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クラス転移に巻き込まれた僕、魔王に殺された後、なぜか幼女に転生させられてしまいました…  作者: sironeko*
3章 蠢動

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84/90

顔合わせ

 昨日はあんなに楽しかったというのに、今は最悪な気分だ。

 ゼノには、今日の18時に門の前で集まるように言われた。

 そして今は17時30分。少し早いけど、その場所に着いた。


 昨日の夜からさっきまで、ユイのために、自分がやれるだけの事はしたつもりだ。

 新しく二つの指輪を創った。転移魔法と位置探知を使えるようにするものと、致命傷を防ぎ、自身を治癒するものだ。


 転移魔法の方は、ユイの体から漏れ出る魔力を自動的に吸って、一定量溜まれば使用可能になる。

 魔力残量と距離にもよるけど、最大で五回は飛べるはずだ。

 位置探知はGPSみたいなものだ、微量の魔力で互いの位置を知ることができる。


 もう一つの方は、致命傷となるような衝撃を受けた時に、一度だけ身体を守る。傷ついていれば、それも全部治す。その後に壊れる。

 これでもかってくらい、この指輪には私の魔力を詰めておいた。


 何はともあれ、準備は整った。

 あとできる事は気持ちの準備をすることくらいかな。


「ユイ、大丈夫? 緊張しない?」

「うん。何かあったらお姉ちゃんがなんとかしてくれるから。

 それに、私だって何もできないわけじゃないから」

「そうだよね、ユイは強いもんね」


 ユイはニッと微笑んだ。

 頼りにされているのは素直に嬉しいな。


「まだ時間まで少しあるね」

「そうだね。ちょっと話そうか」

「うん」


 私たちは少し雑談でもすることにした。

 そうして、何分か他愛(たわい)もない会話をしていると、門がギィィと重い音を立てて少し開いた。

 そして、そこから一人の女の人が出てくる。


「ふむ、君たちがゼノの言っていた子供たちか」


 彼女の方を見た時、背筋にぞわりと悪寒が走った。

 見た目が怖かったとかそういう訳じゃなく、本能が警鐘を鳴らした。


「私はシルヴィア、聞いているとは思うが。――ああいや、ゼノのことだ、真面目に話しているとも限らないか。

 で、どうだ。私のことは聞いているか?」

「す、少しは。この国の宰相で、色々とユイに教えて下さると」

「ふむ、アイツも最低限のことは話したようだな。まあ、私の認識についてはそれでいい」


 紫がかった長髪、大きなツノ。身長も私視点だと、それなりにあるように見える。170くらいは少なくともありそうだ。

 怖そうとも優しそうとも言えない顔立ちをしてる。強いて言うなら真面目そうかな。

 体は引き締まっていて無駄がない感じがする。

 ゼノの言い振りからしてかなりの実力者のようだけど、間違いなさそうだ。


 ただ、どうしてもさっき感じた悪寒が拭えない。

 シオンも感じた? ゾワっとした、何か背筋が凍る感じの。


『……そうだな。だが、現時点ではコイツについて何とも言えん。警戒はしておけとしか言えないな』


 まあそうだよね、その通りだ。

 結局、用心しておくことしかできないしね。


「さて、それでユイというのはどっちだろうか」

「わ、私です」

「そうか、聞いていた通り鍛え甲斐がありそうだ。これからよろしくな」

「よろしくお願いします」


 安心して任せるってわけにもいかないけど、私たちのことを悪く扱うって感じでもなさそうなのは、ひとまず良かった。

 私たちが人族(ヒューマン)だってことは、流石にゼノから聞いているだろう。

 それでも悪意を表に出してこないから、ちょっとだけ信頼してもいいのかな。


「それにしても、君たちはしっかりしているな。ここで待とうと思っていたんだが、先を越されてしまった」

「少し早く着きすぎてしまったかもしれません。すみません」

「ああ、いいんだ。気にしないでくれ。君たちの態度はゼノの奴にも見習って欲しいくらいだ

 それと、あまり強張(こわば)らないでほしい。といっても無理な話かもしれないが。

 君たちにどういう背景があれ、今は仲間だ。それは忘れないでくれ」

「はい、ありがとうございます」


 そこまで言われるとは思っていなかった。


「さて、ではユイ。私と一緒に来てくれるか? 少し早いが、早いに越したことはないだろう」

「分かりました」

「ではシュナ、少し預かるぞ」

「お願いします」


 シルヴィアは小さく門を開くと、ユイと共にその中へ入っていく。

 去り際に、ユイは私にニッコリと微笑んだ。

 私を心配させないようにかな。相変わらず優しくて素敵な妹だ。


 さて、そうして私は一人、門の前に残されてしまった。


(ゼノが時間より前に来ることってあると思う?)

『ハッ、あいつの性格的にそれはないだろう』

(あはは……。じゃあ、ちょっと話そっか?)

『そうだな。丁度、俺も話したいことがあったところだ』


 ふふ、自分の中に暇つぶしになる話し相手がいるのは、なんかいいね。

 昔はてっきり、他のみんなにもいるものかと思っていたけど、私だけだったのも、ちょっと嬉しい。


(それで、話したいことってなあに?)

『なんて事はない。宰相シルヴィア、さっきのやつがおそらく黒フードの正体だ』

(ふぅん。あの人が黒フードの正体なんだ)


「――――って、えええぇぇ〜〜!!!?」

『驚き過ぎだ、うるさいぞ』


 やばっ、叫んじゃった!

 門兵さんがこっちの事を驚いたように見てる。完全にヤバいやつだった思われてるよ!!


(ちょっと! そんな事急に言われたら驚くよね! 叫んじゃうよね! 叫んじゃったけど……)

『はは、ごめんな。お前も若干気づいてるんじゃないかと思っていたんだ』

(それは私を買い被りすぎ!)


 なんでそんな過大評価なのさ。私、ごめんだけどそんなに優秀じゃないよ?


(はぁ……。それで、どういう事なの?)

『黒フードの正体については、前から予想がついていた。何せ、一戦(まじ)えたからな』

(その正体が、宰相だったと)

『いや、10年前は宰相ではなかった。そこが俺が一番怪訝(けげん)に思っている点だ』


 10年経って出世したってことかな?

 10年も経てばそれなりに立場も変わりそうなものだけど。

 ああでも、魔族からしたら10年ってそれほど長くないのかな。


(それでシオン、そんなに怪しがるほど身分が変わったの?)

『はぁ、お前は少し勘違いをしているな。……今度は驚くなよ?』

(う、うん)


 シオンが神妙な声でそう言うので、私は思わず固唾(かたず)を飲んだ。


(じゃあ、一体私は何を勘違いしてるの?)

『……あいつは、ただの魔族ではない。元魔王だ』

(――っ!?)


 危ない、声に出るところだった!

 嘘でしょ? 元魔王?


(魔国の王って事だよね?)

『ああ、その認識で間違いない。シルヴィアは元は魔国の王だった。

 てっきり、この世界の認識が変わったタイミングで、二つある魔王という概念が統合され、アイツが魔王の座に()いたものだと思っていたが。そうはならなかったらしい』


 そういえば、前の街でシオンが門兵に姿を見せた時、『魔王は女性だ』とかなんとか言われていた気がする。

 シオンはそれがシルヴィアの事だと思っていたけど、どうやら違いそうだということかな。


(でも、黒フード――シルヴィアが黒幕だとしたら、ちょっと不自然だよね。私なら自分が魔王になるように現実改変すると思う。

 それに、あの時のシオンより弱かったシルヴィアが、こんなに大規模な現実改変を行えるほどの力を持っているとは思えないし)

『そうだな。黒幕は別にいると考えた方がいい。

 そして、シルヴィアはその黒幕に操られていた可能性がある。

 実際、あの時の奴には邪の気が見えた。今は上手く隠しているのか、それとも全て消えたのかで見えないが。

 となれば、次なる候補は現魔王ってところか』


 シオンの言う通り、今の魔王が怪しい。

 真相に近づいてるのをひしひしと感じるけど、やっぱり怖いなぁ。

 後戻りはもうできないところまで来ちゃってるんだけどね。


(黒幕はシルヴィアの身体を乗っ取ってたのか、洗脳したのか分からないけどさ。その時にシオンより弱かったのは、世界改変のために力をセーブしてたって事なのかな)

『くはは、神に造られたこの俺が、まさか全力も出されずに相手されるとはな。

 まあでも、その力の一端は確かに感じたさ。

 俺の魔法が暴発したのもそうだ。黒幕は、相手の魔力に干渉して制御することに長けているらしい。

 俺はまんまと一杯食わされたわけだ』


 そういえば、シオンの自爆も黒幕のせいって言ってたっけ。

 そう考えると恐ろしいな。


『まあ、ここまで内部まで関わりを持てている以上、魔王と相対するのも時間の問題だろう。気を引き締めていけ。

 それに、並行して、何故改変が行われたのか、どの規模なのか、どうやったのかを調べたいな。これほどの力を持った者が、この世界で自然発生するとは考えにくい。何か手を使ったはずだ』

(そうだね。どうやってそんな力を手に入れたのか、知っておきたい。こんな事ができる人がたくさん出てきちゃったら、私たちじゃ手をつけられなくなっちゃう)


 黒フードの正体が分かったにせよ、もっと探らなきゃいけないことは多いみたいだね。

 私たちが旅を続けるにしても、魔族と人族を同時に相手取る時にせよ、色々知っておかないと失敗しちゃうかもしれないしね。


『さて、そろそろ時間だな』

(そうだね)


 話していたら結構時間が経っていたみたいだ。

 でも、ゼノって時間通りに来るような人なの?

 平気で遅れてきそうなものだけど。


『確かにな。まあでも、今日は大丈夫そうだぞ』


 正直疑っていたけど、その時、シオンがそう言った通り門が開いた。


「思ってたより早かったね、ゼノ」

「ははっ、俺は約束を守る男だからね。でも、少し待たせすぎたかな」

「……気づいてたの?」

「逆に、気づかないとでも?」


 はぁ……。相変わらずムカつく男だ。


「俺はシルヴィアと違って、あんなに実直じゃないんだ」

「知ってる」

「ハッ、ならいいんだ。それで、俺たちも始めようか?」

「うん」

「それじゃあ着いてきてくれ」


 ゼノはそう言って、再び門を開け、その中へ消えてしまった。

 私も見失わないように、その後を急いでついて行く。

 シルヴィアさんはユイのこと待ってあげてたのに。それに、門も開けたまま押さえてくれていたし。


『アイツがああなったのも俺の責任だ。すまんな』

(ううん、いいんだよ。シオンも手を焼いてたんでしょ?)

『ははは……。まあそんなところだ』


 任せてシオン、絶対にいつかアイツにギャフンと言わせてやるから!

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