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作戦会議と覗き魔と 1/2

長くなりそうなので前半と後半で分けます!

 私たちはユイに細かく説明をし終わって、これから作戦を立ててリベンジすることになったんだけど……。


「やだー!作戦立てるのめんどくさ〜い!」


 私は早くも弱音を吐いていた。


 作戦なんて考えたこともないのにいい案が簡単に思いつくわけないし、責任とか考えると私には荷が重すぎるよ。


「そう弱気になるなよ。ただ作戦を考えるだけだろ?」


 いつの間にかミニキャラ状態に戻っていたシオンがぷかぷかと浮かびながらそんなことを言う。


 ……ならシオンが考えればいいのに。


「だってさ、適当な作戦じゃダメでしょ?次失敗したら今度こそ殺されちゃうかもしれないじゃん」


 流石に二回目ともなるとそう簡単に見逃してはくれないよね?そうなると一番危険なのはユイだ。

 私はともかく、ユイだけは危険な目に合わせるわけにはいかない。


「万が一にもお前は死なないだろ。……適当でも何でもいいから何か言ってみろよ」


 だけど、シオンは私のそんな心配をよそにそんな事を言う。


 そういうことじゃないんだけどなぁ……。


「むぅ……。じゃあ《変身(レオン)》で姿を変えるとか?私にはそれくらいしか思いつかないよ」


 魔族達に止められないためには、要は人間だってバレなければいいんだよね?なら、姿を変えてしまうのが手っ取り早いと思ったんだけど。


「それでいいんじゃないか?」

「私もみんながそれでいいなら……いいかな」

「え、いいの!?」


 意外にも、みんな私の作戦に乗ってきてくれる。

 本当に適当に立てた作戦なんだけどなぁ。まぁそれは横に置いとくとしても……


「でも、どういう見た目にするかが問題なんだよね」


 魔族と一口に言っても色々な種類がある。獣の頭を持った魔族とか、角が生えていて他は人間に近いものだったりとか。

 因みにシオンは後者のタイプだった。


「どんな見た目の魔族が多いんですか?私たちもそれに合わせるのが一番だと思いますけど」

「あれ、ユイ……いつになく真剣」


 いつもと違ってしっかりとしたユイに少し驚く。

 どうやら、若干ミサさん成分が出ちゃってるみたい。


「だって、お姉ちゃんたちと違って私は弱いんだもん!慎重にいかないとお姉ちゃんたちの足を引っ張っちゃうかもしれないし……」

「大丈夫だよ!ユイの事は私が体を張って全力で死守するから!……それに私たちはユイのことを足手まといだなんて絶対思わないからね!」


 可愛い妹の事を邪魔だなんて思う姉がどこに居ようか!?

 私はいつも全力でユイのことをすこりますよ!!


 と、少し興奮気味だったかもしれないけど私はユイに要らぬ心配はしなくていいと伝えてみた。

 姉としてこう言うのは大切だと思うのですよ!


「……お前、やっぱりシスコ――いや何でもない」


 ……?


 シオンが今何かを言いかけていたような。

 シス……って何のことだろう?


「まぁ俺たちはお前の事を見捨てたりしないさ。仲間を見捨てるほど腐ってはないしな。

 ……それでどんな見た目の魔族が多いかって話だが、基本的にはほぼほぼ人に近いものが多い。そしてその中でも角や尻尾や翼が生えているだけのものが多いな」

「ありがとうございます、シオンさん」


 へー、やっぱりシオンみたいなタイプの魔族が多かったんだ。――って、今ユイがシオンにありがとうって言った!?


 ダメだよユイ!シオンなんかにお礼を言うなんてよくありません!


「ユイ〜、私も〜〜!」


 私だってありがとうって言われたい!それくらいいいよね?

 そう思って私はユイにねだってみた。


「お姉ちゃんもありがとう!」


 すると、私にも笑顔でそう言ってくれた。


 あぁ、ユイが天使すぎて心が浄化されてしまう……。

 えへへと思わず笑みがこぼれてしまうくらいには効いた。

 幸せで蕩けてしまいそう……。


「よし、じゃあ変身しますか!」

「……やけに上機嫌だな」

「まーね」


 妹に無理矢理引き出したとはいえあんな事を言われたら、どうしようもなく上機嫌になってしまうものなのですよ!


「……それにしてもお姉ちゃんはよく声も出さずに変身できるよね」

「ん?変身する時って声を出すのが普通なの?」


 ユイが声を出さずに変身できるなんてすごい!といった感じにキラキラとした目でそう言ってくるけど……申し訳ないけど私には何がすごいのかさっぱりだった。


 もしかして、『へーんしんっ!』(キラッ)みたいなことを言いたくなる衝動を抑えられないみたいなこと?

 まあ、流石にそれなないと思うけど。


「そうか、そういえばお前には分からなかったな。

 《変身(レオン)》の魔法は体内の構造から全て変化させる。だから当然痛みが伴うし、自然と声も出るだろ?」

「なるほど……考えてみればその通りだね。それで、私は特殊な体だから痛くないってことか」


 あの体の中でゴロゴロと骨やら何やらが動いていく感覚は何とも言えない気持ち悪さがあるのに、それプラスで痛みが襲ってくるとか……考えただけで恐ろしい。


「ああ、神の体には元々定まった形がないからな。別に《変身(レオン)》で姿を弄ったところで痛みもなく簡単にそれに適応するだろう。

 とはいえ普通は絶叫するレベルの痛みを全身が変身し終わるまで感じ続ける羽目になる。

 わざわざそんな数回使えば廃人になるような魔法を使う奴なんてそうは居ないから、あの兵士の目も掻い潜れるんじゃないかと踏んでこの作戦に乗った節もある」


 にゃるほど、そこまで考えて……。

 という事は自分の体格とほぼ同じものに変身する分には痛みは少ししか感じないのかな。


「じゃあ私はミサーナの姿になろうかなぁ」

「え、大丈夫なの?痛くないの?」


 ユイの今の体とミサさんの体じゃかなり違いがある。

 そんな姿に変身したら痛みもかなりのものになるはずだけど……。


「大丈夫、私は《幻纏(レイジスコート)》を使うから」


 れいじすこーと?


 何だろう、聞いたことない魔法だなぁ。少なくともあの時見た教科書には書いてなかったはずだけど。

 ()の魔法の知識は基本的な魔法だけだし、()に至ってはついこの前まで魔法なんて使った事なかったし、他の人が使っているのを見て生活魔法を少し知っているくらいだから――魔法については何も分からないと言っても過言ではない。


「その、れいじすこーと?……ってどんな魔法なの?」

「《幻纏(レイジスコート)》は《変身(レオン)》とは違って体を作り変えるのではなく、幻を纏うことによって姿を変える魔法だ」

「そう、だからその魔法を使ってバレないようにしようと思って」

「なるほど!」


 あれ、シオンの説明通りなら《変身(レオン)》を使う必要無くない?……私もその魔法使おうかな。


「じゃあ私もその魔法使うー」

「いや、それはダメだな」

「むぅ……どうして?」


 ユイと一緒に魔法を使おうとウキウキしていたところで出鼻を挫かれて少し不機嫌になった私は、浮いていたシオンを捕まえて頬をつねって伸ばしながらそう聞いた。


 シオンはバタバタと抵抗したけど、ため息を一つ吐くと大人しく話し始めた。


「……言っておくが、そこまで魔族は甘くないと思うぞ?

 所詮は幻を纏わせるだけだから触れられでもされたらすぐバレる。

 というか、入国の時にボディーチェックくらいはされるだろう。さては魔族を舐めてるな?」

「いえ、ただレディにそんな事していいんですか……と脅せばいけるかな、と」

「あ、それはワンチャンあるかも」


 いや、ワンチャンあるんだ!?


 ――というかミサさんよ……レディだなんて、完全に女の子に染まってしまったんだね。

 じゃあ、もうミサさんよりもミサーナさんって呼ぶのが適切なんじゃないかな?


 ……多分。


 まぁ、私も人のこと言えないんだけど。


「じゃあ、結局《変身(レオン)》を使うしかないってこと……?

 お姉ちゃん、痛みを和らげたりできる?」

「うーん、どうかなぁ」


 できればそうしてあげたいんだけど、方法が思いつかない。

 痛覚弱化のスキルみたいなものをユイに付与できればいいんだけど。


「シオン、何かいい方法ない?」

「……そうだな、《痛覚軽減(ケイルドペイン)》という魔法なんてどうだ?痛覚弱化の魔法版みたいなもので、一時的に痛みを和らげることができる。

 効果は使用者の力量に作用されるが……まぁ、お前ならほぼ最高効率で使えるだろう」


 ほほう、そんな良い魔法が!


「取り敢えず使ってみていい?」

「うん、お願い!」


 よし、それじゃあいくよー!


「―― 《痛覚軽減(ケイルドペイン)》!」


 特に痛みを軽減させるイメージが上手くわかなかったから、痛みに対して体が鈍くなるイメージでやってみたけど……上手くいくかな?


 私は上手くいったか少し心配だったけど、一応それっぽいエフェクトが私からユイのところへ飛んでいったからちゃんと発動したってことでいいのかな?


「どうかな?」

「うーん、よくわからない」


 痛覚弱化もそうだけど、発動してても特に何も感じないから成功しているかどうかは分からないかぁ。


「じゃあ軽くつねって確かめてみるね」


 少しつねってみて特に何も感じなかったら成功してるってことでいいよね?

 ということで……


「……てやっ!」


 私はユイの頬に飛びつくと、優しくつねってみる。すると、もちっという感触が私の指を襲った。


 ――な、なにこの素敵な感覚っ!?


 ずっと触っていたいけど、でもちゃんと確かめないと。


「どう、痛い?」


 私はユイの頬をふにふにしながら聞いた。


いたふないへど(痛くないけど)おねえひゃんが(お姉ちゃんが)やはひふふねりすぎな(優しくつねりすぎな)ひもふる(気もする)

「じゃあ、もう少し強くする?」


 私はユイが喋りにくそうだったので一度手を離してあげてそう聞いた。

 私としてはあまり強くつねりたくないのだけど……。


「だめ、痛いのやだ!」

「よかった……」


 ユイがううんと首を横に張ったのをみて、ちょっと安心した。


 私としては可愛い妹に、あまり意地悪なことしたくないからね。

 えへへと笑う顔を見て幸せになるくらいが丁度いいのです。

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