22幼馴染の女の子……花蓮
「じゃあ、辻堂さんは莉子ちゃんに言われて?」
「はい、莉子さん、というより厚木家からうちの社長に連絡が入って私が動くことになりました。先生の正体をバラした方が今後のため。彼我の差を知ればイジメはなくなるという意見がありまして、社長も同意したのです。うちの看板小説家のメンタルがそんなことで削られるのは弊社としても看過できなかったのです」
「そうだったんですか、唐突に小説家なのを暴露されて焦りましたよ。ましてやアニメ化だなんて言われたから驚いて、あは」
「いえ、アニメ化の話は本当ですよ。明日の放課後に我が社のハイヤーを学校に回します」
「え? いえ、電車で……いいです……」
「そう言う訳には行きません。先生は先生一人の身体ではないのですから」
「は、はい」
編集担当の辻堂さんはそう言うと元書道部の部室を去って行った。
すると莉子ちゃんが真剣な顔で俺にこう言った。
「海老名先輩……それと……幼馴染の花蓮さん……彼女のことはちゃんと整理しておいてくださいよ。陽葵様が悲しむような真似をしたら、あたし、決して許しませんよ」
「俺が花蓮を? いやそれはあり得ないぞ?」
「ううん。樹先輩は花蓮さんば許してしまいそうで、陽葵は怖いです!」
「ひ、陽葵ちゃん?」
「海老名先輩……ううん、しいくがかり先生の書いている恋愛モノやファンタジーの世界みたいにハーレムなんて状態は現実の世界では許されないですよ。そういうことするヤツは綱島みたいな奴だけ!」
莉子ちゃんに釘を刺されるがまさか俺が今更花蓮と……そんな訳がない……。
そう思ったのは俺の自分の優柔不断さと中途半端な優しさを理解していなかったからだった。
「一応莉子のテストは合格です。大切なあたしの陽葵様を預けるんですから、肝心な時に半端なことしかできないような男じゃ不合格でしたよ」
「テスト?」
「昨日の一件ですよ。陽葵様を任せできる人間かどうかテストさせてもらいました」
「莉子ちゃん? 昨日ん急なお父さんから急用が入ったって?」
「半分本当ですが、半分嘘です。今日の仕返しのためにこの学校周りのネットのハッキングのテストがあったのは事実ですが、陽葵様のスマホで24時間監視してるのでいざとなったら助けに駆けつけることは可能でした。でも……陽葵様が選んだ男があたしなしでちゃんと陽葵様を助けることができるかどうか……確かめました」
今、陽葵ちゃんのスマホで24時間監視とか凄いこと言ったような気がするけど。
「ですから、海老名先輩も高校生に相応しいお付き合いに止めてくれませんと……私のクナイで止め刺しに行きますからね?」
「も、もちろん、わかってるよ。俺だって陽葵ちゃんのこと大事にしたい」
「先輩! 嬉しか!」
言ってることはめちゃくちゃだけど、莉子ちゃんの顔は真剣そのものだった。
先日陽葵ちゃんとキスしそうになったことを思い出して焦る。
あれ、盗聴されてたの?
そう言えば莉子ちゃんからのメッセージ、友達登録した覚えもID教えた覚えもなかった。
それに大和は莉子ちゃんからメッセージをもらって、ちびはるちゃんに事情を話して体育用具室の鍵を持って来てくれたけど、当然あいつも莉子ちゃんとアドレスを交換する仲でもない。
「つくづく、幼馴染の花蓮さんとの件、お願いしますよ。彼女が海老名先輩を裏切ったのは綱島の策略です。先輩をより孤立させるため、そして花蓮さんを日吉と同じように自分の手ごまにしようと企んでたんです。彼女も被害者だとも言えます。でも、それでも裏切ったことには違いないし、海老名先輩は今、陽葵様を好きなんですよね? だから、花蓮さんとはすっぱり」
「せ、先輩、陽葵は先輩ば信じとー」
「安心して陽葵ちゃん。俺は陽葵ちゃんしか目に入ってないよ」
「は、はい」
陽葵ちゃんは肯定してくれたけど、何処か不安げだった。
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