ネズミと戯れていたら魔王にエンカウントした件
果たして年末までに一章が書き終わるのか……!!?
――――唐突ですが、捕まりました。
いや、本当に唐突だなというコメントは無視する事にして……。
魔族と初戦闘を繰り広げたあの後、この強さなら彼奴らを見返すのも時間の問題かも――なんて事を思っていたら、即落ち2コマの様に捕まってしまった。
一つ言い訳させてもらうと相手が悪かった!
いくら『魔』に強くても、流石に邪神には勝てんですよ。だって名前に『魔』がついてないし。……魔神、せめて魔神にして。
というか曲がりなりにも『神』なんだったらどうしてそちらの味方をするんだよ!?
こちとら転移させられてから不運続きで、こうして魔族領まで飛ばされているんですが!?
そんな身の上を考えれば少しくらいこちらの味方をしてくれたって……。
――いや、よくよく考えてみれば僕があのユニークスキル《滅魔の覇気》を獲得したのって【神の願い箱】とかいうアイテムのおかげだよね?
という事は神様はちゃっかり僕のことを助けていたわけだ!
ありがとう神よ……!
――――魔神?邪神?知らない子ですね。
しかし、まぁ結局のところ僕は見事に邪神に捕まって牢屋へと放り込まれてしまった訳だが。
でも、ポジティブに考えれば捕まったお陰で魔王城へ潜入――拉致監禁ともいう――することができた訳だ。
ただ問題があるとすれば、この牢屋は臭いし寒いし暗いし狭いしでキツイということ。
――――うん、問題しかない。
しかし、それ以上に問題なことがある。
「お腹すいた〜〜!」
寒いの暗いのは我慢できても、これだけはどうしても我慢できない。
このままだと凍死だとか精神が病むとか、それ以前に餓死するわ!
とはいえ、周りには誰もいないし……虚空に向かって叫んでもご飯が出てくるはずがない。
でも、本当にこの牢屋何もないのだ。
王国のやつはベッドやらトイレやらは一応付いていたが……ここは本当に何もない。
地下なのか知らないが窓もなく光も殆どない。
うう……このままだとやっぱり餓死する前に心が壊れてしまいそうだ。
狂います。そして死にます。狂い死にです。
――と、その時何かの気配を感じた。
気配を感じたと言っても、僕は別に探知系のスキルなんかを持っている訳じゃないので確証はないが……この辺り一体は静寂に包まれているので小さな物音も気づくことができる。
そのため、僕でも近づいてくるその気配に気がつくことができたのだが――――大きな気配ではなく、小さい。
ただ、だからといって警戒を緩めるわけにはいかない。
気配を殺すようなスキルが存在する可能性がある以上、相手の力量を気配だけで判断するのは早計というものだ。
ということで、僕はじっと息を殺してその存在が僕の前へ現れるのを待った。
そして一分弱待っていると……気配の主が現れた。
それは長い尻尾と暗闇に光る二つの赤い目を持っており、体は黒い毛に覆われている――――ネズミだった。
僕は即座に牢屋の格子の隙間から手を伸ばし捕まえる、そして牢屋に引き摺り込む。その間チュウチュウとネズミは鳴いていたが強い心を以て無視した。
――嘘、強がった。本当は辛い、精神的にダメージを負った。
だが、ここで逃すわけにはいかない。
何故なら、お前はネズミであり、小動物であり、毒を持っていることもあるけど――その点を除けばお前は立派な栄養源、食糧なんだよっ!
僕はネズミを両手で持ち上げて顔の前へ持ってくる。
「ううっ、そんな顔するなよ」
目が、目がうるうるしてる。やっぱり僕には無理だ……できないよ。
「今日からお前をチュウ太郎と名付ける!」
食料になる代わりにお前にはここにいてもらうからな。一人だと気が狂いそうだし……。
決してお前の事を可哀想に思った訳じゃない、人間としての何かが僕を止めたんだ。……勘違いするな、お前の為じゃないからな!
――――と、こんな事があり僕は新たな仲間?を手に入れたのである。
◇ ◇ ◇
とある城の牢屋に空腹、目眩、喉の渇き、倦怠感を感じている齢十三ばかりの死にそうな男の子がいます。さあ誰でしょう?
――正解!そう僕のことでした!
……正解しても嬉しくないです、むしろ虚しくなって辛い。
あれから一度眠ったのだが、こんなに絶望的な環境にも関わらず我ながら恐ろしい事に快眠だったので八時間かそこら経った事になるが……状況は全く変わっていない。いや寧ろ仲間を一匹失った。
そう、チュウ太郎が消えたのである!
――当然といえば当然なのだが、それでも精神的な支えを失ったのでキツい。
いや、まあネズミに縋るようになったらそれはそれで終わりな気もするが……。
取り敢えず声を大にして言いたい『早く出せ』と。しかし言えないから『食料を下さい』と頼みたい……が、残念なことに頼めないし相手がいないけどなっ!
というか、魔族達は何がしたいんだ?流石に此処でただ餓死させるって訳じゃないよね?
――――――分からん!
魔族が何を考えているのか、何とか予想しようとしてみたがサッパリだった。
だが、その代わり…………僕はまた何かの気配を感じとった。
どうやら今回はチュウ太郎のような小動物では無さそうだ。何故なら……明らかに気配が違うのだ。
さっきのものは気を付けないと気づかなかったが、今回は肌を刺すような威圧感が僕の全身を襲っている。
こいつはまずい。僕の身体全身が警鐘を鳴らしている。
今までで感じた事ないほどの圧迫感。――気配だけでここまでできるものなのか。
そんな規格外の存在が、僕の方へと近づいてくる。そう思うと体の震えが止まらなかった。
――と、その時……巨大な威圧感の中で一つの懐かしい声が聞こえた。
「チュウチュウ!」
ち、チュウ太郎か!?よくこの威圧感の中動けるものだ。
仲間の逞しさに胸を打たれていると、別のネズミでは無く本当にチュウ太郎が牢屋の中へ入ってきた。
……嬉しい。よし、お前は今日から忠太郎だ!
でも何故今帰って来たんだ?いや、純粋に帰ってきてくれるのは嬉しいんだけどさ、明らかにヤバいモノがこっちに向かって来てるんだよ。
……意外にも魔族軍の幹部とかだったりして。――――やばいそんな気がしてきた。
あー、もうそこまで来てるよ。来るなら早く来いよ!なんでゆっくり歩いて来てるんだよ!?焦らされると余計怖いわ!
――――あれ?さっきよりも速い勢いでこちらに向かってきてない!?
ちょっと待って?いや、お願いします!……あの、すみませんでした!こっちにも心の準備というモノが!
ーー条件を満たしました
ーースキル《感知I》を入手しました
え?そのタイミングで新しいスキル入手する?するならもっと早くにして欲しかった。
まぁ、今更そうぼやいてもどうにかなる訳じゃないし……腹を括ろう。どうやら避けられない様だしね。
という事で、僕はどうこうするのを諦めて……ただ待つ事にした。
「どうも」
「どうも……?」
そうして現れたのはマントを付けてて、髭が生えてて、かっこよくて……うー、語彙力の喪失……!!
取り敢えず一言で表すなら『魔王』というか言葉が似合いそうなイケメンがそこにいた。
「さて、早速で悪いが……お前が王国の召喚した勇者の一人という事で合っているよな?」
そんな彼は、僕に会うなりすぐにそう言った。
――これから何が始まるのかは分からなかったが……先行きには不安しかない事は確かだった。
よければブクマ等々お願いします!( ˘ω˘ )




