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意識覚醒、クラゲになっていました。  作者: 佐藤莉
〜第1章〜溟海帝国
13/29

〜13〜執事自薦されました2。

「条件を満たさない限り解かれる事は決してない封印を、ワタクシは自身に施しました」


『……その条件は?』


「極めて簡単なようで、実は難しい事でございます。

”クソ野郎様及びその関係者では無いお方”、もしくは”クソ野郎様に関心が無いお方”。

これが封印を解く絶対の条件になります」



 それは……思っていたものより簡単な気がするのは気のせいだろうか。

いやでも、もしかしたらそのクソ野郎様がどこかの国の王様かなんだったら難しくなったり……するのだろうか。

今の所、私はこの世界のことをざっくりとしか知らないしから、本当のところは何も分からないけど。

まぁ、聞けばいいか。



『どうしてそれが難しいことになるんですか?』


「この世界の約八割以上がクソ野郎様の関係者、そしてその関係者の息がかかっている者達で溢れかえっておりまして。

ワタクシはこれまでの歩みの中で、クソ野郎様が全く関係しないお方を見たことがございません」


『……それは災難ですね』


「えェ、本当に。

この場を封印場所に選んだ理由も、地上でクソ野郎様に関係がない数少ない場所だったからです。

とは言っても、当時はこのように海の奥底にはありませんでしたが」



 あれ、これはもしかしたらクソ野郎様が王様説は正解なのでは?

でも、目の前の顔面宝庫は言葉に言い表せないほどのゴミ以下の存在と言っていたし……実際のところ、どうなのだろうか。

少し聞いてみた行きもあるが、今聞いたら話が変な方向に脱線しそうなので、黙って話を聞くことに徹しておこう。



「さて、ワタクシが貴方様の生涯唯一の執事(バトラー)になりたい理由を語らせていただきましたが、どうでしょうか」


『どうでしょうか、とは』


「ワタクシを貴方様の”もの”にしてくださいますか?」



 今までの語りは嘘をついているようには見えなかった。

何となくでそこに明確な理由なんてないけれど、本当のことだろうと分かるから可哀想だなとは思う。

けど、それまでだ。

それ以上は何も浮かばない。

私はそのクソ野郎様がどれだけゴミ以下の存在なのかを知らない。

何度も言うがそもそもこの世界のことを詳しく知らないから、最終的に「へー、そうなんだ」という感想しか湧いてこない。

それになによりも……。



『お断りします』


「っ!

……なぜ、でしょうか」


『だって、条件を満たす者ならば誰でもいいのでしょう』


「……それは、」


『ですのでお断りします。

他を当たって下さい』



 さっきは大丈夫という様々な意味に使われる言葉のせいで誤解させてしまったからね。

今度はちゃんとお断りしなければ。



「…………………………。

仰る通り、ワタクシはクソ野郎様と一切関係のない方でしたら、主君となるお方は誰でも良いと思っておりました」



 …………ん?

……んん!?

思っておりました(・・・・・)

何でだろうね、すごく嫌な予感がしてならない。

これはきっと、大事な選択を、間違えたんだ。

間違えてしまった。



「そう、思っていたのですが、今は違います。

こんなにも必死に身も心もすべて捧げたいと思ったことは今まで、一度たりとも無く、貴方様が初めてなのです。

あァ…正直、自分でもとても驚いています。

ワタクシにこんな感情があるということは思いもよりませんでしたから。

……ですから、ワタクシは貴方様の、貴方様だけの唯一の執事になりたい」



 話が、急展開過ぎる……。

何がどうして、こうなったんだ?



「それこそが……ワタクシの天命、存在する意味なのです」



 ……これは、数百年も仕えるべき主君がいなかったせいで、なんか禁欲症状みたいなことが起こっていないだろうか。

それか雛鳥の刷り込み効果に似たような事が起きている気がする。

でないと、こんなたまたま条件に当てはまって、たまたま封印を解いただけの相手に、ここまで縋るなんて考えられない。



「どうか、切にお願い申し上げます」



 そう言われて頭を下げられても、正直どうしたらいいのか分からない。

私には特に誰かを仲間にするだとか、一緒に旅するとか全く考えていなかったし、想像もつかなかった。

……だからこそ、困る。

誰でもいいのなら断じてお断りだったが、目の前の相手はどっからどう見ても私が主君になることを求めている。

たとえそれが一種の逃避によるものだとしても、求められるというのは心に来るものがある。

もし、ここで完全に拒否したら、また自分で自分を封印して棺桶の中で眠りにつくのだろうか。

今後現れるのかも分からない、条件に見合う誰かがここに現れるまで……何年も、何十年も、ずっと……。


 ……………………っ、はぁ、仕方ない…のかな。

このまま放置するというのも目覚めが悪いというか、こう、なんかむしゃくしゃする。

こういう時は旅は道連れ世は情けっていうし、今は流れに身を任せよう。

それに、この世界について色々と詳しく聞けるというメリットがある。

まぁ、クソ野郎様に追われてしまうかもというデメリットもあるのだが……、それ以上に今は情報が欲しいし、きっと、目の前の相手からは逃げられないだろうからね。



『分かりました』


「っ左様でございますか!?」


『ただし!

条件があります。

いえ、違います、雇用契約です!』


「フフフ、はい、なんなりとお申し付け下さい」


『…………内容は全部で七つです。

一つ、私に対するあらゆる攻撃の禁止。

二つ、私に対する敵対行動の禁止。

三つ、私を決して裏切らない。

四つ、私に隠し事は禁止。

五つ、私に嘘をつくことを禁止。

六つ、私についての情報を許可なく漏らさない。

七つ、私以外の誰かに仕えることを未来永劫禁止。

これらを絶対に守れるのならば、あなたを私の唯一の執事にします』



 少し厳しすぎただろうから。

いや、そんなことは絶対無いはずだ。

このいつ死んでもおかしくは無い世界で知り合ったばかりの相手を自分の執事として受け入れるのだから。

後に裏切られたり寝首をかかれるなんて事は絶対に避けなくては。

というか、いきなりよくこんな条件が思いついたね、私。



「拝命致しました。

貴方様の尊きお言葉、深く魂にまで刻み込み、ワタクシの命と名、そして天命に懸けて守り通してみせましょう。

では、どうか契約の証として貴方様の美しい瞳をワタクシにお与え下さらないでしょうか」


『は?』



 今、なんと言った?

ぁ、貴方様の、瞳を、わたくしに、お与えください?

待て待て待て、ぃっ意味が分からない。

……はぁ?

さっきまで私の執事になりたいという話だったはずなのに、いきなり内容が遥か彼方にぶっ飛んでしまった。


 訳が分からなくて唖然としていると、目の前の執事は身に付けていた手袋を外し、次にモノクルを外してしまうと、アメジストのような目に手をかけた。

何をやろうとしているのかを頭では分かったはずなのに、止めた方がいいはずなのに、それに伴う思考が追いつかない。

追いついていない。

そして、執事は自分で自分の目をくり抜くと、その目玉を、無表情で握り潰した。

戸惑いなんて一切感じ無かった。



『な、何を……?』


「邪魔で不要な目をくり抜いたのです。

この目はもう必要ありませんから」


『そうじゃなくて……なんで目をくり抜いたのかを……』


「おや、もしやご存知ありませんでしたか?」


『……私はこの世界に生まれてからまだ一年、いや、半年も経ってないですし、この海からも出たことは無いです。

だから、この世界のことも海の外のことも、何一つ知りません』


「左様でしたか。

でしたらこちらもご説明いたしましょう。

ワタクシのように誰かにお仕えすることが使命の存在は己の片目、もしくは両目を主君となるお方からいただくことで、他の方に仕えることが出来ないようにすることが可能です。

同時に、このいただいた目は主君となったお方以外で取り除くことが不可能な特別な目でもございます。

他にも与えた目を媒介として主君となるお方にのみ出来ることがあるそうですが、ワタクシは存じ上げておりませんので、どうかご了承ください。

そして、こうして与えられた目のことをワタクシ共は”隷従の瞳”と呼んでおります」


『待ってください、一つ気になることが』


「はい、なんなりとお聞き下さい」


『その、”隷従の瞳”は自分の主君以外に取り除くことは出来ないと言いましたよね。

だとしたどうして……』


「フフフ、実は知る人ぞ知る抜け道がございまして。

主君となるお方が使える価値もないゴミ以下のクソ野郎と、魂から認識することで簡単に取り除けます。

ある種、忠誠の証とも捉える事が出来ますね」


『……そうですか』



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