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クラス転移に巻き込まれた僕、魔王に殺された後、なぜか幼女に転生させられてしまいました…  作者: sironeko*
3章 蠢動

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燻る禍根と話し合いと 1/2

変だとは思いますが、個人的お気に入りは幕間のお話です(笑)

「――魔王城へちょっとね」

「ええ……!?」


 ユイは私がそう言った瞬間驚いて飛び上がった。


「あ、あぶないよお姉ちゃん。ちょっと大胆過ぎない?」

「それが、そうも言ってられない状況なんだよね」


 そうでしょ、シオン?


『なんだ、お前気づいてたのか』


 まあね。

 あの時のシオンの様子は流石におかしかったし、警戒してたらすぐに分かった。


「――《広域化(イクスパンディド)静寂(サイレンス)》」


 内緒話をするなら対策はしっかりとね。周りの目があるっているのもあるけど、結界内にいる限りアイツに聞かれてるかもしれないし。

 この魔法を発動しちゃったらそれこそ内緒話をしているのがばれるだろうけど、それよりも聞かれるリスクの方がずっと上だ。


「地下への入り口を探してた時に、どうやらゼノに見つかったみたい。地下へ続く扉の前にいた時に後をつけられてるって気づいたんだけど、扉を(くぐ)り抜けた瞬間追ってこなくなっちゃった」

「そ、そうなんだ。私全然そんなこと知らなくて……」

「いいのいいの、それはしょうがないことなんだから。……まあ、これで私たちはより一層警戒されることになるだろうね」


 もっと動きにくくなるのは最悪なことだ。まともに動くことができなくなればここに来た意味がなくなる。

 ここで無意味に時間を浪費するのはよくない。

 そうなるとゼノがやっぱり私たちにとって邪魔な存在だ。


「ということでどうしようかというと、不本意だけどアイツの言う通りにするのが無難かなと思う」

「魔族の側に付くってこと……?」

「とりあえずは中立な立場をとりたいんだけど、上手くいきそうにないならそうなるかな。まあ自分を売り込みに行くって感じ」

「うんうん」


 そうすることのデメリットも多いけどメリットも確実にある。

 より監視が厳しくなる可能性もあるけど、正直すり寄ってしまえばこっちの勝ちみたいなところがあるし。魔王城の中に入り込める立場になれれば、内部の機密文書を覗けるようになるかもしれない。

 なによりアイツの脅威からひとまずの安心を得られる。


『シュナ、正直俺はその考えは危ういと思うぞ?』


 シオンはやっぱりそう思うか。

 でもシオン、分かるでしょ? 本当の理由は――


『……ああ、分かってる。お前が望むなら』


 乗り気かどうかは置いておいて、シオンはどうやら分かってくれたらしい。

 ただユイはやっぱり心配そうな顔をしている。


「危ない事は承知で、やれる事はやってみたいんだ」

「いいよ、分かった。お姉ちゃんが危険に突っ走るのは今に始まった事じゃないし。それこそ、ずっと前から――」


 やれやれと、少し呆れた感じでユイはそう言う。


「ごめんね、ユイ」

「謝らないでお姉ちゃん。それよりも、行動に移すなら早くしないと」

「うん、そうだね」


 ごめんね、いつも無理させて。今は少し我儘を許してほしい。



 ◇ ◇ ◇



 しばらく街の中心、魔王城を目指して歩くと街の中に突然大きな門が現れた。


 ここは……?


『ここから先は貴族の住宅街が広がっている。とは言えこれは昔の名残であるだけで、簡単な検査の後に自由な通行が許可されている……はずだ』


 なるほど、まあ確かにあの大きな図書館にも貴族っぽい人居たしね。

 貴族街じゃないここまで来たってことは、貴族っていうものも形骸化しているのかな。


 そんなこと言いつつもシオンの知らない間に変わってるかもしれないと心配していたが、実際はそんなこともなく、シオンの言うように簡単に中に通れた。

 門の向こう側は、確かに高そうな豪邸が並んでいて緊張したけれど、私達以外にも一般の人達がいて、少しだけ心がほぐれた。

 ただ、変わったのはそれだけかというと違くて、警備員、というか兵士が至る所に配置されていて、流石に監視と防衛は強くなった。

 尤も、こっちが悪いことをしない限り何ともないと思うけど。


 そうして何事もなく奥へ奥へと進んでいく。

 すると、本当にあっさりと、魔王城のすぐ近くの大きな門まで来れた。


 さて、ここまできたはいいけどどうやってアイツにコンタクトを取ればいいんだろうか。

 兵士たちは門の前にいるけれど話しかければいいのかな。

 でも私たちのことを変な観光客って誤解されそうだし、上手く説明できるか不安だ。


『いや、どうやらその必要はなさそうだ』


 それってどういうこと?

 と、シオンの言葉に疑問を持ったと同時に、門の向こうから人がやってきているのが目についた。


「やぁやぁお二人さん、待ってたよ。そろそろ来る頃じゃないかと思ってね」

「……会いに行く手間が減って助かるよ、ゼノ」


 兵士たちはゼノの姿に気がつくと大慌てで門を開けた。その時に不審な目で見られたけれど、しょうがないよなあと思う。

 それにしても、今までずっと監視していたくせに『そろそろ来る頃』だなんてよく言えたものだ。


「それは良かった。それで、ここに来たってことは協力する気になったってことでいいのかな?」

「それはこの後の話し合い次第かな。もちろん、前向きに検討してるよ」

「へぇ、それは結構なことだ」


 ゼノはにっと笑いながら言う。

 ただ、口元は笑顔なのに、冷たい目で私のことを見てくるので恐ろしい。

 何か見透かしてくるような、嫌な目だ。


「じゃあじっくりと話をしようか。着いてきて」

「分かった」


 私は言われた通りに、ユイを連れてゼノの後についていく。

 これからの話し合いのことを考えると胃が痛いが、必要なことだと割り切っていくしかない。


 そうして彼の後を、何も言わずについて行った。

 内部の構造はちょっと複雑で、一人で帰るのは大変そうだ。

 まあ、私にはシオンがいるから帰ろうと思えば道は分かるんだけどね。


「ここだよ」

「ん」

『ここは……』


 少し歩くと、ゼノはある部屋の前で立ち止まって私たちを案内する。

 僕にはこの場所に見覚えがあった。

 というのも、案内されたそこは僕と魔王さんが話をした場所だったからだ。この場所で『地球へ帰る気はないか』だとか、衝撃的なことを言われたから覚えている。


「入っていいよ」


 ゼノはそう言って扉を開けて中へ入る。私たちもそれに続いた。


『ほう……。俺のいない間にこんな事を』


 部屋の中はいかにも応接室といった雰囲気だった。

 とはいえ、気品高いと言った感じでもなく、まあ私たちに相応しい感じの応接室だ。

 あの頃のシオンは、この場所は元はただの部屋だったが、急遽部屋のレイアウトを変えたと言っていた。

 でも、どうやら今は普通に応接室として使われているようだ。

 あの頃より観葉植物的なものが追加されたり、ふかふかの椅子になったりしてるしね。


『ここから先、俺はお前の発言に口出ししない。お前が俺の想像よりも成長していた事もあるし、何より自分の力で成してこそ意味があるんだろ?』


 うん、ありがとうシオン。

 シオンが助けてくれないのはちょっと怖いけど、自分の我儘だし頑張ってみるよ。


「じゃあそっちに座って。お茶でも飲む?」

「面倒じゃなければいただくよ」

「お、ノリがいいね。てっきり断られるかと思ってたよ」


 ゼノはそう言って、部屋の端の方でなにか作業をする。

 私たちはその間に案内された席へ座った。

 上座とかそういうマナー的なことを詳しくは知らないので、そういうのは雰囲気で適当にやることにする。


 しばらくして、ゼノがティーカップを三つトレーに乗せて戻ってきた。

 そして私たちの目の前と、ゼノの席へ一つずつ置く。

 見ると、お茶は綺麗な深紅色(しんこうしょく)をしていた。


「紅茶?」

「そう、紅茶。俺好きなんだよね。趣味みたいなものかな」


 ゼノのくせに素敵な趣味しててムカつく。


「一応聞いておくけど、毒とか入ってないよね?」

「もちろん。そんな面倒なことしないさ」


 まあ、確かに見た感じ毒のようなものは入っていない。

 私は湯気の立つ紅茶をすこし口に含んでみた。


「おいし……」


 不覚にも、私の口は素直な感想を溢してしまった。

 その言葉を聞き逃さなかったのか、ゼノはにいっと自慢げに口角を上げる。


「コホン、本当に毒は入ってないみたいで安心したよ」


 ユイに飲んでも大丈夫だと軽く伝えると、ゆっくりと手を伸ばしてカップを手にとった。そして、ふーっと息を吹きかけて冷ますと、ちびりと一口飲む。

 途端にユイの顔が明るくなった。


 ユイ、というかミサさんが紅茶とかコーヒー好きだというのは何となく知っていたけど、そんな彼女が幸せそうにしてるんだから、本当にゼノの入れた紅茶は美味しいものなんだろう。

 くそっ、だとしてもゼノがユイを笑顔にさせている状況は、なんだかとっても戴けない。


「紅茶は気に入ってもらえたようでよかったよ。それで、そろそろ話を始めようか」

「――その前に少しいいかな?」


 私はユイに目配せをする。そして、ここへくる時に示し合わせていた通りに、《変身(レオン)》を解いた。

 今の私たちは完全に元の人間の姿だ。


「姿を偽ったままじゃ対等な話し合いなんてできないでしょ?」

「まあそうだね。そういう丁寧なの嫌いじゃないよ。てか、本当に子供なんだ? 人族にも面白い奴がいるもんだねぇ」

「……途中で話を切っちゃってごめんなさい。始めよっか」

「いいよ。じゃあ今から俺が質問をしていくから答えてくれる? 答えられないものは無理に答えなくていいし……そっちの子が答えられないっていうなら代わりに答えてもいいよ」

「分かった」


 てっきり、質問に全て答えなきゃ行けないと思っていたから、そう言われたのは意外だ。

 コイツがそうした真意がわからない。まあ、私としてはここでゼノの機嫌を損ねるわけにはいかないし、印象も悪くできないので答えるしかないんだけどね。

 ――それを分かってて自分の印象を上げようとしてる、なんてのは考えすぎかな。


 さて、一体どんな質問が来るのか。

 あまり答えにくいものじゃないといいけど……。


 思わず固唾を呑み込んだ。

長くなりそうなので二つに切りました

続きは15時に投稿予定です。

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