閑話:とある神様のある日の出来事
本編に意外と関係あるのでご注意!
あと、途中で一人称視点に変わるので注意!
ここは神界、いつも世界を見守っている神様達の住まう場所。
そんな場所で今、ある神様の昇格の儀が行われていた。
いかにも神聖そうな神殿の中、巨大な女神が一人。
そしてその前に首を垂れている小さな少女の神様がいた。
「今日を持って上位神≪契約神ソプラ≫を最高神≪管理神ソプラ≫へ昇格することとします。
心をより一層改め最高神として恥じない神になるようにお願いします」
「はいっ!!」
大きな女神の言葉に少女――――ソプラは元気に返事をした。
そう、女神の言葉の通り、今日ここで儀式を行い、そして誕生した最高神とはこの小さな神様、ソプラの事であった。
若干便りなさそうな外見をしているが、彼女のその実力は折り紙つきである。
そんな彼女だからこそ、この神界を総べる母神たるこの女神は最高神という格を彼女に授けたのだ。
さて、そんな彼女は今どう思っているのかといえば――
ああ……私ついに最高神になったんだ!
しかも世界や神、生物など、全てを作り出したと言われる母神様直々に伝えられたから余計に実感が湧く……!
今日は生まれてから今までで一番嬉しい日かも!
――と、喜んでいた。
流石に顔には出ていないが、心の中では外見相応のはしゃぎようだった。
とはいえ、
よし!明日から母神様の期待を裏切らないためにも最高神としての仕事を一生懸命頑張ろう!
そのためにも今日は頑張って寝なくては!お姉ちゃんにも『ちゃんと寝ないと一人前の神にはなれないぞー』って言われたし、睡眠って大切なんだね!
などと、意外としっかりしているところは流石最高神というところか。
「それでは、これで昇格の儀を終わります。最高神という肩書が変わっただけでなく、神としての位も上がりより一層大きな存在になったことを努々忘れぬように。……特にソプラ、貴女はね」
「は、はいっ!!」
「よろしい。では」
母神はそう話すと消えてしまった。
あとには母神が消えると同時に舞った光の粒がほのかに光を発し、優しく消えていく光景が残った。
「きれい……」
これは《降世羽衣》という母神の使う転移魔法だであり、世界から世界へ飛ぶことも、次元を超えて何処かへ飛ぶこともできると言われている。
あまり人前には姿を見せない母神なので、このような光景を見ることができる物は限られてくる。
なので、この光景はここまで頑張って来たソプラにとってはとても嬉しいものであっただろう。
ソプラは、とても凄い魔法だなと思いつつ、いつかそんな魔法を使いこなす日が来るのかなぁと未来の自分の姿を想像してみる。
結果はいつもと同じ、自分の未来の姿は分からなかった。
とはいえ未来を見ると言う点では、この神界にはその道のスペシャリスト達が何人もいる。
実際ソプラも運命神であるティファーニアの存在が頭に思い浮かんだが、聞けば分かるかもしれないけれど、神生の楽しみが一つ減る気がすると言う理由から、やめておいた。
◯ ◯ ◯
とりあえず、儀式も終わったので神殿から出る事にした。
外に出ると、辺りはもう暗くて……それに雪が少し降っていた。
私は空を見上げていると、ふと、さっきの反省点が思い浮かんだ。
私ってつい考えごとに没頭しちゃう癖があるんだよね。さっきもそう、母神様の前なのに考えごとに没頭しちゃった。
……直さないとな、この癖。一人前の神様になるための第一歩、そう思って頑張ろう!
「さて、今日はもう帰ろー。お姉ちゃんが家で待ってるよー」
「それが待ってないんだよねー」
家に向かって歩き出そうとした時、突然近くからそんな声が聞こえて来た。
え、だれ?待ってないってどういう……
聞こえて来た誰かの言葉に思わずびっくりしてしまう。
だけど、それが命取りだった。
「ふにゃっ!!?」
その時、突然何かにぶつかったような背中に衝撃が走る。
な、なに!?いきなり体当たりされた?いや違う……私、後ろから抱きしめられてる!?
突然の出来事に思考停止し掛けてしまうが、ギリギリのところで踏みとどまる。
何がなんだか分からないよ〜!でも、冷静に……クールになるんだ私。
いきなり後ろから私に抱きついてくるような神は一人しかいない!!
――そう、お姉ちゃんである!
と、結論を出した私は、冷静を装って
「……お姉ちゃん、何してるの?」
と言ってみる。本当は心臓ばっくばくだけどね、バックハグだけに。
――我ながら寒いね。
だけど、この寒さはきっとこの雪のせいだ!きっとそうに違いない!
……。いやいや、今はそこじゃない!本当にお姉ちゃんなのか!というか違かったら怖いというところである。
私は内心でビクビクしながら返答を待った。
「いやー、バレた?そうそう、絶賛妹に抱きつき中のお姉ちゃんです!」
「それでいいのかお姉ちゃん……」
結果はやっぱりお姉ちゃんだったので、そこは一安心。
私は一つため息をつくと後ろを振り返った。
それにしても、お姉ちゃんの方が最高神としての自覚が足りていないんじゃないかな……。
「いいの、可愛い妹がいれば私はどうなったっていいんだから」
「私はよくないと思うな……」
でも、ちょっと嬉しいかも。……って、何考えてるんだ私!
お姉ちゃんはただの変態さんなんだから!それだけなんだから!
――あっ、冷静。冷静を保たないと……。
「それで、お姉ちゃんはどうしてここにいるの?」
「妹に抱きつ……コホン、迎えにきただけだよ。不純なことは何もない、うん」
「あはは……」
お姉ちゃんの言動から不純な事しか感じ取れなかった私は、思わず苦笑いしてしまう。
だけど、そんな事を吹き飛ばすようにお姉ちゃんは元気よく言った。
「じゃあ、帰ろっか。今日は妹の昇格を祝して、私がご馳走を作ってやろう!」
「本当?やった〜!」
でも、お姉ちゃんの姿を見てると、姉として一生懸命頑張っているのかな……なんて思えてくる。
なら、私もちゃんと妹として頑張れるようになろう。そして、いつかお姉ちゃんに追いついてやるんだ!
お姉ちゃんの保持している最高神昇格の最年少記録にはあと二か月及ばなかったけれど、いつか一緒に肩を並べて歩いていけるようになりたいな。
当分は無理そうだけど……。
だけど、私をこんな夢を持てるくらい育ててくれたお姉ちゃんには感謝しかない。だから
「お姉ちゃん、いつもありがとう」
「どういたしまして。…………で、どうしたの?いきなり」
「言いたくなっただけだよー」
私は『ありがとう』と言ったところで意外と自分が恥ずかしい事に気づき、そっぽを向く。
「そうなの?でも、こっちこそ感謝してるのよ」
お姉ちゃんが私に感謝してる?
そんな事は特に思いつかなくて、だけどもっと注意深く探してみると、一つ見つかった。
「抱き枕になってあげてるから?」
「それもあるけど……」
「それもあるんだ……!」
「そばにいてくれるだけで、私は幸せになれるの。ソプラのために色々とすることも、楽しいし、嬉しいの。だから、ありがとう!」
お姉ちゃん……。
「な、なんだか恥ずかしい」
「こ、この話はここでやめにしよ?私も恥ずかしい!というかなんで言われた側のソプラが恥ずかしがってるの?」
そう言われたところで、確かに私が恥ずかしがるのはちょっと変かもしれないと思ったけど……これはしょうがない!
「いや、だって……お姉ちゃん優しいなって、思ったらつい……」
お姉ちゃんが私のことをそんなに大切にしてくれてるなんて思ってもなかったから。
驚きと、恥ずかしさとで…………もう、むりっ!!
「なっ……。もうお姉ちゃん我慢の限界だわ。ソプラ!」
「……なに?」
「結婚しよう!!」
「なっ…………えっ!!?」
お姉ちゃんの突然の爆弾発言に、思わずびっくりしてしまう。
けっ、けっこん?お姉ちゃんはなにを言って……
「家は一戸建てで、大きな庭があって。そこで二人で暮らすんだ!子供は二人くらい欲しいな……。名前は男の子だったら…………」
「す、ストップ!!お姉ちゃん、それ以上はダメです!帰りましょう!」
なんか、話が変な方向に向かっていた。なんとなく、止めないとヤバい気がした……。
「あっ、私は何を…………!?」
「なにも無かった。なにも無かったんだよ。お姉ちゃん」
「そうだよね、私はなにも変なことは言っていない!」
「うん、その通りだよ!お姉ちゃんはなにも変なことは言っていない!」
もう、お姉ちゃんのせいでさっきから心臓の鼓動がおさまらないよ……。
騒がしくも楽しい毎日、のはずなんだけど…………これじゃあちょっと騒がしすぎかな。
「よし、今度こそ我が家へ帰ろっか!」
「うん!」
あれ、そういえば私、もうお姉ちゃんと大きな庭のある一戸建てに住んでいるじゃん。
――結婚までの道は短かったりする?
と、そこまで考えたところで、自分は何を考えているんだと冷静になる。
この話はこれで終わり!
でも、お姉ちゃんとなら……なんて思っちゃってる自分もいるし、案外愛さえあればなんとかなるのかも。
――でも、やっぱり結婚はしないけどね!?
これから間話がもう一話ほど続きます。




