閑話:最高神スレイナ
昨日は本当に変な夢を見た……。
全部お姉ちゃんのせいだ……!昨日あんなこと言うからだ〜!
人のせいにするのは良くない、それに夢に関する事で……なんて言う人もいるかもしれないけど――――夢の内容が内容だからしょうがない!
だって、内容はお姉ちゃんと一緒に暮らしているというものだよ!
しかも、それだけなら良かったのだけれど……私達二人は結ばれていた!!
本当に、ぜーんぶお姉ちゃんのせいだ!
ととと、これ以上言ったらお姉ちゃんがかわいそうかも。っていうか私、今日は同じ最高神であるスレイナ様の所へ行かなきゃなんだった!
善は急げと言うしさっとく……
「ソプラー、ご飯できたよー」
「え?あっ、うん!」
いきなり聞こえて来たお姉ちゃんの声に驚きながらも、なんとか返事をする。
やっぱりご飯食べてからにしよう。これは仕事に取り組むための必要なものなのです。
せっかく作ってくれた料理を食べないわけにはいかないとか、そういう理由ではない……わけではではないけど。
取り敢えずご飯は食べるの!朝食大事!
「まだー?」
「今行く!」
私は少し足早に食卓へ向かう。そして、そこには美味しそうなパンとスクランブルエッグとレタス、そしてコーヒーが。
「わあ…………ありがとう!お姉ちゃん」
「ふふふ……今日は早く行かないといけないんでしょ。だからすぐ食べれるものにしておいたよ」
おお……優しい。でも、なんかもうお姉ちゃんがお母さんになっている気がする。私だって一人でちゃんとできるもん。……たぶん。
「いただきます」
「どうぞ」
私はパンにレタスとスクランブルエッグをはさんで……一口かじる。
「ん〜〜っ!美味しい!」
「そう?良かった!ソプラはやはりパンがお好き?」
「んー、やっぱりパンが好き!!お姉ちゃんすごいね!なんでも知ってるよー」
ほんと、やっぱりお姉ちゃんには敵わないなー。嘘ついてもすぐバレそう。
というか実際バレちゃうし……。
まさかお姉ちゃんは全知全能!?
「……私だってなんでも知ってる訳じゃないんだよ。ソプラが今何を考えてて、どう思ってるかだって分からないし……。分からないことだらけ。
だからソプラも辛いこととか聞いて欲しいことがあったらいつでも言ってね」
「うん!ありがとう!」
やっぱりお姉ちゃんはお母さんみたいになってる……何かあったのかな?
取り敢えずご飯を食べきってしまおう。そして、早くスレイナ様の所へ行かねば。
私はもぐもぐと、少し急いでパンを食べる。
と、そこで私はパンのお皿の隣に置いてあったコーヒーの存在を思い出した。
あっ、コーヒー。冷めないうちに飲んじゃおう。
私はそう思ってコップを口に近づけた。――のだけど
「にゃっ!!」
思った以上にコーヒーが熱くて、変な声が出てしまう。
熱いっ!!そして苦い……!!
うぅ、コーヒーが舌に…………。
「大丈夫?」
「火傷したかもしれない……」
ふーふーすれば良かった……。
「やはりソプラにはまだコーヒーは早かったか……」
「いや、そんなことないもん。いつもはちゃんと飲めてるもん!」
「え?……いつも?」
あ、そういえばいつもはお姉ちゃんに内緒で飲んでたんだった……!
まずい……!!
「いつもってなーに?ソプラちゃん」
「……いや、それはなんというか。そう、神様にも言葉の誤りというか。うぅ……《危機回避》」
「《魔法解除》」
にゃ!?だめだ逃れられない!!
あっさりと魔法を受け流された私は、その場に固まる事しか出来なかった。
「もぅ……。いいわ、今は許してあげる。仕事もあるしね。でも帰ってきたら……」
「うっ、は、はい」
どうやらお姉ちゃんは今は見逃してくれるようだ。
じゃあ、そのお言葉に甘えて行ってこよう。ご飯も食べ終わっちゃったし。
私はさささっと昨日まとめた荷物を持って玄関へ向かう。
「じゃあ、行ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
さあ、行こう。スレイナ様の所へ。
私はお姉ちゃんに手を振ると、スレイナ様のいる宮廷へ歩き始めた。
◇ ◇ ◇
とうちゃーく!
私は数十分歩いて、白を基調とした内装が綺麗な宮廷へとやって来た。
そして、その中のある一室の扉の前に私は立っていた。
ここがスレイナ様の仕事場か……!扉から綺麗だ。
部屋は清潔に保ちたいのかな?私は全く掃除とかできないから凄いなー!私なんか全部お姉ちゃん任せだもん。
というかこの清潔な状態を汚してしまうのかと心配して入るのが躊躇われてしまう。
でも、こんなところでつまずいてたらお姉ちゃんみたいな立派な神様になれないよね。
私は覚悟を決めて、この扉の奥へ足を踏み入れ――
「スレイナ様に何か御用ですか?」
「ひゃいっ!!」
び、びっくりした……!扉を開けようとしたら横からいきなり声をかけられたから思わず変な声が出ちゃったよ。
……それにしても、一体誰が?
その声の主を確認すべく振り向くと……そこにいたのはスーツを着て眼鏡をかけ、手にはファイルを持っている……まさしく秘書だった。
だけど、その顔には見覚えがあった。
えーと、この方は確かスレイナ様のお付きの秘書さんだっけ?
スレイナ様は近くにいないし今は休憩中なのかな?……部屋の前で休むなんておかしな話だけど。
「あの、大丈夫ですか?」
というかこの秘書さん、お姉ちゃん並みに気配が無かったんだけど!!そんな方まだ神界にいたのか……!
「ソプラ様……?」
「あっ!はい。すみません、少し考え事をしてまして」
あぁ、だめだなぁ私。また考え事に頭が……。前からずっとなのに直せないなんて……。
そういうところは戒めていかないと!
「いいんですよ。それで、ご用件の方は?」
「スレイナ様に一代前の管理神として、管理神の仕事を教えてもらいたくて」
そう、今のままじゃ管理神に選ばれたと言っても何も分からないからね。やっぱり前までやっていた神様に聞くのが一番!
「そうだったのですか。スレイナ様なら今、中庭でご休憩されています」
そうだった!この時間帯は休み時間だったんだった。
「すみません!ではまた今度伺わせてもらいます」
「……いえ、今でいいと思いますよ」
「え、でも……」
休憩時間にお邪魔するなんて……ちょっと申し訳ない気もするし。
「後輩に仕事を教えるのは先輩の役目です。もしそれができないのなら……相手が最高神だろうとなんだろうと許しません」
なんか秘書さん、しっかりしてるなぁ。
憧れちゃうかも。私も見習おう。
「それに、今の方が良かったのかもしれません」
「え、どうしてですか?」
「仕事中よりかは今の休憩時間の方がいいでしょう?」
あ、たしかに。じゃあ、今の方が良かったのかも?
「じゃあ、行ってみます。ありがとうございました!」
「いえいえ」
私はぺこりとお辞儀をする。
すると、秘書さんは手を振って送ってくれた。
私は足早に中庭へ向かう。途中で多くの天使や妖精を見かけた。そしてみんな笑顔だった。
「今日も平和で何より!」
そんな事を感じながら中庭を目指した。
――――っと、着いた。
東の宮の中庭……。初めて来たけどかなり広い。多くの妖精達で賑わっている。そ、その中に探していたスレイナ様を見つけた。
「スレイナ様ー!」
「あ、ソプラちゃんじゃない。どうしたの?」
そういいながら、スレイナ様は持っている本を閉じた。
「すみません、邪魔してしまって」
「ん?ああ、この本のこと?別にいいよ。今読まないといけないって訳でもないし」
やっぱり、スレイナ様は優しいな……。でも、その優しさに甘えているようじゃだめだ!ちゃんと頑張ろう!
「ありがとうございます。スレイナ様」
「うん。それでどうしたの?」
「えーと、管理神の仕事を教えてもらいたくて。……恥ずかしながら、私なにも分からなくて……」
「ああ、そういう事なら任せなさい!」
とんと胸を叩く彼女は、まさに頼れる先輩だった。
それから私は管理神の仕事についていろいろ聞いた。どうやら『世界鏡』という魔法道具を使って様々な世界の様子を見ていくらしい。そして、何か異常があれば直したりするのだそう。
内容は単純だけど、いくつもの世界を覗き、異常を直さなければならないので、大変な仕事なんだとか。
うん!内容も分かったしメモを取ったら早速頑張って仕事するぞー!
私ならやれる!えいえいおー!!
間話はこれにて一旦終了!




