8.夜会 前編
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ついにやってきた夜会の時間にリアンの顔がひきつる。
「…戦争よ」
「なんか言いました?」
「…なんでもないわ」
するとコレーが復活してきた。やはりまだ顔色は優れない。
「侍女たちの噂聞きましたよ。ラディム殿下、色々と部屋のことでケチつけたんですってね」
「絶対アレ、面倒くさい性格よ…」
コレーは脱力しきっているリアンにすかさず突っ込む。
「リアン様〜。他国の皇子にアレ呼ばわりはないですよ〜」
「ま、案外チョロかったりして。リアン様ならいけるんじゃないですか?」
リアンの夜会のドレスは真紅のドレスで露出が少なく、清楚で上品な感じの物だった。それが本人の持つ魅力を引き立てている。美形に慣れた貴族でさえ一瞬見惚れるほどだ。
「絶対ムリ」
イベルはやっぱりというように苦笑する。
「リアン様、行きましょうか」
リアンは結局イベルに連れられ夜会に出るのだった。
*
夜会にて。
時間になってもまだ来ないラディム殿下に会場は騒ついていた。
「ラディム殿下、まだですかね」
イベルは壁の花となりきっているリアンに話しかける。
「どうせなら、この夜会が終わるまでいなくていいわ」
「それじゃ困るのは殿下では?」
「うっ」
すると背後から声がした。
「リアン殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
振り返るとセルジェ侯爵令息のゼペルだった。
「ゼペルさんですか」
「ええ、是非私と最初のダンスを―」
「―ラディム殿下!!」
自分の台詞を遮られ、不満そうに顔を歪めるゼペルを無視してリアンはラディム殿下を見た。
ラディム殿下は豪華な真紅の服で、リアンのドレスと全く同じ色だった。
「は?」
会場の皆も同じ気持ちだっただろう。
なぜなら、同色の服を着るのは家族又は婚約者の場合のみなのだから。
会場にいる誰もがリアンとラディムを見る。
リアンが冷や汗を流しているのは言うまでもない。
経験の差か、最初に復したのは女王だった。
「ラディム、これはどういうことでしょう。この国にくるからには、それなりの常識を学んできていると思いますが」
ラディムは頷くと言った。
「ああ、同色の服を着るのは家族か婚約者なんだろう」
「知っているならなぜ着るのです」
女王が発するプレッシャーにビクともせずに、ラディムは口を開いた。
「それはリアンがもうすぐ俺の婚約者になるからだ。違うのか?」
「だからと言って、まだ決まったわけではありません。礼をわきまえて欲しいですね」
女王は肩をすくめると顔を上げた。
「今回ばかりは不問にしましょう。ラディム、次はないと思いなさい」
女王はラディムに釘を刺すと杯を高く上げた。
「では、ラディムがアングニュートルに来た歓迎を行いましょう。我がアングニュートルに乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
一件落着のようだが、まだ宴は終わっていない。
隅で小さく呟くリアンをラディムは見ていた。




