33陽葵ちゃんとキスで飲み物を半分っ子
海と言えば海の家。俺達はお昼ご飯を食べるために焼きそばとお好み焼きにかき氷という海の家の3種の神器を買ってテントの中でまさに食事を始めようとしていた。
「せ、先輩。もう、どうせエッチな先輩んことやけん期待しとーやろ?」
「え、何を? お、俺、わかんないよ?」
なんで俺はエッチなこと前提で話されてるの?
水着の女の子とテントという個室空間にいるから、エッチなことなんて言われると動揺する。
「そ、そげんことなかねぇ? せ、先輩は、ひ、陽葵から『あーん』して欲しかやなあ?」
「いやいや、俺は別に……」
ここは駆け引きだ。だって、絶対陽葵ちゃんの方が『あーん』したいんだもん。
さっきからこっちをチラチラと伺って、ソワソワしてたのはそのためか?
それってエッチなことなのか? 陽葵ちゃんにとっては?
「そ、そげん〜! 彼女ん『あーん』期待しとらんの?」
やっぱり。焦らしたら陽葵ちゃんが可愛くなる。
「それはね……期待してるに決まってるよ!」
「良かった! じゃ、今ね!」
陽葵ちゃんは焼きたての焼きそばを箸で掬い取ると。
「はい、『あーん』」
そう言って俺に箸を差し出して来た。
「い、いただきます!」
俺はもちろんそれをじっくり味わって食べる。
あー彼女の『あーん』してもらって食べた焼きそば最高!
今まで食べた中で一番美味い食い物だ!
「ね、ね、先輩?」
「な、何? 陽葵ちゃん? 焼きそばはもちろん美味しかったよ!」
「そ、そうじゃなくて……」
何故か恥じらう陽葵ちゃん。
「どうしたの?」
料理の感想を聞いて来たと思ったけど、違うようだ。
でも、こんなに恥じらって、可愛い♪
「わ、うちにも『あーん』してくれん♪」
「おおッ!」
なんと、逆『あーん』! これは想定していなかった。
でもめちゃめちゃ嬉しい! 陽葵ちゃんはなんで俺が喜ぶことこんなにしてくれるんだろう。
俺は早速お好み焼きを見て、陽葵ちゃんの小さな口でも食べられるサイズに割った。
「じゃ、陽葵ちゃん、『あーん』♪」
思わず俺の語尾が陽気にあがる。
「う、んん」
陽葵ちゃんに箸を差し出すと、陽葵は恥ずかしそうに……パクッとお好み焼きを食べた。
「お、美味しい!」
「そう? でも海の家の普通のお好み焼きだよ」
「ううん、先輩に食べさせてもろうたけん、うまかばい♪」
「俺も美味しかったかも」
「ふふっ、もう、そげんこと言うてほんなこつ駄目な先輩やなあぇ♪ エッチ♪」
パシパシと俺をはたく陽葵ちゃん、だけど頬がすごく赤くなっていて、めちゃめちゃ照れてるんだと思う。だけど、『あ〜ん』てエッチな行為?
「も、もう一口……よかか?」
「もちろんだよ、陽葵ちゃん!」
俺はもう一口陽葵ちゃんに箸を差し出す。
「はむ。もぐもぐ。やっぱり美味しー」
頬に手をやり、幸せそうな顔をする。
ああ、天使がここにいる。俺も幸せな気持ちになって来た。
「じゃ、先輩、今度はね♡」
「何? お茶を持ってきたの?」
今度わね、と言うと水筒を取り出して見せる陽葵ちゃん。
「でも、コップがないよ」
「あ! 忘れとった、てへ♪」
「いいよ。直接口をつけて飲も……か、関節キスだね!」
思わずテンションが上がる。
「……ううん、ダメですよ先輩、そげなと」
え? 俺と関節キス嫌なの? 今更?
「__こうするばい♪」
そう言ってスポーツタイプの水筒に口をつける陽葵ちゃん。
どういうこと?
そして小さな口で少し水を含んだ陽葵ちゃんはすっと上を向くと……目を閉じてキス待ちに__。
陽葵ちゃん! 天才?
「……陽葵ちゃん、俺、そういうとこ好き♡」
そう言って、そっと陽葵ちゃんに口ずけする。
「ん、んん」
ゴクリと喉に少し緩くなったお茶が流れ込んで来る。
「__へへ♪」
「もう、陽葵ちゃん! 天才すぎ!」
「こ、今度はせ、先輩の番ばい」
そう言って頬を赤くする陽葵ちゃん。
「うん、わかった」
そう言って、水筒を手に取ると__。
少し口にお茶を含む。陽葵ちゃんは小柄だからそんなに一度に飲めない筈。 加減して口に含む。
そして前を見ると……。
「―――――~~~~ッ!!!!」
陽葵ちゃんは俺の準備ができるや否や口ずけして来た。
「ん、んん」
陽葵ちゃんの喉にお茶が流れ込んで行く。
「へへっへへへッ♪」
「もう、陽葵ちゃん! 大胆過ぎ!」
「あれ? 先輩? 口からお茶が少し溢れとーよ♪ うちが拭いちゃる」
そう言って。
「せ、先輩、ん……♪ んん、ぢゅ……ん、んん、れろ…♪」
俺の唇と口元を唇で拭ってくれる。
陽葵ちゃん! 大胆過ぎ! あと、天才過ぎ!
俺は『あ〜ん』がとんでもなくエッチなものであることを初めて知った。
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