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意識覚醒、クラゲになっていました。  作者: 佐藤莉
〜第1章〜溟海帝国
3/29

〜3〜自分確認しました。

 意識が覚醒してから一体どれだけの時間が経っただろうか。

時間を確認できるものなんて便利なものは無いし、せめて昼か夜かぐらいは知りたかったけれど、微弱な光しか判断できない私には到底無理な話だ。

さらに言ってしまえば、どうやら今の私は睡眠を必要としないようで、律儀に守っていたかつての生活リズムは党に狂っている。

なので私は眠ることも無くさまよい続けている。


 やる事、と言うよりは出来ることなんてたまに見かけることの出来る、緑や黄色の光の玉のようなものを見つめるか、自分のステータスを眺めるくらいだ。

増え続けているMPは止まることを知らず、およそ30秒から50秒に1つの速さでゆっくりと増え続けている。

初めはこれを時計の代わりにしようと思ったけれど、毎回増える量がバラバラなので時計代わりにするのは諦めた。

どうして増え続けるのかを知りたかったのだが、ステータスには何も書かれていなかった。


 ステータスには私の種族名、HPとMP、信仰度、耐性、発動中スキル、保有スキル、などが載っており、スキルに関しては説明が欲しいと思えば説明を見ることが出来るが、とても簡易的で必要最低限のことしか分からない。

少しでも自分の事を知れるのはいいが、情報が少なくてなんとももどかしい。



 さて、私は発動中のスキルや保有スキルについて知っておかなければならない。

例え持っていてもその中身が理解できなかったら意味が無い。

十中八九、進化というものをした時に手に入れたであろうスキル、それら全てが発動中のスキル欄にあり、現在進行形で発動している。

どうやら今発動しているスキルは常時発動スキルというものらしく、常時発動スキルはMPを使用しないスキルのようだ。


 私が持っているスキルは全部で3つ。

1つが先程手に入れた『自己理解』で、もう2つはなんともまぁクラゲらしいスキルだった。

『触手麻痺(弱)』と『触手毒(弱)』というスキルで、名前の通りその効果は私の触手(仮)ではなく本当に触手だった触手に、麻痺や毒の効果を乗せることが出来る。

進化した時から、いや、もしかしたら進化する前から使っていたかもしれない。

私は今までの一向に近づいてこない光を生物と仮定し、近づいてこないのは麻痺と毒の気配を察知したからと判断した。

ちなみに、触手の数は3本だった。

少ないね……。


 この麻痺や毒がどれだけ他の生物に、どんな風に効くのか確認したい気持ちはあるが、このスキルは語尾に(弱)とあるし、相手を殺すには至らないとは思う。

だとしたら、私の仮説はどうなるのだろうか。

泳ぐ速度がカタツムリよりも遅い私には、麻痺や毒の効果を確認する術はない。

相手が無知すぎて何も分からず近寄ってくるか、毒や麻痺に耐性を持っていて近付いても大丈夫な生物を待つしかない。この常時発動スキルを止める方法が分からないから。

……あぁ、早く、早く毒と麻痺を使いたい、使って倒したいな。


 …………あれ、どうして、私は倒したいなんてことを考えたのだろうか。

さっきまで私はスキルの確認していていたはずで、そのスキルの効果を知って、それを確認したいと思って、それで……。


 待って、自分の考えが分からなくなった。

私は、わたしはこんなことを考えるような人間だっただろうか。

ぁ……人間、人、ひと……あぁ、そうか、違うんだ。

わたしは、わたしもう人じゃない。

人間じゃないクラゲの”何か”だ。

だからか、だからなのかな。

私が、こんな事を考えるのは。

ここに来ると同時に、あの進化と同時に、人間としての本能を全て失って、クラゲの”何か”としての、この『シュヴァハ・クヴァ』という種族としての新しい自分の本能が作られたのだろうか……。

スキルを早く試したい、倒したいと、心から思っている。思ってしまっている。



 ここに来たせいで、私はもう以前の私ではなくなってしまったのだろう。

人間とは程遠い姿形になり、人間の思考をゆっくりと失っていく。

どんどん、知らぬところで人間じゃなくなっていく。

クラゲの”何か”だ、多分だけど、クラゲの魔物だと思う。

『シュヴァハ・クヴァレ』という種族で、多分魔物で。

それに、今の私は、名無し、だから。

……人間の”紀藤澪月”では無くなった。

お母さんからの大切な贈り物は、もう無い。

人間だった私なら受け入れるとは決して思わないのに、今の私は簡単に受け入れている。

これも、ここに来たせいなのか。


 …………もう、こんなにモヤモヤするくらいなら、全部全部割り切ってしまおう。

人間だった私を忘れるという訳ではなく、どうやってここに来たのかを分からないのを、死んだからここに来たと自己決定して、前世の記憶を持ったまま生まれ変わったということにしよう。

じゃないと、ずっとモヤモヤが続いて、頭の中がぐるぐるになって、何かあった時に冷静な判断が出来ないから。



 ……今まで、今まで女手一つで育ててくれてありがとう、お母さん。

きっと、たくさん苦労や迷惑をかけて、お母さんの事たくさん困らせたと思う。

最後に交わした言葉が、行ってらっしゃいと行ってきますだなんて。

ただいまを言いたかったな、おかえりって言って欲しかった。

こんな親不孝者の子供でごめんなさい。

大好きだよ、ずっとずっと、これから何があっても、大好きだよ、お母さん。

ほんとうに、ありがとう。








 …………っあ〜、割り切ったらなんだか色々スッキリした気がする。

胸はなんだかズキズキと痛むけど。

というか、胸があるかどうかすら分からないんだけどね。


 さて、これからどうすればいのだろうか。

このまま何もせずに漂っている訳にもいかないから、ここが水の中だと断言できるようにするために上を目指そう。

ひたすら上に向かって行けば必ず水面に辿り着けるはずだ。

もし、ここが水しかない世界だったりして地上や空が存在しなかったら、そもそも水の中では無いのだとしたら、これからの行動はとんだ骨折り損になってしまうが気にしないでおこう。

こういうのは気にしてしまったら負けなのだ。



 ……って、あれ?

もしかしてもなく、さっきから遠くで見えていた2つの光の玉、こっちに近寄ってきている気がするのだが、気のせいではないよね。

なんだか物凄い勢いで私との距離を詰めていて、さっきからあるのか分からない肌がピリピリと痺れるような痛みのようなものを感じている。

もしかして、これが殺気というやつなのでは……。

だとしたら、私はあの緑の光の玉の持ち主に殺されるということ?


 っいやだ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、そんなの絶対に嫌!!


 どうやって死んだのかも分からずに、なんでここにいるかも分からずに、ここがどんなところかも分からずに、なにも、何も分からずに死ぬなんて絶対にお断りだ!!

あぁ、でも、もうすぐそこまで迫ってきている。

急げ急げ急げ!!

少しでも動いて、あの光を避けなければ。


 横に逸れようとしたら、衝撃波のようなものが私に直撃して、激しい振動で細かく上下左右に揺れる。

地震とは全然違い、空気が音波で揺れるように、もし、今の私に聴力があったなら鼓膜が破れていたのではと思うほどの揺れ。

それくらいの激しい揺れが襲って、その瞬間に何か得体の知れない巨大なものが私の真下を通った気配がした。


 すると、通り過ぎた緑の光の玉は様々な動きを見して、まるでもがき苦しむように激しく動き回り、痙攣しながらゆっくりと動かなくなっていき、光を失った。

……これはもしかして、毒か麻痺がこの緑の光の玉の持ち主、生物に効いたのだろうか。

…………だとしたら、私は、私は殺されずに済んだのか。

助かった、そう思うと、安心したら体から力が抜ける。




 《”世界より伝達”》

 《一定の条件を満たしました》

 《常時発動スキル『触手毒(弱)』を『触手毒(中)』に進化します》

 《並行して毒耐性(弱)を毒耐性(中)に進化します》




 っ!?!?!?

安心しきっていた時にいきなり声が聞こえるというのは、心臓に悪いからやめて欲しい。

いや、今の私に心臓があるかどうかすら怪しいのだが。

って、今の伝達ってスキルが進化したって言ったのだろうか。

ならば緑の光の生物を倒したおかげで、毒の威力と耐性が強くなったということでいいのだろうね。

そうか、あの生物は毒で倒せるのか……。


 激しい振動で体が揺れた時とその前に感じた殺気。

喉元に刃物が当てられたような、身も心も凍りつくような突き刺す感じ、一瞬の隙すらも許されなかったあれは、まさしく弱肉強食と言ったところか。

ほんの少しでも判断を間違えた先に待ってるいるのは、己の死のみ。

それが、これから続く可能性が高い。


 あぁ、強くならないと。

でないと、すぐに死んでしまう。

そんなのは絶対に嫌だ。強くなろう、強く、強く、絶対に死なない、殺されない強さを手に入れよう。

そうしたら、あんな殺気に恐れることなんてなくなるし、安心してやりたいことが出来るはずだ。


 ……そういえば、なんでいきなりあの緑の光の生物は私に近付いてきたのだろうか。

今までは私を確認した途端にどこかに逃げるように消えていったのに、それがなぜ今になって襲ってきたのだろう……。

なんだか、嫌な予感がするな。


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