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理不尽な二択

どうも、コロナワクチンの副作用で絶賛発熱中のsironeko*です……。

「さて、そろそろ行くか」


 僕は時計の針が二十三時を指したのを見て椅子から立ち上がった。

 そして、ベッドの上に準備していたタオルや着替えを持って自分の部屋を出る。


 大浴場は寮棟にあるわけではなく別の建物にあるので、部屋からは少し距離がある。だから、しばらく廊下を歩いていかなくてはいけないのだが…………昼はあまり感じなかったけどこの時間になると流石に寒いな。

 まだ四月だし、暖かくなるのはもう少し先のことだろうけど……この時間に出歩く者としては暖かくなるのが待ち遠しい。


 さて、そんな事を考えている間に寮棟の一階へ降りてきた。そして、辺りを見渡す。

 すると少し暗くて視界が悪かったが、探すとすぐに王宮の敷地内の建物などに関する案内板が見つけることができた。


「えっと、大浴場は…………ここから東側の建物か」


 大浴場へは行った事がないので一応どこにあるのか確認しておきたかったのだが、すぐに見つかって良かった。


 よし、場所も分かったことだし少し急ぎつつ大浴場へ向かおう!



 ◇ ◇ ◇



「え?」


 大浴場の前についた時、混乱と衝撃から思わずそんな言葉が口から出た。

 それもそのはず、大浴場へ意気揚々とやって来て、いざ中へ入ろうとした矢先に、あまりにも理不尽すぎる二択を強制的に押し付けられたのだ。


 ――そう、例えば日本であれば銭湯なんかで浴場に入ろうとした時に、一目でどっちが男湯でどっちが女湯なのか判別がつくと思う。主に赤と青の暖簾で。

 しかし、今僕の目の前にあるのは――――


 ――――紫の暖簾と緑の暖簾。



 う そ だ ろ ?



 自分は今、最難関の二択を迫られているのだと直感的に判断した時、僕は膝から崩れ落ちた。


 当たれば大浴場で温かいお風呂、外れれば…………想像もしたくない結末が待っている。


「こうなったら、諦めて部屋に戻る……か?」


 一番安全なのは引き返して自室に戻ることだろう。

 しかし、そうなれば体を清潔に保てなくなるという事であり、最悪それによっていじめの悪化に繋がるかもしれない。

 ――――それに、引き返すという事は僕を大浴場の閉鎖時間に間に合うように夕食を手早く作ってくれたミサーナさんの気持ちを裏切ることになってしまう。

 ……それは、嫌だ。


 考えるんだ。日本では青が男湯で赤が女湯だった。であれば――


 ――緑が男湯で紫が女湯……か?


 完全に僕の主観での判断だが時間も残り少ないし、もはやこれ以上考えている時間はない。

 まあ、最悪間違ったとしてもこの時間にお風呂に入っている人なんてそうは居ないだろう。……居ないよね?


「失礼します…………」


 僕は恐る恐る緑の暖簾をくぐり中に入る。


 すると、脱衣場は木を基調とした作りになっておりとても綺麗で……なんとなく安心させてくれるような気もする。

 ――ただ、まだ安心してはいられない。


「ここが男湯だと分かるような物は何かないかな……」


 それさえあればいくらか安心できるというものだ。なので色々探してみようと辺りを見回してみる。

 すると、近くの机に何か置かれているのが分かった。


「あれは……?」


 近づいて確認してみると籠が置いてあって、その中に石鹸と髭剃り――元の世界で見たような形では無かった――があった。

 というか、髭剃りというものをまだ使った事がないので、これが本当にそうだと言い切ることはできないが……恐らくそうだろう。


 まあとにかく…………これでここが男湯だと分かったわけだ。


「……はぁ、良かったー!!……すごい緊張した」


 これでようやく安心できる。……まさかお風呂に入るのにこんなに苦労するとは思わなかった。


 さて、落ち着いたところで辺りをもう少し見回してみる。……すると何やら見慣れない機械のようなものが置いてあるのが見えた。

 ……これも使い方がよく分からないけど、ドライヤーみたいな道具なのかな?……近くに鏡も置いてあるし。

 他には、日本のものと同じように木でできたロッカーと籠がある。たぶんここに脱いだ服とかを入れておくのだろう。


 一先ず、観察はこの辺にしておこう。……今は早くお風呂に浸かって、ゆっくりと過ごしたい。


 という事で、僕はさっさと着ていた服を脱いでロッカーの中の籠に入れる。そして風呂場へと向かった。



「広い……そして白い……」


 流石は大浴場なだけあって、中はとても広かった。――そして、白いというのは湯気のことだ。絶対に湯加減を間違えてるだろ!……ってくらい湯気がたっている。

 視界が悪いし、熱が体を襲うしで、このままでは蒸し上がってしまう。


 そういえばここには露天風呂があると聞いたけど……あの扉から外に出られるのかな。


 僕は少し先に扉を見つけて、露天風呂の存在を思い出した。

 サウナ状態の中で流石にゆっくりはできないので、取り敢えず外に出てみることにしよう。


 そう思って僕は掛け湯で体を一度流した後、露天風呂へと続く扉を開けた。

 

 すると、外は――――やはりこちらも白い湯煙が立ち込めていた。やっぱり寒いと湯気が出るし、そこは仕方ないか。

 とはいえ、室内よりはマシだ。こっちは少し視界が悪いくらいで蒸される心配はない。


「これで、ついに正真正銘ゆっくり休める……!」


 外だと風があたって少し肌寒いし、さっさと入っちゃうか。

 という事で一度手でお湯の温度を確かめた後肩まで浸かる。


 湯気の出具合からものすごく熱いのかと心配していたが、実際はそこまでじゃなくて、寧ろ今日みたいに寒い日には丁度いい湯加減だった。


「はぁ……」


 こうしてお湯に浸かっていると日頃の疲れが取れていくし心まで温まってくる。…………やっぱりお風呂っていいよね。


 僕はそんな感じのことを思いながら、初めての大浴場を満喫していた。――――そう、この時までは。


 大浴場にこの時間には誰もいないと勝手に思い込んで安心しきっていたが、実際はそんなことはなく……僕は白い湯気の中に一人の姿を見つけてしまう。


 ――誰か、いる?……こんな時間に?

 幸いクラスメイトでは無さそうだけど。……じゃあ誰だろうか?


 疑問に思って、湯気でよく見えないけどその姿を見つめてみる。

 するとその人は丁度こちらの方を向いて……。そして目が合ってしまう。


「え……?」


 それは湯気で若干分かりづらかったが、紛れもなく――――


「ミサーナさん……!?」


 ――――ミサーナさんであった。

……半年経ちそうだけど、未だに転生して転性してないのって……冷静に考えてまずくない?(まずい)

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