表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見人の夢は希望か絶望か  作者: 白澤さひろ
5/5

identity

生まれた時から自我があった

ものごころついたとか、そういうことではなく

自分が在った時から変わらぬ自我と、この世界のあらゆる知識を持たされていた

それでも、知っているだけで使えないと意味がないから

この存在を使う術を知るために生活し、同世代の集団に溶け込んでいった

僕はいつの間にか養子に迎えられ、大切で温かさを感じる生活だった

自我の確立や、万能な知識の謎を忘れさせてしまいそうになるくらい

自分は何なのかは、いつの間にか忘れてしまってもいいと

何だって良いと思う

偽りだったとしても、温かさを感じていればこのままで良いじゃないか

幸せな時間なら、いつまでも感じていたいだろう

僕だって、誰かに作られたとしても人であるのだから

悪魔の血が混じった、何者か

僕以外にも、いくらでも作られただろう

それでも僕だけは、残ってしまった

どこかの物語だと、水銀は不老不死の妙薬だったらしい

みんな、衰弱していなくなって、それでも僕だけは何も変わらなくて

僕自身のことを決めるのは僕だけであってほしい

悪魔の血からなんて、何も得られないよ

特別な能力が必要と感じているのは、悪魔の魅了に恐れた人だけだろう

僕はそんな想いはなかったよ

魅了され、ただそれだけの純粋な想いだった

危険だと感じた大衆に悪魔だと認知されただけの

ただの少女だった


悪魔がただ愛されることに飢えただけの少女だと気づいたのは、この世界で僕だけだったのだろうか

劇場で演技をする悪魔は、その名称とは全く逆の、儚さを一身に浴びた演技をして

生きてほしい

ただ、少しだけ、目が離せない存在というだけだろう

そんな愛おしい存在を

ぼくは殺さなければならなかった

狂気に満ちた、その魅了は

この街にとっては、もはや毒になっていたから

あなたを殺すために、あなたに対抗するために、僕たちは君の血を体内に含むようにして

魅了に対抗するようにした

ただね、対抗できる能力を持てたのは僕だけだったみたいで

それをもって

僕は悪魔を殺した

悪魔も僕を探していたから、都合がよかった

「私の探していた視線は君だったのかな。君から、とてつもなく気味の悪い重圧を感じて、認めたくないから近づいたのに」

「あなたから見られる視線はなに?私がいつも感じてた視線。その正体が知りたかった」

「ううん、また会いましょうね。会えるよね、きっと。」

立て続けに、水銀の少女は責め立てる

まだ、生きたかったのか

それとも、何かを知りたかったのか

僕は胸にナイフを突き刺して

少女は血にあふれていて

「ね、多分だけど私は最後だから、一度だけ口づけしてくれない。いい?」

そういったあとで小さな声で、ごめんね、なんて

とてつもない、鉄の風味とともに、甘美な悪魔の口づけをした

僕も魅了されたのか、それとも心からそうしたいと想ってしまったのか

狂信な魅了に落ちぶれる街を救ったことはどうでもよくて

自分を表現するなら魔人だろう

夕暮れの寒空を仰いで、僕は微笑んだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ