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異世界勇者は転生、そして転性する

おまたせしました

「シュナ、朝だよ〜。起きなさ〜い!」


 遠くからそんな声が聞こえる。


 んんっ……そんな事言われてもまだ眠いよ〜。


「まだ朝じゃんかぁ。寝る時間だよ、寝る時間」


 にゃ〜〜。みゅ〜〜。みゃぁ〜〜。


 私は寝ているのが気持ちよくて、特に意味のない言葉を小声で言い続ける。


 布団に包まると、ふかふかでさらに心地が良い。


 眠ることってやっぱり気持ちいいなぁー。


 そして私はそのまま再び微睡の中へと落ちて――――


「早く起きなさいって言ってるでしょ!!」

「ひゃ、ひゃいっ!」


 まずい、やばいよ!早く起きないと殺されるっ!


 私はお母さんの大声に飛び起きて、そのまま急いで寝巻きから着替える。

 服を選んでいられる時間も無かったので私はタンスの中の服を適当に引っ張って急いで袖を通した。


『ほら、早く起きないからこう言う事になるんだぞ?』

「むぅ、だってーー」


 私の()から聞こえてくるその声は、いつもの様に私に酷いことを言う。


『ほら、喋ってないで早く着替える』

「ひどいよシオンー」


 シオンはいつも私の心の中に居て、話しかけてくる。

 いつから声が聞こえるようになったのかは覚えてないけど……物心ついた時から私の中に居た。


 そんなシオンは優しい時もあるけど、大抵の時はひどい!

 私の考えていることも何となく分かるみたいだし、私のプライバシーが守られることはないのだっ!


 ――でも、邪魔ってわけじゃないんだけどね。


 私からしたらお兄ちゃんみたいな存在だし、一緒にいると寂しく無いから居なくなっちゃったら悲しい。


「シュナー?早くしなさーい」

「うっ、うん!」


 そんな事を考えているとお母さんの声が聞こえてきて……その声に驚いて私は急いで着替える。


 ――私は知っている、この優しそうな声は実は最後通牒で……すぐに行かなければどんな事をされるのかを。


 だから、私はシオンの『ほら、言わんこっちゃ無い』とかいう声は無視して、着替え終わるとダッシュでお母さんのいる所へ向かう。


「着いた!どう?」


 そして、私はお母さんの前にやってくるとそう言って顔色を伺う。

 ――どうやら怒ってはいないみたいだけど、何やら呆れているような……?


「なに……?」

「……起きてきたはいいけど、もう少しちゃんとした服を着てきなさい」

「えっ、どうして?いつもこんな感じの服を着てるのに」

「はぁ……今日はシュナの誕生日でしょ?だからもう少しいい服を着てきなさい」


 お母さんにそこまで言われて私は思い出した。


 ……そう言えば今日は私の誕生日だった!


「ごめん、完全に忘れてた!」

「……もう、自分の誕生日くらい覚えなさいよ。これで十歳になるんだから、もっとしっかりしなさいよ?」

「うん!」


 ――それにしても十歳かぁ。ってことは明日は遂に神殿に行く日だ!楽しみだなぁ……。


 そう、私たち子供は十歳になると神殿へ行ってある事をする。

 学校ではもうそれを終えた人が周りに自慢しあっているから……私も遂にその中の仲間入りというわけだ!


 私は先の事を思って、思わず笑顔になってしまう。


『なぁシュナ、楽しみにしているところ申し訳ないが明日は神殿には行かない方がいい』

「……えっ、どうして?」

『声を抑えろ。お前の母親は俺の事を知らないんだろ?』


 あっ、そうだった!


「……いきなりどうしたの、シュナ?」

「な、な、ナンデモナイヨ?」

「そう?なら良いんだけど……」


 ふぅ、危なかった……。


 案の定心配してきたお母さんを何とか躱して、私はホッと一安心する。

 私の中にシオンが居るだなんていったら、きっと笑われるとか本気で心配されるからまだ言っていない。

 ……シオンもその方が良いって言っていたしね。


 ――続きは部屋に戻って話そう。


 私はバタバタと走って、また私の部屋に戻ってくる。

 そして、ベッドにダイブすると早速聞いてみる事にした。


「……それで、神殿に行っちゃダメってどうしてなの?」

『いや、行ったらダメというか……少しまずい事になる』


 ……まずいこと?


 神殿に行って、ただステータスを測ってもらうだけなのに……どうしてダメなんだろう。

 なにか、よくないことでもあるのかな。


 ――もしかしてシオンの存在がバレちゃうとか?


 自分のステータスを測るの、少し楽しみにしてたけど……それならしょうがないかな。


『そうか、そういえばまだお前は知らなかったな』

「知らない……って何を?」

『――辛いとは思うがお前には思い出してもらう』


 シオンは私にそう言うけど、私はさっぱりだった。

 何で神殿に行っちゃいけないのか分からない。だけど、何か私の知らない理由があるのは分かった。


『取り敢えず、自分の胸に手を当ててみろ』

「うん、分かった」


 何をするのかわからないけど、言われるがまま胸に手を当ててみる。


『そうしたら、《金獅子の精神(ライオンズ・ハート)》と唱えてみろ。お前の才能ならそれだけでできるはずだ』

「できるって……なにを?」

『魔法』

「え……えぇぇぇ!!?」


 嘘でしょ、私……魔法を使えるの!?


「シュナ!?どうしたの?」

「あっ、何でもないよー!」


 驚きのあまり大きな声を出しすぎてお母さんを心配させちゃったけど……でも、それも仕方ないこと。


 だって……魔法は習得するのも使えるようになるのもとても難しいって聞くし、私はまだ学校で習ってない。

 そんなものをいきなり使えるなんて、本当かなぁ。


 でも、それはやってみてのお楽しみということかな。


「《金獅子の精神(ライオンズ・ハート)》!」


 私はシオンの言う通りに魔法を唱えてみる。すると、私の体が黄色く光り輝いた。


「わぁ……光った!すごーい!」

『お前もう静かにする気ないだろ……』

「あっ、ごめん」


 シオンはそう言うけど……でもこんな凄いことが目の前で起こっているのに反応しないなんて無理だよ!

 でも、お母さんに不思議がられるのも嫌だから、今は頑張って驚かないようにしよう。


 ――それにしても、私の体が光ったこと以外は特に何も起こっていない。……さっきのはそれだけの魔法なのかなぁ。


「ねぇシオン、さっきの魔法で何が起こったの?」

『大丈夫だ。ちゃんと変化している』

「本当?」

『ああ。これでようやく思い出してもらうことができる』


 そういえばそうだったっけ。一体何を思い出させてくれるんだろう。


『気を強く持ってろよ?お前の記憶のカギを外す』

「うん」

『じゃあ――()()()、そろそろ起きろ』


 ――ズキンッ!


 シオンがそう言うと同時に私の頭が何かに殴られたかのような強い衝撃に襲われる。

 そして、鈍痛と共に何か……頭の中に膨大な情報が入ってくる。


「あっ、ああっ!!」


 ダメだ、あまりの痛さに声が抑えられない。


 痛み以外に何も考えられない筈なのに、強制的に流れ込んでくる情報の奔流に目を向けさせられて、狂ってしまいそう。

 このまま、自分というものが流し出されてしまうんじゃないかと思えるような情報の塊――魂とも思われるようなナニカに私は意識を放り投げそうになる。


 そして、痛みと共にナニカと混ざっていくような変な感覚を感じる。


 私に一体何が起こってるの……!?


 ――――あれ、()だっけ……?


 その時頭に流れ込んでくるナニカは勢いを増し、私の意識はそれに抗いきれずに持っていかれる。


「シオン……お母さんっ…………助けて……」


 そんな声も虚しく、そうしてシュナの意識はプツンと切れた。

しばらく用事があって書けてませんでしたがそろそろ更新ペース上げていきます。(願望)

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