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36陽葵ちゃんの婚約者候補はパワハラ野郎

関内は肩を落としてフレンチを後にすると車で帰った。彼は金持ちぶりをひけらかすつもりが一介の平民であるはずの婚約者候補に付きまとう樹が何故か銀座の超一流フレンチのオーナーシェフやホールだけでなく、厨房のスタッフとまで仲が良いことに狼狽していた。高級フレンチとは思えないこの平民の樹とのやり取りに敗北感を感じ、首を垂れて家へ帰った。


そして、使用人のミィーティングルームで御曹司関内は付き従う従僕達へ冷たい視線を向ける。


「お前たち、事前にあの樹という男がフレンチの店と関わりがあるかどうか調べるべきだろう? 普通するよね?」


先程までの気取っていた空気……優雅な雰囲気……上辺だけではあるが、それすらも何処かに行ってしまって……。


「私に大恥をかかせたなぁぁ!!」


「た、大変申し訳ございませんでした!!!」


従僕たちは背筋を伸ばして45度のおじぎで謝った。だが、それだけではこの男は納得しないようだ。


「ミスター三ツ沢! お前は今すぐクビだ!!」


「ええっ!? そ、そんな!?」


いきなり解雇通告を宣言する関内。従僕長の三ツ沢はフルフルと震えている。


「お、お願いします。ク、クビだけは許して下さい。娘が生まれたばかりなんです」


「そんな事はしらないね。きみたちの仕事は遊びみたいなもんだ。これまで食わせてやったんだ。むしろ感謝しろよ。これ、常識だからね!」


「か、関内様! どうかご容赦ください!!」


従僕長三ツ沢は関内の前で泣いて懇願する。しかし関内はその元従僕長を見向きもしない。


「私に恥をかかせた罪がこれ位で済むか! 謝って済む問題ではないわ!」


従僕達には沈黙が訪れる。これまで何人の従僕長がクビを宣告された事か……いや、従僕長だけでは無い。ほんの些細な事でも気に入らないと、この男は従僕をクビにするのだ。


本来なら不名誉な他の仕事への左遷ですら、運がいい方だと思うしかない。


関内は家の執事や従僕達をまとめる責任者に最近なった。彼の父親は息子に名家の仕事の一部を渡した……つまり、彼は彼らの任命権を持ち、人事権も持っている。誰も彼に逆らう事はできないのだ。


彼は典型的なパワハラ上司であった。


関内が先程までの爽やかな風貌が嘘であったかのように嗜虐心を感じる笑みを浮かべると、


「いつものダンボールを持って来い!!」


「えっ!? この場でですか?」


従僕達は驚いた。この男はクビを宣告した従僕長に、その場でダンボールを渡し、私物だけをダンボールに入れさせて、支給品は回収すると言うのか?


ダンボールでだ。本人の屈辱は計り知れない。この男に情けというものは持ち合わせていなかった。


「うっぐ! えっぐ!!」


従僕長は泣きながら、私物をダンボールに入れて、支給品を返す。


この従僕長は代々関内家に使え、子供の頃から関内家の執事長になる事に憧れ、研鑽を重ねて、従僕となり、努力が実り、ついに従僕長にまで昇りつめた。そして、最近愛する恋人と結婚し、娘を授かり、幸せの頂点にいた。この男が関内家の使用人の人事権を持つまでは……。


「僕の麾下にいる以上、能無しは排除する! 心がけよ!!」


「「「はぁっ! 関内様!!」」」


主人たる関内に逆らう事は許されない。彼らにできる事は運よく他の部署に左遷されるか、何事もなく定期人事での異動を待つだけである。


「お前ら、気合が足らん! 今すぐ、この僕の部屋の掃除だ!!」


「し、しかし、もうじき定時ですが? 最近残業規制がかかっておりますが?」


「何だと? 貴様、自身の未熟を私が温情で矯正してやろうという慈善行為にも関わらず、残業手当なぞもらおうと画策したか! ええい! 貴様もクビだ! 今すぐダンボール持って来い!」


不用意な発言……いや、正当な意見ではあったが、哀れな従僕がまた一人路頭に迷う。


そして、従僕達は無給で、残業を強いられるのであった。

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