〜20〜自分確認しました3。
スキルを発動すると掌から、手のひらサイズの小さなクラゲがちょうど二十一個、ポンッポポンッポンッと軽快な音を立てて現れた。
小さなクラゲたちは私が擬態していない時の姿に似ており、魔核がある部分にはそれぞれ4から21の数字が刻まれた目玉が埋め込まれている。
クラゲ達は傍にあった窓をすり抜けて外に出る。
4の数字が刻まれた目を持つ一匹……一体?だけをこの場に残して、各々バラバラにどこかに泳いで行ってしまった。
「……どういうことだ?」
理解できなくて唖然としていると、いきなり右目だけがブレて見え方が変わり、思わず右目を閉じた。
ほんの一瞬だが見えた光景は、ガラスのようなものを通してどこかの部屋の扉を開けて、中に入っていく光景。
下の方にちらりと見えたのは、見覚えのある手袋をはめた手がドアノブに手をかけていたところ。
つまり、今のはフィエルが見ている光景、という事なのだろうか。
いや、違う。
正確にはフィエルに渡した、私の目の視界という方が正しいのか。
「視覚拡散って、そのままの意味だったのか。
私のたくさんある目を周囲に飛ばして、右目の視界を飛ばした視界と入れ替えることが可能……。
どうやって入れ替わりの切り替えを制御しているんだろう?」
それからすぐに、私は目に刻まれている数字が関係していると分かった。
スキル発動中に各数字を唱えれば、簡単に切り替えが出来たのだ。
しかし、使いすぎると右目が充血して、痛みを伴ってしまうので乱用は出来ない。
スキルを解くと、クラゲ達はフィエルに渡した目を除いて、その場でポフンッと音を立て消え去った。
私の体の中に戻ったのだろう。
常時発動スキルの『HP自動回復(弱)』と『MP自動回復(弱)』は共に(中)となった。
けれど、今までHPとMPが減る機会が無かったのであまり違いが分からないし、今までもあまり分かっていない。
MPの方で試す機会があったら試したい。
触れたことのある液体なら作れる『液体作成(弱)』のスキルは(中)になったのだが、今のところ使い道のないスキルだ。
水のないところでないと意味が無い。
あまり使ったことの無い『氷結作成』と『氷結操作』もそれぞれ一段階上がった。
手のひらで少し遊んでみたのだが、少しばかり操作が難しい。
これは慣れが必要なスキルのようだ。
ちなみに『氷結作成』MPを必要とするスキルなのだが、あまりにも大きな氷を作ると操作出来なくなるので今は手のひらサイズのMP5だけを込めている。
MP5だけだと、すぐに満タンまで回復してしまうため、『MP自動回復』の上限を確認することは出来なかった。
カエニビの戦いの後に魔石から手に入れたスキル、『風力操作』も(弱)から(中)へと上がった。
私の向かう方向に吹く風を少しだけ強くすることの出来る、MPを使用しないスキル。
他にも、『竜巻』の威力を強くすることも出来るのだというが、水の中では使い道がない。
その『竜巻』のスキルだが、『硬化』『斬撃』『貫通』のスキルと共にそれぞれ一段階上がった。
『硬化』は硬化出来る部分を増やすと同時に、MPを込められる量が70に増え、鉄よりさらに硬さを上げられるようになった。
試しに使用してみると、硬化として指定した右手が青色の薄い膜のようなものを纏って、触れてみると確かに硬かった。
しかし不思議なことに、硬化をしたというのにMPを使用しなかった。
というより込める必要が無いようだ。
もしかして、硬化した部分が攻撃を受けたりすると減ったりするのだろうか。
後払いか?
……分からないね、今度どこかで試さなくては。
『竜巻』や『斬撃』も試そうかと思ったのだが、ここが室内だと思い出してギリギリで止めることが出来た。
ただ、『竜巻』は込められるMPが『硬化』と同じく70に増えたのは説明から分かる。
……そして、『貫通』も対象がいなければ意味が無い。
危なかった。
カエニビとの戦いの後に手に入れたのだが、安全を優先したために確認することができなかったスキル。
『思考加速』、『探知』、『動作加速』、そして『捕獲網』。
他にも手に入れたスキルはあるのだが、それら全てが水属性だった為に技として『水操作』に取り込まれてしまった。
それらはひとまず置いておくとしよう。
『思考加速』の(中)は自分が一秒間に思考できる速度を百倍に引き上げることが出来るスキル。
ただし、使いすぎると激しい頭痛に襲われるようなので、制限時間を設けるなら10分といったところだろう。
『探知』は目に見える範囲の気配を察知することが出来るスキルなのだが、(弱)な時点でお察しの通り、『水操作』の方が使い勝手がいい。
『動作加速』というのは、その名の通りに自分の動きを早くすることが出来る。
MPは使用しないのだが制限時間があり、今は10分しか使用できないうえ、クールタイムとして30分必要とする。
……これを発動するくらいなら『水操作』で動きを早くした方が早いが、陸ではきっと助かるのだろう。
そして、この『捕獲網』という無属性魔石から手に入れたスキル。
名前から何となくどういうのかは察しているのだが、いや、もしかしたら私の想像とは全然違うものなのかも。
そうどこかで期待しながら説明を見ると、そこには3メールサイズの網を手や触手の先から発射し、対象を捕らえることが出来るとあった。
名前通りの内容だった。
二回までなら連射が出来、クールタイムは30分。
正直、どこで使えばいいのか分からない。
なんでこんなスキルがあるのだろうか。
進化によって手に入れたであろう、新しいスキルもある。
『毒強化』と『麻痺強化』というスキルだ。
これはその名の通り、毒と麻痺のスキルを強化してくれるスキル。
ただしこれにはMPが必要で、それぞれ一回につき500を使用し、クールタイムは1時間というかなりのハンデが付いている。
ここぞという時に使うものなのだろうけど、どこまで強化出来るのだろうか。
『念話』も同じく(強)に強化されたのだが、あまり違いが分からない。
それに、今は言葉を発することができるから、この姿の時は使わないスキルだ。
……今度この姿の時どうなるか試してみようかな。
相手の情報、つまりステータスを見破ることの出来る『情報看破』のスキルは(強・改)になったのだが、試せる相手がいない。
なので、どれだけのものか分からない。
(強)の時点で大体のステータスは見破ることが出来るので、これ以上何を見破ればいいのだろうか。
「…………ん?
なんだ、これは」
スキルの中に二つ、どう見ても新たな面倒事を持ち込んできそうなスキルを見つけてしまった。
いつ手に入れたのかさえ全く不明の、異世界ものの小説によくある『七罪原:怠惰(微弱)』と『七罪原:嫉妬(微弱)』という、みんな大好き大罪系であろうスキル。
本当に、この二つに関して私は何も知らないのだが???
泣いてもいいかなと思いながら、これも一応確認しておく。
怠惰の方は自分の部下、手下や配下等、自分に従う者を動かせば動かすほど、私が強くなるという、なんともまぁ笑えないスキルだった。
強くなるというのは、従者が手に入れた経験値が自分にも入ってくるということなのらしい。
そもそも、この世界に経験値があったこと自体に驚いている。
まぁ、それはひとまず置いておいて。
このスキルは常時発動のスキルで、私が怠けていたり、傍観者に徹していたり、好きなことをしているなど。
とにかく従者任せにしていればその間、動いている従者の素の状態のステータスが1.5倍になるというものだ。
逆に、従者を押しのけて私が前で動いていると、従者のステータスは半分以下に下がってしまう。
次の嫉妬の方も同じく常時発動スキルで、自分より優れている存在が周囲にいるのならばその効力を発揮する。
その者がしたことを私がする時、必ずほんの少しばかり上手にすることが出来る、という妬みがこれでもかというほど詰まったスキルだ。
周囲というのはかなりざっくりとしているようで、味方でも敵でもいいようだ。
さらに、このスキルにはもう一つ別の能力がある。
自分の従者が自分のためだけに動いている時、全スキル能力を1.5倍にする。
怠惰の方と重ねがけも可能で、素の能力が強化されている状態で強化されたスキルを使用出来るのだという。
逆に、それ以外の理由で働くと全スキル能力が本来の半分以下になってしまうという、独占欲の塊のような能力だ。
怠惰と嫉妬は『自己把握』が上手くこの二つのスキルを掛け合わせており、得られる効果は最大で2倍以上になる。
しかし、現時点でこの恩恵を与えられるのはフィエルのみ。
あの強い顔面兵器のフィエルをどれだけ強化したいのだろうか。
能力としてはとてもありがたい……のだと思うのだけど、こういう特別感のあるスキルって、なにかのイベント系で手にいるのが鉄則ではないのだろうか。
こんな簡単にポンっと手に入っていいのだろうか。
「これは、後でフィエルに教えておいた方がいいな。
…………はぁ、もうやだ」
あぁそうだ。
まだ確認しなければならないスキルもあったんだ。
この王冠に付属されているスキルである、『皇帝の証』、『擬態:人間』、『不変呼吸』。
『擬態:人間』についてはそのままなので何も言うことは無い。
『不変呼吸』のスキルはどんな環境でも、不変、つまり変わることの無い安定した呼吸をすることが出来るというスキル。
例えそこが水の中でも炎の中でも、酸素がないところでも呼吸が出来る。
そして、私が一番気になっていると言っても過言では無いスキル、『皇帝の証』。
これは溟海帝国ラピスリズラの皇帝であることの証明と同時に、鍵にもなるようだ。
溟海帝国にはいくつか封印によって入れないところがあるようで、そこに入るための封印を解く鍵としてもこのスキルは存在しているようだ。
そうなると、このスキルはまるで作られたような感じがしてくる。
……よし、触れないでおこう。
他のスキルが強化されている中、『有限箱』だけは変わることなくそのままだった。
なぜか、今は変わらないことが嬉しく思う。
さて、あえて触れないようにしてきた私の名前。
いつの間にかミツキ・ラピスリズラという名前に改名されていて、称号までついていた。
称号は”海皇ラピスリズラ二世”。
これもそれも全て、私が皇帝になったせいなのだろう。
はぁ…………。
精神攻撃の耐性、もっと強くなってくれないかな……。
* ※ * ※ *
名前:ミツキ・ラピスリズラ
種族:エンペラー・クヴァレ
称号:海皇ラピスリズラ二世
HP:70/70
MP:104743~/104743〜(現在増加中)
従者:『フィエル(執事)』
無効:猛毒(強・改)・麻痺(強・改)
耐性:物理攻撃(強・改)・魔法攻撃(強)・魔核攻撃(強)・精神攻撃(弱)・全属性攻撃(弱)・氷結(強)・催眠(強)
発動中スキル:『自己把握』『水操作(超)』『触手猛毒(強)』『視覚拡張(強・改)』『触手感覚麻痺(強)』『触手運動麻痺(強)』『HP自動回復(中)』『MP自動回復(中)』『視覚拡張(強・改)』『探知(弱)』『七罪原:怠惰(微弱)』『七罪原:嫉妬(微弱)』
+『皇帝の証(極)』『擬態:人間(極)』『不変呼吸(極)』
保有スキル:
『視覚拡散(中)』『液体作成(中)』『氷結作成(中)』『氷結操作(強)』『風力操作(中)』『念話(強)』『情報看破(強・改)』『硬化(中)』『斬撃(弱)』『竜巻(中)』『貫通(強)』『動作加速(中)』『思考加速(中)』『毒強化(中)』『麻痺強化(中)』『捕獲網(弱)』『有限箱(2/50)』




