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しつもんたいむ

書いたやつ半分消えて書き直す羽目になって悲しい

(⸝⸝⸝-﹏-⸝⸝⸝)

 結局世界を救う事になってもう一度振り出しに戻った訳だけど、不思議とその事を嫌だとは感じなかった。寧ろこれで良かったとまで思える。

 確かに、考えてみればそもそも世界を助ける事だって全く進展していなかったし、変わった所で問題は無いと言えばなかった。


 だけど、問題とまではいかなくても一つ困ったことならある。

 そう、今後の展望や計画をまた立て直さなくちゃならないのだ。


「さて、世界を救う事にしたは良いけど……これからどうすれば良いと思います?」

「そうだね……私的には翔くんの好きなようにっていうのが一番だけど、そういう事を聞きたい訳じゃないんだよね?

 だとしたら…………ええと、うん。なるようになるさ!」

「えぇ……」


 お姉ちゃんはしばらく真剣に考えていたようだけど、直ぐに考える事を放り投げた。まあ、僕も人のことは言えないんだけどけど……これはちょっと質問する人を間違えたかもしれない。

 お姉ちゃんって前から変なところでざっくりとしていたし、質問とか相談するならやっぱりユイとかシオンが一番かも。


「翔くん、今何か変なこと考えてない……?」

「い、いえ! そんな事ないですよ?」


 心の中でお姉ちゃんへの不満を少し漏らしていると、ご本人様が急にそんな事を言うので少しドキッとしてしまう。


 な、なんかお姉ちゃん最近妙に冴えてるなぁ。――僕が何を考えてるのか分かるために何か鍛えてるとか……流石に無いよね?


「……さて、それで二つ目の話をしていい?」

「あっ、そういえばもう一つ話があるんでしたっけ」


 そういえば大きく分けて二つの話があると最初に言っていた。

 一つ目の話のインパクトというか、お姉ちゃんの圧によって完全に忘れていたけど――二つ目の話はたしか咲についての話だったよね?一体どんな話なんだろうか?


「二つ目の話は……切り出しておいてなんだけど正直もう重要性はないと言って良いものなんだよね。単刀直入に言えば、遠坂咲はさっきまで私達と相対する理念で動いていたの。ここまではオーケー?」

「えっと、はい……?」


 ん……っと、つまりどういう事? さっきまで実は敵対してる立場でしたって事かな?

 でも、そうには見えなかったけどなぁ。


「すこしざっくりし過ぎたみたいね。

 遠坂咲は革命軍とかいうやばそうな所に所属しているわけだけど、その革命軍の行動理念……というか目的は第三勢力として魔族と人族に戦争を仕掛けることで、お互いに協力させて仲良くさせよう…………みたいな感じなの」

「へぇ…………なんか凄い組織なんですね。人族と魔族を同時に敵に回すとか普通考えないですよ。

 確かに、上手くいけば仲は戻りそうですね」


 聞いていて僕もその計画は少し無茶があるとは思うけど……でも、お姉ちゃんがわざわざ話すって事は何かあるのかな? それに、その計画が本当に無謀なものだとしたら咲が関わるはずがないだろうし。


 でも、例えこれで協力させる事ができたとしても……それは一時的なもので終わってしまうのではという気もしてしまう。でも、第三勢力を作り出す事で協力させるというのは……面白い発想ではあると思う。


「でもやっぱり、例え一時的にでも関係が改善する可能性があるとしても……少し無謀だと思ってしまいますね」

「そうだね。でも、恐ろしいことに革命軍には魔族と人族の両方は無理だけど、片方を相手取るくらいの武力は既に持っているんだよね」

「それって、考えれば考えるほど恐ろしくないですか……?」


 国どころか一種族を敵に回せるだけ武力……。一体何があるんだろうか。


「まあ、活動目的がそんなんで力も持っちゃっているわけだから、さっきまではどこかでぶつかり合う運命だったんだけど……今はそうじゃなくなったからこの話はもう重要性のなくなった話なの」

「なるほど……。そういう事だったんですね」


 たしかに、人族を皆殺しにする事を選んだ僕とどちらの種族もできるだけ生かしたいと考えている咲とでは、あのままだったらいずれ争わなければならない時が来たのかもしれない。


 そんなのは嫌だし、だから結局のところこれでよかったのだと思う。いや、こうするしかなかったと言えるかもしれない。

 とにかく、こうなってしまったことに文句は言えないってことだ。

 かなりハードモードな旅になってしまったけれど、地球からこの世界に飛ばされた時点で人生がハードモードすぎた訳だし……元からこうだったと思う事にしよう。――うん、そうしよう。


 僕はそうしてちょっとした現実逃避に走っていたのだけど、ふとお姉ちゃんを見ると何やら何かを言いたげにもじもじと体を動かしていた。


「ええっと、どうしたんですか?」

「へっ……!? いや、その…………話さなきゃいけないことなんだけど、話したら怒られそうなことを思い出しちゃって」

「話したら怒られそうなこと、ですか? というか話さなきゃならないことなら迷わずに話すべきでは!?」


 流石はお姉ちゃん、突然凄いことを思い出すなぁ。

 でもまぁ、緊急性のないことなら心の準備ができた時にでも話してくれればと思う。興味がないと言ったら嘘になる――というかむしろ知りたいけどそこはぐっと我慢するから。


 ――いや、やっぱり気になる!


「今僕の中で自制心が好奇心に負けました。なので包み隠さず全てを話してください」

「えぇ……ど、どういう事? まあ話すけどさ」

「やった! じゃない、ありがとうございます!」


 しまった、つい本音が。

 でも、話さなきゃいけないことらしいからしょうがないね。それに気になるんだからしょうがないね。


「えっとね、さっきの話から行くと遠坂咲と翔くんが敵対する筈だったんだけどさ……翔くんがいざというときに判断が鈍っては良くないから、あのレストランでの記憶を少し消させてもらいました」

「えっ!? ってことは記憶が消えているのはお姉ちゃんの仕業だった?」


 普通に驚いてしまった。本当に、そんなこと考えもしなかった。

 でもまぁ、全て今さっき知ったことだしそんな考えに思い至らないのも当然なのだけど。


「それにしてもお姉ちゃんって私の記憶をいじりがちだよね。…………おっと、僕の記憶もね」


 まずいまずい、そろそろこうやって私と僕とで分離して考えていられるのも限界みたいだ。


「あまり怒らないんだね……?」


 お姉ちゃんに悟られないように内心で少し焦っていたら、そんなことを言われた。

 うーん、怒らないというよりはまだ思考が追いついていないというか……。


「自分でもどうか分かりませんが、今日は色々と驚かされすぎていているのと、聞いた話を理解するのとで限界で怒れないだけだと思います。なので、また色々と落ち着いたら怒りますね」

「何その宣言っ!?」


 お姉ちゃんは色々と納得いっていないような、複雑な表情をしているけれど……私は意味深に微笑んでおく。


「うぅ…………まあ、それは覚悟しておくわ。

 それで消した内容なんだけど、遠坂咲に翔くんが…………いや、シュナが色々と甘やかされてだんだんと堕ちていくような、そしてそれに対抗しようとするユイちゃんにも色々と甘やかされて、私もそれに負けるか! ……といった感じで今の翔くんが思い出したら大分堪える内容だったと思うけど………………思い出す?」

「……遠慮しておきます」


 何そのカオス!? これはお姉ちゃんに消してくれてありがとうとまで思ってしまう。

 うん、思い出したら僕は精神崩壊してしまいそう。


「あの……話は変わりますが、いくつか気になっている事があるんですけど、質問いいですか?」

「ん、何? もちろんいいけど……またヒドイコト言わないでよ?」

「なんですかヒドイコトって!? そんな事言わないですよ」


 何故かお姉ちゃんが酷くて悲しい……。それに『また』って何、僕何かしました!?

 ――っと、ダメだ、話が逸れてしまう。


「前々から思っていたのですが僕の記憶ってどうして改竄されたんですか? いや、なんとなくは分かるんですけど、まだ思い出しちゃいけないものなんですかね?」

「ああ……」


 どうしたのだろうか、話しにくい事なのかお姉ちゃんは僕の言葉を聞くと少し下を向いて何かを考え出した。


「ごめんなさい、話せないこともあるでしょうし無理に話してもらわなくても……」

「そうだね……全然話せないって事はないけど、どう話せば良いか良いか分からなくて。うん、話せないところもあるけれどそれでも良いなら聞いてくれる?」

「それは勿論です」


 少しでも話してくれるというなら勿論聞くけど、やっぱりそう言われてしまうとどうしても少し悪い方向に勘繰ってしまう。

 お姉ちゃんに限ってそんなことはないと分かってはいるのだけど……。


「じゃあ最初に簡単に言ってしまうけど……何故かというと、翔くんが仕事ができなくなってしまうから、だよ」

「なっ……」


 僕は突然あまりに衝撃的な事を言われて言葉を失ってしまう。


 仕事ができなくなる……?どうして?


「……翔くんには前にも話したかもしれないけど、記憶を改竄する前の君は心が傷だらけで辛そうだった。本当に、私まで悲しくなるくらいに。だから、君の記憶を少しばかりいじらせてもらったの。

 それで今の君の状態だけど、分かりやすく言えば過去の記憶にフィルターをかけている状態だね。もちろんそれを外せば一気に辛い記憶が流れ込んでいくし、そうなれば負担に押し潰されて元の状態に逆戻りしてしまう」

「そうなんですか、やっぱり僕はそこまで……」


 分かってはいたけれど、本当に今ある記憶よりも大分酷いらしい。

 そして、お姉ちゃんのいう『フィルター』によって僕はこうして正気を保っているって事か。


「因みに逆戻りしてしまうことは既に実証済み。多分……いや、絶対に今の君にとってもあの記憶は重すぎるよ。もし思い出したいなら、時間と共に少しずつ精神面も鍛えていくしかない。

 私だって、もう二度と君にあんな思いをしてほしくないから」

「そうですか……分かりました。どうやら変な事を聞いてしまったみたいで申し訳ないです」


 どうやら本当にお姉ちゃんにとって話しにくい内容だったみたいで申し訳ない。


「ううん、謝らなくて良いよ。それに私だって話せない事ばっかりで、君の過去の具体的な事についても何かの拍子に悪い事があるかもしれないって思って……我ながら過保護だとは思うんだけど、そんなことばっかりだから」


 お姉ちゃんは僕に優しくそう言ってくれるのでいつも救われてしまう。

 本当に優しすぎるし、それに甘えてばかりもいれないよねとはいつも反省している。


「それで他にも何かあるんだよね? この際だしなんでも聞くけど」

「……えっ、ということは普段は聞けないようなアレコレを聞いても良いんですか!?」


 甘えてばかりはいられないとは思うけど、実行するとは言っていない! 今はここぞとばかりに甘えるフェーズなのだ!


「えっ!? えっとその、翔くんならあまり悪い気はしないけど……できればお手柔らかにお願い、ね?

 難しすぎるのとか、恥ずかしすぎるのは少し困っちゃうし……」


 …………。


「……ごめんなさい、僕が悪かったです」

「う、うん……」


 本当に反省しています。なのでここはいつも通りの質問をさせて下さい……。


「それで質問……というより単純に知りたい事なのですが、お姉ちゃんってやっぱり僕や私が人を殺す事に対してあまりいい気はしていないんですよね?」


 ということで、これまた少し踏み込んだ事を聞いてみる事にしたのだけど


「えっと、やっぱりそれ気になる?」


 お姉ちゃんはそこまで動じてはいなかった。というか寧ろ聞いてくるのを待っていたかのような、そんな感じすらしてしまう。


「……うん、私は君が本当に自分の意思で決めたのなら人族を全て殺そうが止める気はないよ。だけどね、本音を言えば……やっぱり自分の大事な人がそんな悲しい事をしてしまうのは嫌ではあるの」

「そう、ですよね。僕だってお姉ちゃんやユイにはそんなことして欲しくないと思ってしまいますし……」

「ただ……だけどね、復讐に関しては少し違うんだ。復讐は復讐を呼ぶだとか何も得られないとかよくいうけどさ、君に関しては……その心が少しでも癒えるのならってどうしても思ってしまうの」


 そう、だったのか……。やっぱりお姉ちゃんからしても復讐というのは複雑なんだろう。でも、本気で止めるつもりはないみたいだ。

 復讐っていうのは要は気持ちの問題で、どれだけやり返せたとかじゃなくどれだけ自分の心が晴れたか、なのかもしれない。

 ミサさんを殺した奴らを許す気は全く無いけど……無理してまでする必要は無いのかもしれないとは思った。過去の自分がいたら間違いなく殺されるな、今の僕は。


「さて、私は話すことも話したし帰ろうかな」


 と、悪役味が若干出ていた感が否めないお姉ちゃんは突然帰る宣言をしてしまった。


「少し名残惜しいですけど、分かりました……また来てくださいね?」

「もちろん!色々と落ち着いたころにまた来るね。これからちょっと大変そうだけど……。あ、それと、シオンがそろそろ復活するからよろしくね?」


 え、シオンが復活するの!? てっきり少なくとも半年は寝たままだと思ってたのに……。


「嬉しそうね?」

「っ!? どうやらお姉ちゃんも本当に勘が鋭くなってきちゃったみたいで少し残念。……うん、正直なところ嬉しいよ。十年ちょっとの間寝ずに頑張ってくれていたんだから、改めて色々とお礼を言わなきゃな……って」

「それはいいね! もちろん私にも色々してくれてもいいのだけど?」

「それは……また今度ちゃんとやりますよ。色々とお世話になっているので」


 うん、助けられてばっかりだし。日頃の感謝を込めてお礼をしないとなぁ。


「いや、お礼をもらうために頑張ってるわけじゃないから本気にしなくていいんだよ?」

「言われたからじゃないですよ。本当に感謝してるのでまた色々としますね」

「本当? ありがとう!」

「いえいえ」


 喜んでくれて何よりだ。でもこういうのはちゃんと実現してから、だよね。

 また今度一緒にいろんなところを回ったり――――こんな事をしてられるのもあと少しかもなんだから精一杯やろう。


「これからもよろしくね、お姉ちゃん」

「もちろん! たくさん頼ってくれていいんだよ?」

「うん、ため込み過ぎない程度に頑張って……躓いたらたくさん頼るかもだけど、よろしくね」


 そんなことを言ってからお姉ちゃんとお別れをした。

 転移で帰っていくから別れるのが一瞬なのは少し寂しいような何というか……。


 ――――いや、何言ってるんだ僕!?


 とにかく、これからはお姉ちゃんに誑かされないように気をつけつつ頑張って仕事を進めていこう! と、今日僕は決意を新たにした。

疲れてて頭回らなくて変な文になっちゃったけどごめんなさい!_φ(_ _).。o○

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