メイドさんはいつも唐突に現れる!
お久しぶりです。\(^o^)/
また少しずつ頑張っていきます!
「はぁ……」
部屋に戻った僕は、やる事もなくただベッドの上でゴロゴロしていた。
――いや、やる事がないと言ったら嘘になる。本当は今日の事を整理してこれからの事を考えたりしなければならない。だけど、今はとにかく何も考えたくないのだ。
なぜなら……考える事が多すぎるから。
考えるだけで頭が痛くなるような事が沢山あって……もう、勝手に解決してくれるのを待とうかとも思っている。
いや、でもそれでいいんじゃないか?
――だって僕はただの中学生。もっと何も考えずになるようになるさといった感じで過ごせばいいんじゃないか。何やら先生は僕の事を誤解しているようだけど、頭はそこまで良くないし運動も人並みにしかできない。
判断力とか精神面ではそれなりに良い方だとは思うけど……。
とにかく、別に多くの物事を考える必要は無い筈だ。第一に、それは和田さんとかの役目だろうし。
……うん、今日は考えるのはやめよう。考えてもいいことなんてないからね!
という事で少し強引に考える内容を変えることにする。そして、僕は何かいい話題はないかと考えて一つ思い付いた。
――――ふかふかのベッド気持ち良すぎだろ!
……何か話題があるかといえばこれくらいしか無かった。
いや、正確にはもっと他のこともあったが……明るい話題はこれくらいしか思い浮かばなかったのだ。
まぁこんな事を思っていてもしょうがない。早速この話題に移ることにするが――どうやら僕のいない間に部屋の中は綺麗に片付けられたみたいで、もうこの部屋は物置とは呼べないレベルの素晴らしい物へと生まれ変わっていた。
それにベッドなど、埃などで使えそうも無かった物も新しい物に交換されており最高である。
これは感謝しないとな。ここを片付けてくれた全ての人に感謝!
ただ、いくつか困る事があって――この部屋は扉が無くなったため廊下の少し肌寒い空気が部屋の中に入り込んでくるのだ。
他の部屋がどうなってるのかは分からないがこの部屋には暖房らしき物は見当たらないのでちょっと不便ではある。
そして――――扉がなくなった事で僕のプライバシーは完全に失われてしまったのだ!
まあ、これら関しては扉を壊すことになる原因を作ってしまった僕が悪いので、何とも言えない。
ただ、埃っぽかった部屋が嘘のように綺麗になったことは本当に感謝しないといけないな。
僕は心の中でもう一度片付けてくれた人達へ感謝をする。
――と、その時
「入ってもよろしいですか?」
と、澄んだ声が聞こえた。
突然の来客に驚きつつ、僕はベッドから急いで起きる。
この声には聞き覚えがある。そう思い少し記憶を探ってみることにしたが、すぐに思い当たった。
噂をすれば何とやらというが――そう、あの時のメイドさんである。
であれば、断る理由も特に無い――というよりも、断るとどんな事になるか分からないので僕は直ぐに返事をする。
すると、「失礼します」という声と共に例のメイドさんが部屋に入ってきた。
「どうしたんですか?こんな時間に」
例のお願いの件か、または他の件か。流石に『やっぱりお金を払ってください』とは言われないと思いたいが。
でも、そんな事を一々考えていてもしょうがないと思ったので僕は直接聞いてみる事にしたのだ。
「何か勘違いされても困るので初めに言っておきますが、例のお願いが決まったわけではありません」
「そうなんですか」
そこは一安心。……ただ、先延ばしにされるというのもそれはそれで怖いとは思うけれど。
「なら、どんな用でここへ来たんですか?」
そこが素直に気になるので聞いてみたのだが――少しメイドさんは考えるような素振りを見せた。
それから少しして、彼女は口を開いて言った。
「……用がないと来てはいけないんですか?」
――――ん?
唐突に、当たり前のようにそんな事を言うので僕はしばらく理解するのに時間を要した。
確かに用がないと来てはいけないという訳ではは無いと思うが、立場的にそれはあまりよろしくないだろう。
でもそれは彼女が一番分かっているであろう事で……
という感じに僕が混乱していた所で、彼女はもう一度口を開いて言った。
「冗談ですよ?」
――これに対しても、僕はしばらく頭が追いつかなかった。
いきなりあんな事を言われた後にこう言われてしまうと、頭が一度ストップしてしまうのはしょうがないだろう。
だが回らない頭で考えて、どうやら少し揶揄われてしまったらしい事がぼんやりと分かった。
「…………」
ただ、それが何となく分かったからといって相変わらず思考が追いつかないままなので、僕は固まったままだった。
「……大丈夫ですか」
そんな僕を心配してか、メイドさんは僕にそう言ってくれた。
そうして、その時ようやくハッと意識が戻ってきた。
「大丈夫じゃ無いです」
咄嗟に口から出たのは、そんな言葉だった。
でもまあ、実際に大丈夫じゃ無い訳だし大丈夫じゃ無いのだ。――――ダメだ、まだ混乱しているみたいだ。とりあえず一旦冷静になろう。まずはそこからだ。
ということで、一度僕は深呼吸をしてみる。――すると、段々と心が落ち着いていくのを感じた。
よし、何とか冷静さは戻ったぞ。
「取り乱してしまい申し訳ありません。ちゃんと冷静に戻りました」
「それは良かったですけど……少し冷静になりすぎじゃありません?」
メイドさんがそう言った事で気づいたけど、確かにちょっと冷静になりすぎなところもあるかもしれない。
でもそれは――
「それは、こうしないとまた冷静さを欠いてしまいそうで……自己暗示をかけるみたいな意味を込めて少し過剰になっているところはあります」
「…………それは、申し訳ないです。私が少し意地悪でしたね」
こういう揶揄いなんてものは今までで全くされてこなかったから、免疫というか耐性というものが僕には皆無なのだ。
だから、申し訳ない事に僕はこんな程度で物凄く動揺してしまう。
「これに関してはただ僕に耐性が無かっただけなので気にしないでください。……それで、本当は一体どんな用でここへ来たんですか?」
そろそろ本題にいきたかったので、僕はそのように話を切り出した。
「そうですね……ただの連絡です。夕食の時間になりましたので一階の食堂へ行ってもらうか、部屋まで食事を運ばせてもらおうかなと」
「そうだったんですか!?」
てっきり変な理由でやってきたのかなと思ってしまっていたけど、ちゃんとした理由があったのか。
いや、まぁそれが普通なんだけど……僕の中でのこのメイドさんの印象は「少し変わった人」というところに位置付けられているため、ちょっと意外だったのだ。
現に、さっきだって僕を揶揄ってきたし……メイドはそんなことしないと思います!
いや、単に僕のメイド像がおかしいのかもしれないけれどさ。
――しかし、ちょうどお腹が空いてきていた所だったのでありがたい。
どうやら食堂に行くか部屋で食べるかで選べるようだけど、間違いなく部屋で食べた方がいいだろう。
食堂へ行くメリットがない。いや、寧ろデメリットしか無いからね。他の人に迷惑をかける事になるだろうし。
「面倒かもしれませんがこの部屋まで運んでくれませんか?」
「はい、それは勿論構いませんけど…………他の皆さんは食堂へ向かわれてますが宜しいのですか?」
――グサッ
メイドさんがそう言った時、善意という名の剣が僕を貫いた音がした。
「まぁ、色々あって部屋でゆっくり食べたいんですよ……」
何とか繕って、僕はそのように言った。
我ながら苦しい言い訳だと思うが、幸いメイドさんは僕が食堂に行けない本当の理由を察してはいない様だった。
――疑問に思ってはいるようだけど。
「分かりました。ではそのようにさせていただきます」
「ありがとうございます」
「では、すぐにお持ちしますね」
メイドさんはそう言うと、食事を取りに部屋を出ていった。
◇ ◇ ◇
「失礼します。お食事をお持ちしました」
部屋から出ていってから数分して、メイドさんは食事を持って戻ってきてくれた。
「ありがとうございます。そこの机の上に置いてくれますか?」
「はい、もちろんです」
メイドさんに頼んで、先程片付けてもらった机の上に置いてもらう。
ここまで色々してくれるメイドさんには感謝しかない……。
「何から何まで本当にありがとうございます!」
「いえ……メイドとして当然のことですから」
さっきからずっと「ありがとう」と言っているような気もするが、それでも足りないくらいなので問題ない。
――と、その時メイドさんが何かを考えているような素振りを見せた。
「あの、どうかしましたか?」
なんだか迷っているようにも見えるので、一応聞いてみる事にした。
すると、メイドさんは一呼吸おいて言った。
「あの……一つお願いをしても宜しいですか?」
「それはもちろん良いですよ」
断る理由なんてないので僕はその様に言った。
多分例の「何でもお願いを聞く」というやつではなく普通のお願いだとは思うけど……お願いと言われるとやっぱりどうしても気になってしまう。
「それで、どういうお願いなんですか?」
普通を装ってはいるが、内心恐る恐る聞いてみた。
「それは…………その、少し話をしてみたいなと思いまして……食べながらでいいので色々と聞かせてくれませんか?」
返ってきた言葉は意外なものだった。
話がしたい――――まさかそんな事を言われるとは思ってもいなかった。
僕よりも他のクラスメイトの方が数倍も有意義な話をしてくれそうなものだけど…………構わないだろう。
何よりメイドさんが僕にお願いをしてくれたんだ。『他の人の方が〜〜』なんて流石に言えないしね。
「はい、勿論です!でもこっちからもいくつか聞かせてください」
「ありがとうございます!では何から話しましょうか……」
こうして僕達はお互いについて色々と話す事になったのだった。
タイトルを決めるセンスをください(切実)
なお、今回のタイトルは数秒で適当に決まってしまったそう。(←もっと頑張ろう!)