5樹、陽葵ちゃんに助けられる
そうして、あくる日が来た。
いつものように……俺は足を掛けられて転んでいた。
「なぁ、樹? 俺は喉が渇いたんだけど、ジュース買ってきてくれねぇかな? 買ってくるよな? 普通? もちろんお前の金で、当然だよな!」
「なんで、俺がお前のジュースなんて買ってこなきゃいけないんだ!」
俺は腹が据えかねた。足をかけられたり、無視は日常茶飯事だ。
だけど、これはパシリというよりただのイジメだろう。
「なあ! お前、いつからそんなに偉そうになったんだぁ! 一年生の女の子と仲良くなったからか?」
「俺が誰と仲良くしようが、お前には関係ないだろ!」
「ぎゃはははっ、こいつ! 生意気にも反発してやがる! 受ける!」
こいつらぁ! そんな時。
「先輩になんてこと言うと? 恥ずかしゅうなかとですか!」
そこに現れたのは陽葵ちゃんだった。
「君、一年の樹に誘惑されている女の子か? 悪いことは言わない! こんなヤツに近づくな! 絶対乱暴されるぞ!」
「陽葵は先輩に乱暴なんてされるとは思えん!」
「お前、知らないのか? こいつ、3か月前に同級生を襲ったんだぞ?」
俺の悪い噂。既に噂は確定事項としてこいつらの中に定着している。
でも、根拠なんてほとんどない。なのに誰も信じてくれなくて。
「先輩ん無実は絶対晴らす! 陽葵が先輩ば助くる!」
陽葵ちゃんがみなの前で宣言するが。
「あ〜あ、この子可哀想に、もう樹に犯られちゃったんだな。本気で信じているぜ! 馬鹿だなぁ! やっぱりギャルはオツムのネジがゆるいらしい」
「それに股もゆるいみたいだなぁ!」
不快だ! 陽葵ちゃんのオツムがゆるいだと? 股がゆるいだと?
陽葵ちゃんはそんな子じゃない。優しくて、人を見る目があるとてもいい子だ。
それなのに!
気がつくと、俺は拳を握りしめてフルフルと震えていた。
「だめばい! 先輩! 暴力なんて振るうたら、コイツらと同じ次元ん人間になる」
「なんだよ? まるで、俺たちの方が悪いヤツみたいな言い方して。どうせ、このクズ野郎に言いようにされて、捨てられるのに、馬鹿なお前の事が心配で言ってやっているんだぜ」
悔しい。俺のことはいい。でも、陽葵ちゃんのことを馬鹿扱いするなんて!
俺とかかわったばかりに、こんな嘲りを受けるなんて。
それに対して何もできない自分が不甲斐なくて。
「不満なようだな? じゃあ、証明してやろうか? コイツがやったことを?」
「どこに証拠があると? ただの先輩へん邪推やなかと?」
俺は嫌な予感がした。俺があの事件の犯人と結論付けられた理由、それは。
「なあ、日吉? お前、樹に何されたんだ? あの日?」
突然、クラスメイトの一人が、隅の方に座っている、一人の女子に近づいて、声をかけた。
「や、止めてぇ! あのことを思い出させないでぇ!」
その子は同じクラスメイトの女子、日吉、ミドルボブの可愛い子だ。
だけど、3ヶ月前の、とあることをきっかけに、俺は彼女を乱暴したことになっている。
日吉は自分の身体を抱きしめると、震えながら話した。
「もう止めて。あのことはもう思い出したくないの!」
震える声で涙声で訴える日吉。ほとんど何の証拠もないのに、俺があの事件の犯人にされてしまったのが、彼女のこの態度だ。
「ああ! 本当に腹が立つ!」
「お前、よくあんなことして、平気で学校に来れるなぁ?」
「日吉が恥ずかしくて、訴えられないからって言って、よくそんなに平気でいれるもんだ」
「俺、お前だけは許せねぇ!」
流れはいつもの流れになってしまった。
日吉がなんでこんな演技をするのかはわからない。
でも、この演技のおかげで、俺の性犯罪がほぼ確定事項にされてしまっている。
俺は陽葵ちゃんを見た。彼女も日吉の姿を見て、心が変わるだろうか?
そうやって、何人も俺のそばから友達が消えて行った。
幼馴染の花蓮もそうだった。でも、陽葵ちゃんの口から出てきたのは。
「馬鹿やなかと? 今のに一体、どこに証拠能力があると? あんた達、きちんとした証拠も無う、先輩ば噂ん犯人に仕立て上げとったと?」
「お前、じゃ、日吉が嘘を言っているってのか?」
「日吉先輩な先輩に乱暴されたなんて一言も言うとらんなあ? それにそげんことがあったんなら、訴えるまでものう、学校になんて平気で来るー訳なかねぇ?」
陽葵ちゃんはなおも、俺を庇ってくれた。でも。
「陽葵ちゃん、もういいよ。俺は陽葵ちゃんが信じてくれればそれでいいんだ。それに、これ以上は日吉を傷つけるよ。理由は判らないけど、日吉に何かあったのは事実みたいだ」
俺は陽葵ちゃんが俺と同じように学校の嫌われ者になってしまわないか心配した。
それに、日吉が何故あんなことを言うのかはわからない。
でも、何か心の傷が残るようなことがあったのは間違いないと思う。
「はぁ、可哀想に、こんなクズをすっかり信じて、まあ、お前もクズってことだな」
『なぁ、樹? 俺は喉が渇いたんだけど、ジュース買ってきてくれねぇかな? 買ってくるよな? 普通? もちろんお前の金で、当然だよな!』
『なんで、俺がお前のジュースなんて買ってこなきゃいけないんだ!』
突然、さっきクラスメイトが俺をいじめていた言葉が陽葵ちゃんのスマホから、流れてきた。
「どっちかクズと? クズって、あんた達ん方やなかと? これ、客観的に聞いて、どう思う? クズはあんた達! 先輩ん無実は絶対に晴らす!」
陽葵ちゃんの迫力にみな、気後れしたのか、みな無言になる。
「チッ! すっかり後輩をたらしこみやがって!」
「今日から、樹への無視、マックスな」
「……クズ」
陽葵ちゃんは一言そう言うと、授業開始のチャイムが鳴ったので、自分の教室に帰って行った。
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