お隣中国における最先端ビジネス事情
「抜け始めて分かる髪は長い友達」
これは、とある発毛促進薬のCMで使われていたキャッチコピー。そう、髪の毛は多くの人が一生を共にする友達なので大事に付き合っていかなければいけない。
だが悲しいかな、人は時と共にその友達との縁が薄くなっていく。多くの方が「そんな事は嫌だ」と日々何らかのケアに勤しんでいるのではないだろうか。
最近とあるニュースが入ってきた。中国は雲南省で大規模な密輸品が摘発されたとの事。都合246トン。その中身は「人毛」、人の髪の毛だ。何故そんな事が起こっているのか?
幾ら大事な親友と言えども、時には不幸が訪れる。距離が離れ音信不通になる場合や死別する場合もあるだろう。例え本人が大事に思っていたとしても、世は諸行無常で何が起こるか分からない。
もし貴方が大事な親友を失ったとして、悲しみに暮れるだけでは事態は何も変わらない。前を向き歩き出す必要がある。その解決策の一つとして、「新たな親友を見つける」というのは否定する事はできない筈だ。
今中国では六人に一人が抜け毛で悩んでいるとも言われている。推定人口として約2.5億人程。また、どこまで本当かは分からないが、若い女性が男性を選ぶ際の基準の中に「髪の毛がある」という項目が含まれているという。
──中国に数多くある社会問題、その中で今頭が涼しくなる「ハゲ」が最もあつい。
結果、新たな親友である「カツラ」市場が急速に伸び始め、ビッグビジネスへと成長しているという話だ。密輸された人毛はカツラの材料である。法律というのは現状に即していないものが多々あるが、人の髪の毛は中国の禁輸品目に入っているので仕方がない。
正直な所、カツラを作る材料が足りないので、外国から輸入したら犯罪者になったという少し可哀想な事件である。
自分は抜け毛業界には詳しくないが、ハゲが進行したとして、無理にカツラに拘る必要がない事は分かっている。例えば植毛や各種育毛剤、果ては病院での治療(保険適用外)という選択もある。
ここまで「カツラ」の市場が急速に伸び始めたのには理由があった。コストの低さである。
各地の一般的価格帯から出した平均的なデータという訳ではないが、中国においては一般的にカツラと植毛では約10倍の金額差がある。しかも、カツラはオーダーメイドという話だ。
つまり、低コスト化に成功したカツラがこの中国でのハゲ市場で大きく台頭してきた。現在中国での売上高は年間1兆円に近い。
これには理由がある。
何故なら、データで示す通りうす毛で悩んでいるのは六人に一人。当然、全世代を通してのデータである。また、若い女性が男性を選ぶ基準の一つが2323である事。これらの意味する所は中国では今若ハゲが大流行しているという意味だ。言わば昔の日本の様に元服して月代になるようなものである。武士が大量に溢れかえってしまった。
そうすると若い世代の人は収入が低いので必然的に低コストであるカツラを選択せざるを得なくなる。宝くじにでも当たらなければ植毛をする事はできない。
勿論、育毛剤等の選択もあるとは思うが、現状それでは手遅れの人が増えている。選択がカツラか植毛かという二者択一が理由である。
そうして大量のカツラ需要に応えるため、外国から人毛を蜜輸入し、摘発されたという流れである。
現状は新型コロナの影響により人材面や製造面で偏在が起きている事も今回の事件の背景にはあると思われる。
それはさて置き、中国で爆発的にハゲが拡大しているのは間違いない。しかもその勢いに陰りは見られない現状、このまま行けば右を向いても左を見てもゾンビならぬハゲが溢れる世界が来る。いや、2323に偽装したレプリカントばかりの世界というべきか。
……話が逸れた。少し前には中国でブルセラ病が大流行した事を知っている人もいるだろう。本当にこの国は大国だけに話題が豊富である。
なお、日本でお馴染みの企業三社も既に中国に進出済みである。中でもユニヘアーの進出はとても早かった。また、経営再建中のアデランスも中国で確実に業績を伸ばしているようだ。中国からネットでオーダーを受ける事もあるという。アデランスは一時期破産するとも言われ、2017年2月に東証一部から上場廃止された企業なだけに頑張って欲しいものである。
兎にも角にも、ここ数年では考えられなかった中国での新しいビジネス、"ヅラ"の紹介であった。まあ、日本のようにある程度の時期を境に開き直ってスキンヘッドにする事になるとは思うが。
アデランスが経営不振になったのは、男性用カツラの売り上げが一気に落ち込み、女性用にシフトするのが間に合わなかったというのがよく言われる理由である。