9探偵大和の推理
部室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ?」
誰だ? いや、消去法でこの文芸部の顧問のちびはるちゃんか薄情な親友の大和しかいないな。
「僕だよ。大和だよ。立ち聞きしてたけど、ちょっと樹に話したいことがあってね」
立ち聞きしてたんかい。あっさり暴露すればいいと言うものじゃないぞ。
「まあ、まずは部室に早く入ってくれよ。こんなとこ、見つかるマズイだろ?」
「ああ」
そう言って入ってきたのは俺の唯一の友、大和だ。まともな友達作れないから消去法で近づいて来ただけかもしれんけど。
「昨日はまず挨拶だと思ってたんだけど、今日は僕の推理を話そうと思ってね」
「推理?」
そういえば大和はよく教室でミステリーの小説とか読んでいたな。
「あの、その前にその人は? なんかフィギュアじゃないような気がする」
「……陽葵様? この変な人は?」
「先輩の友達だよ」
俺は唯一の友を莉子ちゃんに紹介することにした。
「こっちが俺の友達で大和って言うんだ。そしてこちらが陽葵ちゃんの友達で莉子ちゃんて言うんだ」
「妹さんの友達か」
「妹?」
「り、莉子ちゃんはいいから」
陽葵ちゃんが話を誤魔化す。
それにしても、推理って? やはり俺にかけられた濡れ衣のことだろうか? それ以外にあり得ないが。
「僕な。樹がいじめられてるのもおかしいと思うんだけど、そもそも今回の事件は本物の事件が絡んでいると思うんだ」
「事件?」
事件って、一体どういうことだ? 確かに日吉さんの行動で俺は嵌められたようなことになっている。
だけど、何か誤解があるに違いないと思っていた、だけど事件って? 俺はそんな大事に巻き込まれてる?
「なあ、樹、お前、おかしいとは思わないのか?」
「おかしいって、おかしいことだらけだよ!」
思わず声に気持ちがこもってしまった。怒気を含んだ声が出てしまった。
「いや、そんな感情的になるな。冷静になれ」
「わかった。大和の考えを教えてくれ」
大和は頷くと、近くの椅子に腰を下ろすと話し始めた。
「僕は今回の一件で、一番おかしいのは学校の対応だと思う」
俺は無言で頷く、そうだ、俺は無実を訴えた。だが、学校は何も動いてくれなかった。
「まず、僕が聞いている限りだと、樹は日吉さんに暴行して警察に捕まった。だが、警察は樹を証拠不十分で無罪放免にした。もし、樹が本当に証拠はないが、限りなく怪しい存在だったら、転校を勧めるとか、事態の収拾を図るとかする筈だ」
「確かにそん通りやなあ。警察は先輩んことば無罪と判断したわけやけん、樹先輩のことも日吉先輩のことも考えて何らかな対策ばとるとが普通やて思う」
「うん、その通りだ。にも関わらず、学校は放置したままだ。樹、お前のご両親には何か言われてるのか?」
「学校での誤解は訴えたけど……別にあのことでは何も……確かに警察に事情を聞かれたけど、事情聴取されただけだし、何のことだかわからなかったし、あくまで事件への協力を頼みたいだけと言われて、別に捕まったわけじゃない。やましいことなんてしてないし、警察も協力に感謝してくれた」
「嘘! あたしが聞いてたのと話が全然違う?」
莉子ちゃんが声を張り上げる。
「俺は一体、みんなからどう思われてたんだ?」
「噂では、樹先輩が日吉さんの暴行事件の犯人として補導されたけど、証拠不十分で釈放されたってね」
「そんな! 俺は別に警察の厄介になんてなってない!」
俺は怒りが込み上げて来た。そこまで俺は信用がないのか?
確かにボッチだけど、そんな事実に反してそんな風に思われていたのか?
証拠もないのに犯人にでっち上げられて……でも、日吉さんのあの態度を見ると……皆が勘違い……するか?
「樹……お前は事件に巻き込まれてるんだよ。学校も敵と思った方がいい。補導された訳じゃないなら、無実以前に言いがかりに近いと思う。それに……今回騒ぎを大きくしたのは日吉の態度だけじゃない……」
俺は一人の男の顔が頭に浮かんだ。
「川崎か?」
「ああ、僕が見ていたかぎり、川崎が話を誘導したように思える」
俺は唖然とした。今まで満足に情報をくれる人はいなかった。
花蓮ですら教えてくれなかった。
俺が怪しまれていたことは知っていたが、警察のやっかいになった訳じゃない。
ただ話を聞かれただけだ。だけど警察に補導されてたなんて思われてたら?
「樹、僕もボッチだから情報は少ないがお前とこの事件についてはクラスのグループLI○Eに何か流されたらしい」
「お、俺はグループLI○Eになんて入ってないから……」
「僕もだ。だから詳細は不明だ。カースト上位の奴らだけが知っている」
そういうことか。だから川崎の誘導に皆簡単に流されたのか?
「あん? でも、先輩が学校ば敵に回す理由も、日吉先輩や川崎先輩ば敵に回す理由もわからないのですが?」
「それは僕にもわからないんだ。だけどこれは断言できる」
俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「事件の匂いがする。そうでなきゃ、こんなことをする理由がない。一歩間違えば、うちの学校もただでは済まない。クラスの奴らは大半が乗せられてるだけとは思うけど、川崎と日吉はおそらく共犯だ、何かの犯罪の……動機がないのにこんなことはしない筈だ」
「陽葵様、確かにこのボッチの言う通りです。日吉先輩は自ら性被害にあったとを暴露しています。樹先輩の噂が本当ならとっくに転校するか、黙って耐えるかどちらかだと思います」
「う、うちもそう思う。そげん恥ずかしかこと、みんなん前で晒すなんて考えられん」
大和の推理は多分核心をついていると思う、だけど。
「なあ。大和? 俺はこの冤罪を一体どうやって晴らせばいいんだ?」
「ぼ、僕もそこまでは……」
沈黙が流れたが、そこに莉子ちゃんが突然、へへへと笑って言った。
「それは陽葵様の侍女にしてクノイチのあたしに任せてください」
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