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意識覚醒、クラゲになっていました。  作者: 佐藤莉
〜第1章〜溟海帝国
12/29

〜12〜執事自薦されました。

「なんと、確定者様がクヴァレ種の魔物とは……」


『文句でもありますか?』


「まさか、滅相もございません!!

ワタクシはむしろ歓喜に満ち溢れております」


『……歓喜?』


「左様にございます。

クソ野郎様に見切りをつけて旅立ち、追っ手から逃げること数年、このワタクシが仕えるに値する主君を探し彷徨うこと数十年、再度現れた追っ手から身を隠すため仕方なしに自分で自分を封印して数百年。

ワタクシはずっと待っていたのでございます!

条件を満たす者にのみ解くことが出来る、この封印が解かれる日を!!」



 何を言っているんだろうこの人、なんかいきなり語り出したんだが。

いや、そもそもこんな水の中、それもこんな深い所にいて普通に動ける時点で、目の前にいるこの美しさで人を殺せそうな顔面兵器の男性……いや、もしかしたら女性という可能性は……無いね。

まぁ、どっちでもいいや。

とりあえずここにいる時点で人間では無いのはほぼほぼ確定だろうね。

封印が解かれるのを待っていたとか言ってるけど、石碑に書いてあるあれはスルーでいいのだろうか。

……放置しておこう。

今はとにかく。



『この手、離してくれませんか?』


「お断りします」


『なぜ?』


「離したら最後、貴方様はワタクシを置いてどこかに行ってしまわれるのでしょう」


『当たり前だが……ぁ』


「フフフ、素直なお方なのですね」



 そう言って微笑んだ顔は眩しいほど輝かしくて……って違う違う、何を考えているんだ私は。

それに、どれだけ輝かしい笑みを浮かべても、光を通していない、率直に分かりやすく言えばハイライトの無い瞳で台無しになっているのを気付いているのだろうか。


 ……そんな事より何とかして離してもらう方法を考えなくては。

殺せるかどうかは分からないけど、とりあえず殺すという手段は置いておく。

本当に殺せるかどうかは分からないけど。

生きるために昔の私を割り切り、沢山の命を葬り、身も心も魔物となった私には、今更目の前の相手を殺すということに躊躇は無い。

それが例え、人型であろうと。

けど、相手はこちらに一切敵意とか殺意とかが無いので、出来れば穏便に解決出来ないかと思ってしまう。

……最初に向けられた敵意は掘り返しても面倒だから、忘れよう。



『どうしたら離してくれますか?』


「あァ!

その問いを待っておりました!

是非、ワタクシを貴方様の生涯唯一の執事(バトラー)に任命して欲しいのでごさいます」


『バトラー……執事ってことか?』


「左様でございます」


『なぜ?』


「なぜ、ですか。

そうですね、説明いたしますと少し長くなりますがよろしいでしょうか?」


『大丈夫です』


「では、語らせていただきます」



 これ、お断りしますの方が良かったのか……。



「ワタクシは先にも申し上げたとおりとあるお方、クソ野郎様とでもお呼びいたしましょうか、そのクソ野郎様から逃げ続けていました。

クソ野郎様とはワタクシが以前お仕えしていた方なのですが、それはもう言葉では言い表せない最低最悪のゴミ虫でして。

いえ、これではゴミ虫に失礼ですね。

ゴミ虫以下、見るもおぞましいこの世の”悪”そのものです。

かつての日々は何故このような害悪に仕えているのだろうと常々疑問に思っておりました。

本来ならば、ワタクシのような者はそんな疑問を考えることすら許されない立場だというのに、クソ野郎様に仕えることでそれは自然に生まれておりました」



 ゴミ以下のクソ野郎様……この世の”悪”……。

なんか、目の前の相手が、そのクソ野郎様という者のことを語っていくうちにゆっくりと、微笑みながら目が氷のように冷たくなっていく。

それだけでは無い。

瞳が濁っていくような闇を纏うのもやめて欲しい。

ただでさえ、ハイライトの無い瞳に見つめられてるだけでも全て呑み込まれるのではと、恐怖しているのに……。



「疑問はワタクシの中で消して溶けることの無い雪となり、少しずつ少しずつ降り積もっていきました。

そして、ある日に起こった出来事によってワタクシの中で、クソ野郎様は仕える価値なんて一切無いゴミ以下の存在だと認識しました」



 ……とうとう笑顔すら綺麗さっぱり消え去ってしまった。

こんな顔面宝庫から笑顔を取り上げる事が出来るクソ野郎様とは一体何者なのだろうか。

いや、特に知りたいだとか話してみたいとか、ましては会いたいなんて断じて思わないけどね。

というか、美人の真顔ってこんなにも怖いものなんだね。

知らなかったです。



「それからワタクシはワタクシの持ちうる全ての手を使って逃げ出しました。

辞表をクソ野郎様の顔面に叩きつけ、予め確認及び少々の細工をしてあった限られた使用人のみが知る隠し通路を使い、それはもう簡単に逃げ出せました」



 辞表を顔面に叩きつけるって、なんかのドラマかアニメで見た覚えがあるような、ないような……。

って、そんな事より改めて思ったのだが、目の前の相手は物凄い行動力があるようだ。

そんだけクソ野郎様が嫌だったというわけか。



『良かったですね』


「えぇ……ワタクシも当初はそう感じておりました」


『……え?』


「逃げ出せたところまでは良かったのです。

しかし、しばらく経ってからとてつもない喪失感に見舞われました。

あのクソ野郎から逃げ出せて幸福感に満たされるはずが、逆の感情に満たされてしまったのです。

おかしいと思い原因を調べてみると、なんと、ワタクシには魂に刻まれた呪いがあったのでございます」


『呪い?』


「いえ、そうですね……。

呪いというよりは使命という言葉が正しいのでしょう。

ワタクシがこの世に生まれた存在意義……それならば”天命”という言葉でもよろしいでしょうね」



 なんかいきなり思ってもみなかった壮大な話になってきてないだろうか。

呪いやら指名やら天命やら、生前の私がいたところでは絶対に聞かなそうな言葉がどんどん出てくる。



『その天命とやらが、私の執事になりたいというのに関係があるのか?』


「ご明察です。

貴方様ならばすぐに理解なさると確信しておりました」



 いや、この話の流れなら誰でも分かるだろう。



「そうです。

ワタクシの魂に刻まれた使命、天命は誰かにお仕えし、ワタクシの全てを捧げることなのです。

ですから、仕えるべき存在がおらず天命を果たせていないワタクシはこの世に存在する意味がなく、いつ死んでしまってもおかしくはない状態でした。


 フフ、ですがワタクシは存外しぶといのでございます。

仕えるべき存在がいないなのならば自ら探せばいい。

己の納得のいく主君であれば、クソ野郎様の時みたく見切りをつけることも無く、ワタクシの全てを捧げられる。

あァ……想像しただけでもなんと素晴らしいことなのでしょうか!!

ですから、ワタクシはワタクシだけの唯一絶対の主君を探し出すまでワタクシを殺すのは待ちなさい、と天命を押さえつけました」



 ……もう、何を言っているのか分からない。

次元の違う話しすぎて根本から理解出来ないし、おそらく目に見えないであろう天命を押さえつけるとはどういうことだろう。

目の前の相手が人間では無い事がどんどん証明されているような気がする。

『鑑定』を使えば正体が分かるのだろうか。



「そうしてワタクシだけの主君を探す旅に出たのですが、クソ野郎様が行く先々でワタクシが主君を得られないように手を回し、連れ戻そうと追ってを送り続けてくるのです。

本当にそれはもう迷惑極まりない。

なので、ワタクシは最終手段にでることにしました」


『それが封印?』


「左様でございます。

やはり、貴方様ならばすぐに理解なさると確信しておりました」



 そんな大袈裟な。

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