7.ランのお料理(1)
視力→聴力
「私、死んだ」
チーン。今まさにリアンの状態を表す擬音語だった。
「確かに、あれは死にましたね」
死んだ顔をしているリアンに、イベルは苦笑してリアンに紅茶を出す。
「にしても、あの少女はなんだったのか」
少女とはあのラディム皇子の連れのことだろう。確かに異質な空気を纏っていた。
「ええ。気になりますね」
イベルは同調したコレーに眉をひそめる。
「あれ?コレーは見てたのか?」
コレーは手を口に当て、優雅に微笑んだ。
「三階から拝見させていただきました」
「どんな聴力だよっ!」
イベルは思わず素でツッコむ。
「それはいいとして、リアン様、起きてください。今日も予定がびっしり入っているんですよ」
コレーの台詞にリアンは顔を背ける。
「……動きたくない」
「どこの子供だよっ!」
「リアン様〜、夜から夜会ですから、動きましょう」
「ううっ……イベルが代わりに行って」
「なら殿下、動かなくてもできる仕事がありますよ」
「なんですって?ラン」
嫌な予感を感じたリアンにランが不敵に笑う。
「ふっふっふ。ジャジャーン、特製、火山噴火ですっ!」
ドンっ!と目の前に置かれた食べ物にリアンは顔色悪くする。…いや、食べ物と呼んでいいかわからない。
その食べ物はチョコカップケーキらしきもので、中央に穴が開いていた。それはまさしく、カップケーキが噴火したあとのようだった。中身のチョコはドロドロに溶けて蒸発してマグマ溜まりとなり、チョコチップはまるで岩石のようだった。
(((…これは、本当に人間の食べ物??)))
三人がそう思うのも当然の見た目だった。
「これを食べて、改良して、売ればなかなか売れるでしょう、自信作です」
ドヤ顔のランが珍しく恐ろしく感じられ、リアンは本能的に逃げた。
「ラ、ラン。私は忙しいからこれでっ。いくわよ、イベル!」
「はいっ!コレーさん、あとよろしくっ」
主人であるリアンならともかく、イベルまで逃げていく様にコレーは眉を釣り上げる。
「よろしく、じゃないでしょう!」
逃げて行った二人を眺め、またかとランはため息を吐く。
「……仕方ない、コレー、食べて。さあ!」
ランはコレーにに得体の知れない物体を口に放り込む。
「んぐっ」
「さあ、感想を!」
迫るランにコレーは感想を述べようとする。
「お、お、お」
痙攣し始めたコレーにランは眉をひそめる。
「どうしました、コレー」
するとバタンッと音を立ててコレーは倒れた。見るとコレーは白目を剥いたまま気絶していた。
「あれま」
美味しすぎて気絶したのか。ランは感想を諦めることにした。
「ん〜、今回ばかりは仕方ない」
ランは一人カップケーキを美味しそうに口にした。
これ、実話です。
もちろん、この話と違ってカップケーキは美味しかったですけどね。
あの時は本気でビビりました。




