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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私が魔王認定ッッッ??!!

作者: たーちん

 右手には粉々になったカップの取手を握りしめたまま、目の前の事態に困惑する。


「ラシア! 貴様を魔王と認定する!!!」


 なんだこれは?

 

 一旦状況を整理しましょう。

 私はラシア・シャトーシャ、王族の血も流れている由緒正しき名家の御令嬢。

 対して仁王立ちしているジャンは王家継承1位の超お偉い王子。ファミリーネームはありません。

 その後ろには学園で最近幅をきかせていると言う平民の娘のコキュートス。小動物のような見た目で男を手玉に取るのが得意らしいです。

 

 ついさっきまで学院の生徒総出のお茶パーティーをしていました。各々が好きな席に着いて友人達と共に駄弁っていたのですが、唐突に風の魔力を感じて気づいた時には手に持った紅茶は吹っ飛んでいました。

 

 やっぱりわかんないや。


「一体なんですか。いきなりそんなことを言われる理由はないと思いますが」

「何を言うか白々しい」

「そうは言っても訳がわかりません。第一、魔王というのはお釈迦の存在でしょう? 何故私を魔王とお思いになったのかしら」

「ふん、証拠は揃っているんだぞ」


 そう言うと、王子は私の椅子をひったくってそれに座って話を続けました。


「んなっ......!」

「先ず、貴様はコキュートスにいじめを行なっているだろう?」

「いえ、そんな事実はありませんが」

「嘘をつくな。ここに証言もある」

「ええ、ラシア様からは日頃からいつも意地悪をされてきました!」


 王子の後ろで佇んでいたコキュートスはここが正念場だという気迫で前に出てきて語った。


「最初は些細な悪戯でした。通りすがりに肩をぶつけられる程度。しかし翌週には悪口を言われるようになって、次第に腹パンやノートへの落書き、そしてついに先日階段から落とされました!」

「あの時は俺がいないとどうなっていたか分からなかったぞ」

「本人からだけでなく、取り巻きを使ってまで意地悪をしてきました。集団で囲まれて罵倒されるのは日常茶飯事、時には体の見えないところをボコボコにされました!」


 そう言ってコキュートスは袖をまくり上げ、二の腕にある青痣を見せつけてきた。

 フーンという顔をしていると王子はますます憤った。


「他人事であるような顔をするな!」

「しかし、私が犯行に及んだというのは本人以外に見ていらっしゃらないのですか? それに魔王認定は道理に合わないと思うのですが.....」

「この痕を見てみろ! このような酷い仕打ち......貴様以外にする訳がないだろう、この闇魔法の使い手がッ!!!」

「闇魔法を使えるからって差別をしないでくれます? 闇属性は、そこにおられるコキュートス様の光属性と同様にとても珍しいだけです」


 私が憤慨して答えると、王子はニヤリと笑った。


「そりゃあ珍しいだろうな。最後の使い手は千年前だったからな。だがお前も知っているであろう? 先代の光魔法の使い手は聖女となり、世界を照らした。先代の闇魔法の使い手は魔王となり、幾つもの国を滅ぼし聖女に討たれた。伝承からするとやはり貴様は魔王だ」


 彼がいうことは概ね正しい。

 王国が建国される前に遡る伝説では闇魔法は魔王の証とされている。


「馬鹿馬鹿しいですわ。そんな昔の迷信を信じ込んでしまって......。少し可哀想に思えてきましたわ」

「それだけが理由ではない!」


 あら、どうしたのかしら?

 何か確信めいた顔をしていらっしゃるわ。




「数日前の帝国崩壊、あれは貴様の仕業であろう!!!」







 え......なぜバレたのでしょう?

 ちょっと悪ふざけに即死魔法を打ち込みはしましたけど現場にはいなかったはず。


「なぜそのことを......?」

「やはり図星か。お前は悪名高き闇魔法の使い手だからな、国の最新機器によって貴様の動向は常時調べていた」


 あらいやん。常時ストーキングされているなんて変態の所業じゃありませんか。普通にイヤなんですけど。

 いや、そんなことはどうでもいいです。

 これはまずいですね。コキュートスちゃんにした所業も全部バレてるわね。そうであるなら即逃走ね。


「さあ、お縄につけ!」

「命じられるままの悪役なんていませんわよ」


 王子と周りの近衛騎士が私を包囲して襲いかかってきます。王子の後方ではすでに魔力を練ったコキュートスが今にも聖魔法を打ってきそうです。

 このままでは捕まってしまいます。

 そうとわかれば被っていた猫を脱ぎ捨てます。


「おら、聖女様。これでも食らえや!」


 いまだ握りしめていたカップの取手をコキュートスちゃんに全力投球して魔法を中断させます。


「イダいッ!!??」


 コキュートスちゃんが叫んでいますがそれを楽しむ余裕はありません。次の行動に移ります。

 右後方の一番弱そうなモブ君に向かって裏拳を打ち込んで気絶させます。そして彼を乗り越えて包囲網を突破いたします。


「あ、しまった!」

「ではさらば、次会う時は御元気で!」


 右手に僅かな反物質を作り出し、発射させて壁を対消滅させます。できた穴から浮遊魔法によって弾丸のように飛び出します。


 よーし、これで正式に魔王認定されちゃうし、もっと好きなことをやっちゃうぞー!












これは後に悪同士の潰し合いと呼ばれた極悪勇者パーティーとキ印の魔王との戦いの始まりであったッッ!!!












「魔王認定っていいものね。好き勝手しても評価が変わらないわ」

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