8陽葵ちゃんの侍女はヤンデレ (陽葵ちゃんに対して)
放課後、いつもの元書道室の部室へ向かってドアを開けると。
「せんぱ~い。部屋に入る時はノックしぇな駄目ばい。乙女がおるばい?」
「乙女って……そもそもここ、俺の部室だよ。陽葵ちゃんが不法侵入してるの!」
「そげん事言うて、陽葵があられもなかカッコしとったらどうすると?」
「なんで、陽葵ちゃんが部室であられもないカッコしているシチュがあるの?」
「あれま!? えへへ♪ こえは今度試してみる必要があるねぇ♪」
いや、男しかいない部室に忍び込んで、あられもないカッコしてちゃ駄目でしょ?
ちょっと、自分の頬が赤くなっているのを自覚する。
「あなたが海老名 樹先輩?」
元書道部の部室には陽葵ちゃんの他に見知らぬ人がいた。
知らない子だが見たことがある。下級生だけど目立つ綺麗な子だ。
女の子は心なしか険しい表情をしている。
「それで、早速ですけど……樹先輩は、陽葵様のこと、どう考えてるの?」
「どう考えてるって?」
陽葵ちゃんの友達とはいえ、いきなりそんな質問?
「あ、あわわわわ! ちょ、莉子ちゃん! いきなり何聞いとーと?」
「陽葵様は黙っていてください! 黙ってないとテストの点を旦那様に報告しますよ!」
何がなんだか訳がわからない。陽葵様? 聞かれたけど先にこの莉子ちゃんという子のことを教えて欲しい。謎だ。
「ねえ、陽葵ちゃん、この子は誰なの?」
「先輩、大丈夫ばい。莉子ちゃんな陽葵ん侍女で、害はなか……多分」
「今、多分って言ったぁ! 多分ってぇ!」
どうも陽葵ちゃんと友達みたいな……侍女? まあ、とにかく仲がいいみたいです。
「だって莉子ちゃん、最近やたらとうちと一緒にお風呂入ろうとか、添い寝しようとか」
「わ、あたしはただ、お嬢様に尽くしたいだけです! 決していやらしい気持ちなんて!」
「まあ、その発言で自分の貞操の危険を感じない女の子はいないと思いますよ、莉子さん?」
「おまえは黙っとれ!」
「は、はあ」
「はあじゃなくて、はいでしょ!」
どうも、この莉子という女の子は陽葵ちゃんの侍女でヤバい子らしい。
「まあ、そんなどうでもいいことより、あんた、陽葵様のことどう考えてるの?」
「どう、って言われても……」
「ハッキリ言うわ! あたしは、アンタが噂通り陽葵様を手籠にしようと企んでるのかって聞いてるの?」
「あ、先輩、莉子ちゃんの発言は無視してよかけん」
いいんかい!
なんか、話がクルクル回って理解が追い付かないが、どうも俺が陽葵ちゃんを乱暴しようと企んでいるとか、そういう類だろう。
「まあ、あたしも恋敵、ゴホンゴホン……ちょっとあなた相手に気が立って、改めて聞くけど、陽葵様のこと、本気?」
この女の子の言いたいことはわかる。俺たち二人の関係はかなり親密だ。
あの噂を知っていれば、当然の反応だろう。
「陽葵ちゃんは俺のことを信じてくれたんだ。誰も信じてくれないのに! そんな子に酷いことできる訳がないだろ? 陽葵ちゃんが悲しむようなこと、できないよ!」
俺は侍女の莉子ちゃんの目を見据えて、はっきりと断言する。
信じてもらえるとは思ってないが、それでも、俺は訴えたかった。
当然だ。陽葵ちゃんだけが俺を信じてくれた。
俺を……夫にするなんて恥ずかしいけど……言ってくれた。
その陽葵ちゃんに酷いことなんて、絶対にしないし、絶対にさせない。
「もっともらしいこと言って。大体、陽葵様も陽葵様で、こんな男に簡単に騙されるなんて……。もう、馬鹿! あたしというものがいながら!」
「俺のことはどう思おうと、どう言っても構わないけど、陽葵ちゃんを馬鹿だなんて言わないでくれ!!」
俺は陽葵ちゃんが馬鹿と言われた瞬間、頭に血が昇り、我を忘れた。
気が付くと、莉子ちゃんと言う、女の子の近くに詰め寄っていた、すると。
「先輩も莉子ちゃんも落ち着いて、喧嘩なんてしぇんでぇ!」
「いや、陽葵様、こいつ合格です。ていうか先輩、陽葵様のことをけなされると本気に怒るんですね? こんなに温厚な癖に?」
ふふ、と笑いながら、莉子ちゃんが笑顔を見せた。
おかげで冷静になれた。 俺、何を年下の女の子に凄んでるんだ?
流石に自分でも恥ずかしいと思ったが、どうも意外とこの陽葵ちゃんの侍女は俺に好意的に見える。
信用してくれたのか?
「……一応合格。でも、陽葵様にちょっとでも変なことしたらただじゃ済まさないから、覚悟しておいてくださいね」
陽葵ちゃんの侍女はそう宣言すると俺の耳元で。
「(ライバルって認めてあげるけど、陽葵様はあたしのモノだからね、わかった!)」
わあぁ、陽葵ちゃん、とんでもなくヤバい侍女飼ってるな。早く解雇した方がいいと思う。
「先輩、申し訳なか。莉子ちゃんな悪か子じゃないけど、私ことになると見境ないないから……」
「まあ、百合だから、仕方ないよ」
「誰が、百合だぁ! あたし、これでも彼氏いるんだからね!」
いやいや、言動から察するにそれとしか思えない。
しかし、彼氏持ちの百合って聞いたことがないな。
「ごめんね。莉子ちゃんね、きっと力になってくれるって思うけど、うちの貞操狙ってるみたいで……」
「ひ、酷い! あたし、ノーマルなのにぃ! ただ、子供の頃から、4月1日生まれで3月31日生まれのあたしより1年も年上の癖に莉子ちゃん、莉子ちゃんって子犬みたいに付きまとって、リスみたいな小動物みたいな顔とか表情とかしてぇ! ハアハアハア!!」
いや、これはあれだ。病属性のヤンデレというヤツだし、やっぱりヤバい子だった。
その時、コンコンと誰かが部室のドアをノックした。
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