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ステータスオープン!

 ミサーナさんの事をミサさんと呼ぶ様になってから数日後のこと。

 僕はいつもと同じ様に、僕から勝手に信用され心配され……挙句の果てには一時裏切り者とまで思われていたグラス先生の授業を聞いていたのだが、突然先生が授業の話を一旦止めこの様な事を言い出した。


「そういえばお前達にはまだステータスについて話していなかったか……?

 …………いや、あの頃のお前らはまだステータスについて教えるには早かったし、変に調子に乗られるのも困ったからな。

 だが、そろそろ話してもいい頃合いだろう。


 ……というのは建前で、本音を言えば伝えるのを完全に忘れていた。すまんな」


 ――本音ぇぇ……。


 どうしてこの先生はいつも肝心なところで抜けているんだ?……まぁ、重要なミスはしていないし、むしろこの件に関してはこのタイミングで良かったとも思うけど。


 というか、やっぱり予想はしていたけどファンタジーな世界なだけあってステータスとか存在するんですね。


 ――と、ここでクラスメイトの一人が手を挙げる、クラスの中心的な人物である中野だ。


「ん、どうした中野。俺の建前と本音の巧みな使い分けに惚れたか?」


 先生も中野の挙手に気がつき反応するが――――違う、そうじゃない。感が否めない反応だ。

 というか実際中野も


「いえ、そういう訳では……」


 と、困惑しつつも否定していた。

 しかしどうやら先生は本気――とまではいかなくても、肯定する事を少し期待していたらしく


「そ、そうか……」


 と、露骨にしょぼんとしていた。顔文字にすると(´・ω・`)こんな感じだ。

 ――ノートに書いた余計なものを消す。きれいに消せずうっすらと残る(´・ω・`)。


 この世界にもノートや鉛筆、消しゴムの様なものはあるが日本の物に比べるとかなり質が悪い。

 まあ、そんなものを使いやすくするのに時間を掛けるなら魔王を倒せって話だ。


 ……というかこれもはや消しゴムですらないらしい。洗浄の魔法もどきがかかったゴムもどき。


 もどきのもどき。


 それはもう別物では……。まあ、みんなが消しゴムって言ってるし消しゴムなんだろう。消せないゴムもどきではなく。


 とりあえず話を聞こう。こんなこと考えても誰かに伝えられないし。精神的距離的に考えて――――はっきりと言うなら友達いないし、誰も僕と関わってくれようとしないし、先生とも関わり辛いし。

 ――あれ、こう考えてみると僕の周り敵に囲まれている……とまでは言わないけど、もしかしなくても仲間が居ない?


 あれ……おかしいぞ。他の人たちは少なからず友人や仲間が居るのに僕だけ……。

 ミサさんに関しても、友人という様な感じでもないし……何というか今の関係をあえて言葉にしてみるなら「メイドと勇者」であると同時に、ある意味「主人と奴隷」でもある。――もちろん奴隷とは僕の事だ。


 世知辛い世の中だなぁ……。


 しかし、そんな世界でもめげずに生きる日野翔(十三歳)、ここで満を持して手札から場にカードを出します!いけっ!


 閑話休題ッ!!


 さて、本音と建前の使い分けが何とかという話が否定されて落ち込んでいた先生だったが、「じゃあどうしたんだ?」と中野に聞く。

 ――あれ、この先生本当に気づいてない?


「先生、自分達のステータスを見る方法を教えてください!」

「ああ、なるほど」


 ここでようやく先生は理解した様だった。――何というか、さてはこの先生僕達にステータスを見る方法は話したけど、その詳細については話していなかった……なんて感じに思っていたのではないか?

 まあ、うん。……そんな日もあるよね!


 僕は心の中で先生に親指を立ててあげた。


 さて、自分達のステータスを見る方法だが……創作物ではよく『ステータスオープン』と唱えると窓――ステータスウィンドウが目の前に現れるというのがよくあr――


 なんだ!?いきなり目の前が光り輝き出したぞ!?


 異常な事態に辺りを確認してみるが、他のクラスメイト達はこの事に気づいた様子はない。――という事は、どうやらこの光は他の人には見えていないのか。


 しかし、このタイミングで来るという事は、まさかこれは……


「ステータスを見る方法……それはな、ただ『ステータスオープン』と唱えるだけだ。簡単だろう?……因みに声に出しても頭の中で唱えても変わらん」


 光が段々と収束して収まったので光の発生源だったところを見ると、そこには薄い板の様なものが空中に浮遊していた。――恐らくはこれがステータスウィンドウだろう。

 つまり、ここに僕の現時点でのステータス(利用価値)が書かれているわけだ。


 見たくない……というのが正直なところだ。何というか現実から目を背けたいとか、テストの結果を確認したくないという感情にも似た思い。

 だが、見なければ何も始まらない。たとえ目を逸らしたとしても結果が何か変わるわけでも無いし。


 だから、目の前の板にしっかりと目を向ける。そして一番端から文字を確認していく。



 ――――――――


 ヒノ カケル(13) Lv.1


 種族:人  性別:男

 職業:-


〈称号〉

 異世界からの来訪者

 神の祝福


 HP 300/300  MP 50/50

 ATK 20 DEF 25 AGI 30 LUK


〈スキル〉

 常時発動(パッシブスキル):被ダメージ軽減Ⅲ

      痛覚弱化Ⅲ

      精神負荷軽減Ⅲ

 任意発動(アクティブスキル):-


〈魔法〉

 -


〈所持品〉

 神の願い箱


〈装備品〉

 -


 ――――――――


 そういえば、経験や性格はステータスととても強い関係があるというのは聞いたことがあるが――僕のステータスを見るに本当にその通りだった様だ。


 受けるダメージを少なくしたり、精神負荷に耐性があったり……おまけにLUK、運が文字通り無い。


 クラスメイト達のステータスは分からないが、多分これATKとか全部低いんだろう。

 体育会系でも無いし、かといって特別頭がいいわけでも無いし。


 まぁポジティブに捉えるなら「伸び代が大きい」というとこだろうか。――自分で言っていて虚しくなるけど、きっと大丈夫。何とかなるさ!……多分。


「さて、全員確認したか?それがお前達のステータスだ。

 勇者である以上この世界の平均よりはかなり高い数値になっている筈だ。

 だが、この数値はお前らの努力次第では更に高くなっていくから、全員もっと強くなれる様に励むようにしろよ」


 平均よりは上――でも、足りない。おそらくこの程度では国を潰すのは無理だ。圧倒的な力が無ければ。

 地道なトレーニング……は、流石に駄目だろうな。もっと効率のいい方法を探さなければ。


 この世界に来てからまだ日は浅いんだ。当然だが現状この世界についてほとんど分かっていない。歴史も、魔術も、勇者、それに魔王のことだって。

 探せばきっと手っ取り早く強くなれる方法だってあるはずだ。


 そう考えて、僕はその日から「強くなること」を目標に開いた時間に走り込みやら腕立て伏せやら、知っているトレーニング方法を片っ端から試してみたり、城にある図書館で手っ取り早く強くなれる方法を探してみたりと色々努力をする事にした。



 ◇ ◇ ◇



 それから何日かして図書館でいい情報を見つけた。


 どうやら強くなる為にはレベルを上げるしかない。訳ではないらしい。――単純な話だ、装備を整えればいい。

 まぁこの城の中では僕は訓練用の木剣くらいしか見たことないんだけど。

 というか「ゆうしゃのけん」みたいなあからさまに強そうな武器を仮に手に入れたとしても、今の僕には装備できなさそうだからあまり意味のない情報なのかもしれないが。


 他には、体を鍛えたりすればステータスが成長するらしい。

 厳密にいえば基礎ステータスというものが上がる。――これはとりあえず、レベルの上昇によるステータスの変化ではない、と思っておけば良いだろう。


 敵とかを倒さなくても良い分安全にステータスを上げることができるが、その分成長するステータスは微々たるものだ。更に、上がるステータスにも限界がある。

 一応異世界転移特典みたいなもので、僕らはその成長するステータスが普通よりも少し多いみたいだが……それでも敵を倒すよりかは遥かに効率が落ちるだろう。


 ――そして、強くなる方法はもう一つあった。これは……多分無理だけど。


 方法としては、精霊を召喚し契約する。簡単そうに見えてとても難しいことだ。

 精霊と契約するには精霊と僕が契約に同意しなければならない。

 あくまでも契約なので互いの同意が必要なのだ。が、僕には精霊に同意してもらえる気がしない。


 ――力を認めてもらえなければ精霊は大体契約してくれないらしいのだ。


 僕はまた強くなる為にはある程度の強さが必要になってくるのか……と落ち込んだ。


 しかし、まだ四つ目がある。


 肝心の方法はというと、分かりきっている事ではあるが魔物を倒す事だ。

 どうやら魔物など魔力を帯びているものを倒すと通常の敵、要するに大蛇などの動物系のものを倒すのと比べてかなりの経験値が手に入るそうだ。しかも、それに加え、限界魔力量が倒すたびに増えるらしい。


 僕たちは一応勇者なのでこれから魔物など、魔力を帯びた敵と戦うことも少なくはないだろう。


 ――今はこれに賭けるしかない。そう思った。


 まぁ魔物と言ってもそこまで強くない奴しか今の僕には倒せないだろうけど。でも、希望は見えた。と信じたい。

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