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49. 真実


コンコン、と扉がなり、彼は顔を上げる。そこには見慣れた偽物がいた。


「失礼します」


そこに立つアデルは驚くほど無表情だった。


「アデルか。ちゃんと例のものは渡せたのか?」


「はい。これでよろしかったですか」


それを聞いた彼は満足そうに頷く。


「ああ、問題ない。やはり、保険をかけておいて正解だったか。あの親子は妙に勘が鋭いからな」


あの赤い髪飾りを見てさぞ驚くだろう、と男は笑う。これで間違いなく混乱するはずだ。なぜなら、数年前にアデルがリアンにあげたものと全く同じデザインなのだから。


「他に報告は?」


「ありません」


その言葉を最後に男はアデルから興味を失ったようだった。


「そうか。なら下がれ」


そう言い、男は視線を外す。だが、いつまで経っても出ていく気配のない偽物に彼は顔を上げた。


「なんだ? まだあるのか」


その言葉に偽物は口を息を吸って、吐いた。


「……いえ、なんでも」


「そうか」


その言葉を最後に偽物がドアノブに手を置いた時。


「褒美が欲しければ、その分働くことだ」


その言葉に偽物は初めて表情を見せた。


「……ええ。承知しています」


偽物は男にバレないようにドアノブを強く握った後、意味がないと悟って静かに部屋を出た。




***




「なんでーー」


リアンはそれを凝視していた。普通ならあり得るはずのないものが手の中にあるのだから。リアンはほぼ無意識で髪飾りを裏返した。あの時、アデルが自ら作ってくれた髪飾り。裏にはリアンの名が刻み込まれている、はずだった。


「……ない」


何度探しても、リアンと刻まれた文字はなかった。だがそんなのはあり得ない。アデルはこの部分に一番時間をかけたといっていた。なのにないなんておかしい。


(ちょっと待って)


リアンはハッとしたように口に手を当てる。あの時、確かリアンは嬉しさのあまり、常にその髪飾りを持っていた気がする。着けなかったのは、着けたらブラコンだと思われてしまうのが恥ずかしかったためである。

だが、確か一度だけ、弟の誕生日パーティーにつけていた覚えがあった。


(あ……!)


確かあの時、公爵に自慢した覚えがあった。でも、文字のことは言っていなかった気がする。リアンはそれは自分と弟だけの秘密にしたかったから。

そう思いだした途端、納得した。おそらく髪飾りの図面をとって。そして同時に怒りが湧いてくる。こんなに大事な思い出を利用されたことにショックだった。


「ランッ」


「どうしたんですか?」


「今すぐ紙とペンを持ってきてちょうだい」


「わかりました」


そしてランが出ていくと、リアンは地図を取り出して広げる。そしてしばらく思考した後、ニヤリと笑って地図をしまった。





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