな。


「まあまあ、別に俺はアイツらが嫌がるような事はしない主義なんだ。そこは安心してくれ」

「それは何となく分かるけどさ?」


 私はテーブルに置かれているクリームソーダをストローで吸いながら、不満そうにゼノの方を見つめてやる。

 一応、不服の表明だ。あんま効果はなさそうだけど。

 それにしても、やっぱりストローは自分で作っておいてよかった。お店で出されるのは何かの植物の茎?みたいな奴だし、なんか嫌だからいつも自分のものを《異空間収納》に入れて持ち歩いてるのだ。やっぱりこっちの方が美味しく感じる。


「そういえば、君の魔法の魔力効率は恐ろしく良いよな。コツでもあるのか? 教えてくれよ」

「えっ……? ああいや――って、知ってたの!?」

「ん? まあ3ヶ月も面倒を見てたら流石に気づくさ。なんだよ、反応が薄かったか?

 それのせいで初めは君を見縊(みくび)ってたんだ、それに気がついた時は流石に驚いたけどね。分かってからは君の強さにも納得したよ」


 うそぉ……。何も言わないからバレてないと思ったのに。

 私よりユイの方が強いと思ってくれてた方が何かと好都合だったし、あのままで良かったんだけどなぁ。

 まあ、逆にこの勘違いのせいで痛い目を見た時もあったけど……。


『残念だったなシュナ。今までバレないようにしてたのも意味なかったようだ』


 ちょっとシオン、茶化したように言わないでよ! これ結構大事なことじゃない?

 てか、やっぱり気がつくものなんだ。他人の魔力が減るのとか、魔法にした時のロスの多さとか分かるものなの?


『いや……まあお前の総魔力量は少ないからな。本来なら、精々《回復(ヒール)》3、4回分って所か? そう考えたら不審がられるのも無理ないな』


 いやすっくな、私の魔力量!?

 え、じゃあそんなに弱いのに、私はまあまあな階位の魔法をバンバン放ってたわけ?

 うん、そりゃ気づかれるね。


『まあ、かろうじて外から魔力を取り込んでるなんてことはバレてなさそうだが……強めの魔法でも使えば一発だろうな』


 あはは……魔法の使い過ぎには気をつけます。


「まあ、悪いけどコツとかはないから諦めて? 私だって知ってたらユイに教えてるし」

「それもそうかぁ……。隠してる感じもしないし、残念だ。

 まあ、魔力効率を上げる方向で、そこまで鍛えることもできるかもしれないと気付かせてくれただけでも十分か」

「あはは……ゼノは本当に強くなることに関しては貪欲だね」


 ゼノは結構本気で残念そうだ。でもめげてない所は流石って感じかな。

 多分神様の体だからこそできる技だろうし、この体の仕様は未知すぎる。

 私だってわからないんだから説明できない。多分理解しようとしてもできないし。


「そりゃあ国のためだし、魔族のために強くならなきゃいけないからね。それに、強くなければ強敵とはやり合えないし、復讐も為せないだろ?」

「……復讐?」

「おっと、つい口が滑ってしまったようだ。まあ気にしないでくれ」


 ふとゼノの口から出た言葉が引っかかる。

 殺したい人族(ヒューマン)がいるって言ってたけど、それと関係してるのかな。


「まあ、気になるならまた今度話すよ。君の方の話も聞きたいし。

 でも今日は、暗い話はさっきの話題くらいで良いだろ? もっと明るい話をしよう」

「ええっと、そう言ってるところ悪いんだけど……こうなった以上ユイにも知らせに家に帰らないといけないかなぁ」

「おいおい、本当か……?」

「うん」


 私がそう言うと、ゼノは驚いたような、落ち込んだような表情を浮かべる。

 断じて、早く家に帰ってユイとキョウくんに会いたいとかそんな理由じゃないけど、こんな大事な情報だし早く伝えておきたい。

 念話みたいに通信できる魔法は使えるけど、実際に会って、直接ちゃんと伝えたいからね。仕方ない。


「はぁ……。まあいい、時間はあるんだ。また明日、朝の10時頃に二人で来てくれ」

「うん、それはもちろん。……ええっと、私の分のお金は置いておけば良いかな? 給料?みたいなものはもらってるし、ちゃんと払いたい」

「ハハハッ、子供はそういうことは気にしなくて良いんだ。それに、俺が君を付き合わせてるんだから、俺が払うよ。

 君は早く妹のところに行くといい。俺はしばらくここで穏やかな休日を過ごすから。店主とも少し話がしたいからね」

「ありがと、ゼノ」


 なんだかゼノがカッコよく見える。

 目を擦ってみる。

 光のあたり加減のせいかな、窓際の席だし。

 こんな性格悪いやつがかっこいいわけないからね、うん。


 でも奢ってもらえるのは素直にありがたい。

 付き合わせてるとか、そんなことあんまり気にしなくていいのになぁとは思うけど。

 そんなことを考えながら、荷物を持って立ち上がる。


「ところで、店主と話すってどんなこと話すの?」

「ん……? まあ、大したことじゃないよ。例えば……この紅茶の茶葉とか、ケーキの果物はどこのを使ってるのか、とかね」

「ふぅん、たしかにそれはちょっと興味あるかも」

「だろ?」


 ゼノって紅茶好きって言ってたし、自分でも淹れてたし、色々興味があるものは試してみるタイプなのかな?


「じゃあまた、明日ね」

「ああ、待ってる」


 私は簡単にそう挨拶すると、店のドアを開けて外へ出る。

 チリンと鳴るベルの音が綺麗だった。


『……しかし、随分と打ち解けたよな。前までは、ゼノと一緒にいるとスイーツの味がしなくなるとかなんとか言ってたのにな』

「う、うるさい……っ」


 意外と話が合うのがよくない。

 意地悪だけど、思ってたより優しいし。


「もう帰るからね?」

『おう』


 シオンの言葉とかにちょっと不満を持ちながらも、私は帰ることにする。今日は急ぎだから転移魔法で。



 少しして、仄暗い路地が白く照らされた。

この場にユイがいたら拗ねてそう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ