25酷インざまぁ回
「お、お父さん、わ、私騙されてたの、本当なの!」
「わかってるよ。凛は騙されただけなんだ。早くこのことは忘れるんだ」
「そうよ。凛は騙されただけよ。気を強く持って生きるのよ」
「……お父さん、お母さん」
いつも優しいお父さんとお母さん、だけど何かが引っかかる。
何かが以前と違うような気がした。
普段は優しいお父さんとお母さん……でも二人共教育には厳しい。
駄目なことは駄目と厳しく躾ける二人だった。
だから優しいだけの今の二人がどこか怖い……。
突然、電話の音が鳴る。
「母さん、どうせまたイタズラ電話だ……電源を抜いてしまうよ」
昨日からイタズラ電話が後をたたない。
ガチャン
今度は窓に向かって石か何かが放り込まれた。
昨日からずっとこんな感じだ。
『あのネットの情報はフェイクだった筈……なのに何で?』
だが気になることがあった。
自分のスマホのLI○Eのグループトークが昨日から一度も更新されない。
毎日何度も更新があったのに。
『私はハブられてるんだわ』
「人をハブるように仕向けて自分がハブられてたんじゃ世話は無いわね」
思わず自嘲気味に呟いた。
大体察しがついた。昨日まで海老名 樹に向けられていた悪意が今度は自分に向いていると。
おそらく新しいLI○Eグループができていて私はそこに参加できない。
そりゃそうだ。攻撃の対象は私なんだから……。
LI○Eの友達は全員ブロックされているようだ。
唯一のが綱島と川崎というのが笑えさえする。
こんな奴らもうどうでもいい。私をこんな目に合わせて。
少し考えると、ちょっと前までの海老名 樹に関する攻撃が自身に向くかとゾッとした。
更にまずいのが、自分のやったことが世間様に拡散したんだろうと……海老名 樹は信じられないことにあの有名な小説家、『しいくがかり』だった。
そして自分がしたことを……同級生が売ったんだろう。簡単に人を信じて、簡単に人を陥れて、それでいて自分達は善人の側にいるつもりなんだろう。
全く度し難い連中だ。その度し難い連中を使って海老名 樹を嵌めていたのに、今度は自分にそれが特大のブーメランの様に帰って来ていた。
ガチャン
また家に石を投げ込まれる。
今をときめく小説家しいくがかり先生を嵌めた女。その住む場所も顔も名前も全部世間様に知られてしまっている。
綱島は逮捕されたらしい。私も事情聴取を受けた。
幸い、私はイジメの片棒を担いだだけだし、綱島の美人局の片棒を担いだが、綱島に騙された被害者として扱われた。逮捕はされなかった……それだけが唯一の救い。
「もう、嫌! こんなところ耐えられない!」
突然叫ぶ母親。
「母さん、心配するな、来週には新しい家へ引っ越す、だから」
「お父さん、引っ越しするの?」
私は思わず喜色を見せて聞いた。こんなところに居たら精神がおかしくなる。
私は新天地に行けるかと思うと希望が持てた。
流石に引っ越した先までは追っては来ないだろう。
そもそもネットの住民など熱しやすく冷めやすい。ほんの数ヶ月も経てば皆忘れる。
だから引っ越しすれば全てが解決する。
「凛、私は辞令を受け取って大阪に転勤することになった。だから母さんと大阪に赴任する」
「お、大阪なのね? わ、私、大阪ではちゃんとするから」
「……凛……大阪へは母さんだけしか連れて行けない」
「な、何で? 何で私は駄目なの?」
お父さんから告げられた言葉に思わず声を荒げる。
「私達も悩んだ末のことなんだ」
「ふざけんなぁ! ふざけんな、ふざけんなぁ!」
何で、何で私だけ!
「お前はこの家で暮らすんだ。月7万円振り込む、だから」
「ふざけんななぁ!!! 何で私だけぇ……「五月蝿い!」」
ビクっと思わず震える。お母さんがこんな荒げた声を出したことなんてない。
「全部お前のせいなんだから! お父さんが転勤になるのも、将来を閉ざされたのもみんなお前のせいだから! お父さんの会社は出版社なのよ! お前のおかげでお父さんは!」
「……止めなさい。母さん」
そんな、違う、私のせいじゃない。……アイツが有名小説家だから?
嘘でしょ? そんなの私だって知らなかったし、悪いのは私じゃない、綱島だ!
「お前さえいなかったらぁ!」
「母さん、止めなさい!」
「止めないわよ。コイツのせいで、コイツのせいでぇ!」
お父さんが止めてくれたが、お母さんは私に……暴力を振るおうと?
……嘘……よね?
いつも優しいお母さんが私を殴ろうとした?
「凛、お母さんは精神的に参ってるんだ。だから大阪に連れて行く。しばらくお前と一緒に暮らせる状態じゃないんだ」
「……そ、そんな」
そしてお母さんとお父さんは引っ越して行った。
私は誰もいない家で一人ひっそりと息を潜めている。
誰かに見つからないように……。
ほとぼりが覚めるまで……。
学校? そんなの行ける訳ないじゃない?
私は気がつくと一人で笑い続けていた……誰もいない家の中で。
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