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意識覚醒、クラゲになっていました。  作者: 佐藤莉
〜第1章〜溟海帝国
25/29

〜25〜精霊召喚しました。

「ぼくをよんだのはあなた?」


「私です」



 現れた”闇の最下位精霊”はニコニコと愛らしい笑みを浮かべている。

舌足らずな言葉を発しながら私の周りをくるくると飛ぶ。

間違えた、これは泳ぐだ。

くるくると泳いでいる。

私の髪に触れたり、服の飾りを揺らしたり、見るもの全てに興味を持っているように見える。


 両手にすっぽりと収まるサイズの小さな”闇の最下位精霊”。

褐色の肌にはあちこちに黒のひび割れたような痣がある。

それだけではなく、手や足が肘と膝の先から黒く染って、先に行くにつれてボロボロと崩れて黒い糸で無理やり繋げている。

背中には捧げ物として置いた花の花弁が二対、羽のように手足と同じように黒い糸で背中に縫い付けてある。

泳いでいる様子から痛みを感じている様子は無いが、見ていて痛々しい。



「ぼくがよばれたのうまれてはじめて!

ぼくのはじめてをうばったあなた、おなまえをおしえて!」



 いっ言い方があらぬ誤解を招く!!!

なんだ、初めてを奪ったあなたって!?

もしフィエルやオルカリンドが聞いて、私を変な目で見てきたらどうしてくれるんだ。

いや、二人なら誤解をとけば何とかなるはず。

けど、知らない人が聞いたら大問題な発言だね。

…………はぁ。



「ねーぇー、はやくあなたのおなまえおしえてよ!」


「あ、ごめんなさい。私の名前はミツキ。

ミツキ・ラピスリズラ」


「ミツキ・ラピスリズラ!!

いーおなまえだねぇー。

ん!?

……んんー?

ラピスリズラ……ラピスリ……あっ!

もしかしてここってめーかいてーこく?」


「知っているのか?」


「うん!

ぼくのおともだちがとぉーってもむかしによばれてた!」



 まさか、目の前の精霊が溟海帝国について知っているとは思わなかった。

にしても、とぉーっても昔……か。

溟海帝国がいつ滅んだのかは知らないけれど、何百年も自分で自分を封印していたフィエルが封印する前。

それはきっと私が想像もつかないほど昔なんだろうね。

一体いつの出来事になるのだろうか。



「あれれ?

ミツキ、どーしたの?」


「いや、なんでもない。

ところで、あなたの名前を教えて欲しい」


「ぼくのおなまえ?

ぼくにおなまえはないよ!」


「無い?」


「うん!

あっそーだ!!

ミツキがぼくにおなまえをちょーだい!

つよそーなおなまえがいー!」


「待て」


「?、どーしたのー?」



 いきなり話の展開が大きく変わった。

いや、名前が知りたいという根本は変わっていないのだけど……これは。



「私が名前をつけるのか?」


「うん!

なんで?」


「なんでって……それは、」


「ミツキ、なんかむずかしーことかんがえてる!

そーゆーのぼくわからないけど、かんたんでいーと思う!」


「簡単?」


「うん!

ミツキはぼくのおなまえをしりたい。

ぼくはミツキからおなまえをもらいたい!

ミツキがぼくにおなまえをくれたら、ぼくのおなまえをミツキはわかる!

これでーばんじかいけつー!!」


「そ、そうなのか?」


「うん!

だからちょーだい!」


「……」



 キラキラと瞳を輝かせてこちらを見つめてくる。

今まで、おそらく何百年以上も名前が無かったこの子のに、私が簡単に名前を上げてもいいものなのか。

このまま何も考えずに承諾してしまったら、今までの流される私と変わらない。

しっかりと考えて、自分でどうするかを決めなくては。



「一つ、聞きたいことがある」


「なーにー?」


「あなたに名前をつけると、何が起こるの?」


「ぼくに?

うーーーんとねー、けーやくできる!」


「契約?」


「うん!

それでねー、ミツキがまほーがつかえるよーになる!」


「!」



 もしかして、精霊との契約は名付けが必要なのか?

しかし、本にはそんな記述はどこにも……いや、あった。

最下位の精霊の多くは名前を持っておらず、召喚出来たら簡単に契約出来ると。

……確かに、名付けだけで契約出来たら簡単だと思うけど。

それは最悪の場合、精霊の意思を無視したりしてないだろうか。

魔法が使えるようにはなりたいけど、無理やりは嫌だ。

今の状況は決して無理やりには見えないのだとしても、ちゃんとこの子の意志を確認しなければ。



「本当に、私が名前をつけてもいいの?」


「え?

なんでだめなの?」


「…………」



 確認するまでも無かった。

しかも、私がそれを聞いたことによって、名付けしてくれるのかと期待が高まった。

どうしようか。

……いや、そもそも契約して魔法が使えるようになりたいから呼んだのだから、名付けは相手が嫌がってなければ名付けは義務なのでは?


 ……義務というのはだめだね。

私は、この子に名付けしたいのか。

そう考えると、つけたいという思いが強い。

だって、この子は少し話しただけだけど純粋でいい子だって分かったから。

どこかの顔面兵器とはまるで違う。

次に、断った時のことを想像すると、容易に悲しむ姿が頭をよぎった。

想像しただけなのに、何故か罪悪感で胸がいっぱいになる。


 よし、決めた。

いや、もう既に私の決心はついていた。



「分かった。

名前を考えるから、少し待って欲しい」


「ほんとーに!?

ぼく、すーごくうれしー!!

わーーーーーい!!」



 いや、本当にどこかのどこかの強引で顔面兵器の執事とは大違いだ。

純粋な喜び、あっちも確かに純粋な喜びだったけど、何故だろうか。

こちらの反応の方が嬉しい。


 さて、名前をつけることを承諾したからには、要望通り強そうな名前を考えなくては。

強そうな名前……強そう、か。

この子にとっての強そうとはなんなのだろうか。

名前の意味が、発音か、雰囲気か。

全体的にこの子は黒くて、何よりも闇の精霊だから、それに関する単語をひとつは入れたい。

闇に関する言葉、闇、暗、黒、影、夜、幽、いや沢山あるね。

どれがいいだろうか。


 チラリと目の前でソワソワしている”闇の最下位精霊”を見る。

こちらを見つめる瞳には光を一切通さない闇が詰まっている。

まるで、黒曜石が埋め込まれているような。

ぁ………………それだ、黒曜石。

黒曜石を名前の由来にしよう。



「コクヨ」


「こくよ?」


「あぁ、コクヨ。

あなたの名前だ」


「コクヨ……コクヨ……ぼくのおなまえはコクヨ。

かっこいー!!

エヘッ、エヘヘ。

ぼくのおなまえはコクヨ!!」



 どうやらこの子にとってちゃんと強そうな名前だったようだ。

嬉しそうに私の周りをぐるぐる泳ぎ回る姿に見ているこっちまで嬉しくなってくる。




 《”世界より伝達”》

 《精霊への名付けを確認。世界の条件を満たしました》

 《闇の最下位精霊との契約が成立します》

 《闇の最下位精霊との契約を確認しました》

 《『闇属性魔法(微弱)』を取得しました》




 無事に契約も出来て、魔法も取得することが出来たようだ。

あの子は、コクヨはそれほどまでに名前が嬉しかったのか、ずっと、本当にずっと先程から私の周りをグルグルと泳ぎ回っている。

目が回らないか、心配になるのだが。



「エッヘヘ、エヘヘヘー、コクヨかー。

コクヨ、ぼくの、ぼくだけのおなまえ!!」


「そんなに嬉しいのか?」


「うん!」


「そうか」



 一度契約を交わした精霊は基本的に契約者の近くにいる。

なので私はコクヨを連れて書庫に戻ってきた。

精霊を召喚するために持ってきた本は召喚方法しか載っていなかったため、今度は魔法。

正確には『闇属性魔法』についての説明がある本を探すためだ。

コクヨに『闇属性魔法』について聞いたのだが、”最下位精霊”故に知っている情報は少ないのだという。


 なんでも精霊は上下関係に厳しく、どれだけ長く生きていようが下位である限り下に見られ続ける。

それは序列によって使えたり、契約した時に契約者が取得できる魔法のスキルの技の種類や強さが変わってくるからなのだそうだ。

そして、精霊が上に上がるには得られる情報を応用して新しい魔法を身につけなければならないのだという。

コクヨは自分が弱くてごめんねと謝ってきたが、私は特に気にしていない。



「私も魔法について何も知らないから、お揃いだね」


「!、……おそろい。エヘヘ、ありがとー。

でもね、ぼくはあたまがわるいから、どーしてもおーよーってゆーのがわからないの」



 おーよー、応用のことか。



「コクヨが使える魔法はなんだ?」


「”こくしょー”をあやつるの」


「こくしょー?」


「うん。

これだよ」



 ボロボロの黒い紐で繋ぎ止めた手のひらを上に向けて、そこに黒い結晶を作り出した。

それは黒い水晶のようで、きっとこくしょーは黒晶という字を書くのだろう。

しばらくすると黒晶は砂のように消えていった。

正直、これだけではあまり分からない。

どういうものかを聞くと、聞かれて嬉しいのかニコニコと応えてくれた。



「これはね、まりょくをこめたぶんだけ、とってもかたくなったり、たくさんだせたりするんだよ!

だせたのはね、あいてにむかって、びゅーんどかん!

って、ぶつけることもできるの!

しかもね!

これにあったあいては”こくしょー”にとじこめられて、うごけなくなるの!

あとねあとね!

このまま”こくしょー”をね、とってもつよーいしょーげきでこわすとね、なかにいるあいてもね、バラバラになるんだよ!

……けど、ぼくはうまれつきまりょくがすくないから、やわらかいし、ひとつしかだせないし、すぐにきえちゃうの」


「それは……」



 いや、それはかなり応用が利くし使い勝手がいいし、正直強くないか。

魔力、つまりMPを込めたら込めただけ増産に強化も出来る。

当てた相手を閉じ込めることも出来るなんて強い以外何があるのだろうか。

しかも、中にいる相手も同時に倒せるなんて……本当に強すぎる!

たくさん出せるなら、壁みたいなのを作って防御も出来るはずだしね。

ひとつで攻撃、拘束、防御ができるなんて最高でしかない!



「ミツキもぼくとけーやくしたから”こくしょー”つかえるよ」


「そうなのか?」


「うん!

ぼくとけーやくしたから『やみぞくせいまほー』をてにいれたでしょ!

せーれーとけーやくしたらね、せーれーがおぼえてるまほーがつかえるの!」


「そうなのか」


「うん!」



 コクヨの持っている情報を聞きながら、私は魔法に関する本を探す手を早める。

どんな魔法かを聞いて、早く使いたくなったのだ。

『自己把握』で簡単に使えそうな気もするけど、しっかりと調べて使いたい。

その間も楽しそうにコクヨは自分の名前を連呼しながら泳いでいる。

たまに、思い出したように黒晶についての使い方を繰り返す。

どうやら、名前が嬉しすぎて何度も同じことを言ってることに気がついていないようだ。

他にも聞きたいことがあったのだが、この喜びを邪魔するのは憚られる。

調べた後、コクヨが落ち着いた頃に改めて聞くとしよう。


 にしても、本当に、嬉しそうで何よりだ。

……すっごい可愛い、……癒される。

どうやら、私は魔法だけでなく、精神安定剤(いやし)も見つけたようだ。

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