48. 夢
夢を見た。幼い頃の夢。まだ、アデルがいた頃の。
「りあんーー」
そう呼ばれてリアンは振り返ると、まだ幼いアデルがパタパタとこちらに走ってくるのが見えた。可愛らしいものだが、リアンは眉を寄せるとビシッと言い放った。
「こーら、お姉様でしょ」
その声にアデルは跳ねると、恥ずかしそうに小声で言った。
「ぅ……お、お姉様……」
それを聞くなりリアンは表情が一気に明るくなった。
「よくできました! じゃあ、アデルにこのケーキあげるわ」
「えっ……でも、それ……お、お姉様のじゃ?」
「いいの! いいから食べなさいっ。わたしはお腹すいてないの!」
その直後、リアンのお腹が鳴った。
「ぁ……」
恥ずかしそうに頬を赤らめさせ、微笑ましく見守る使用人の目から隠れるように俯くリアンにアデルはケーキを渡す。
「やっぱり、だめだよ。お姉様が食べなきゃ……」
「……うぬぬぅ」
「じゃあ、分けっこ、する?」
「あ、アデルがそういうなら……別にいいけど」
すると素早く察した使用人たちはケーキを半分に切り、それぞれに渡した。
リアンはそれを受け取ると、せめてもの姉のプライドとして弟が先に食べるまで我慢するという苦行を始めた。ジーっと弟を観察し、まだかまだかと待ち続ける。ようやくアデルが食べ始めた頃に、すかさずリアンもそれを口に入れる。するとリアンはケーキ以外の全ての存在を忘れるほど夢中になり、からになった皿を名残惜しそうに見る。
「リアン、まだ物足りていないようですね」
その言葉にリアンはギクリとなって前を見る。そこには先ほどまでリアンと一緒にお茶していた女王がいた。
「それなら最初から二つ用意すればよかったですね」
その言葉にリアンは動揺を見せる。するとそばにいた乳母が女王に話しかけた。
「恐れながら、陛下。リアン殿下はアデル殿下に姉らしい行動をしたかったからだと愚考します」
実にその考えは的をいていた。
「あら、ふふふ。それなら仕方ないですね?」
リアンは赤面になって俯いた。だって、姉らしい行動を取りたいが故に我慢していたなんて実に子供らしくて、バレたのが恥ずかしかったのだ。
ふと気になってアデルを見ると、クリームを口の端につけたまま首を傾げていた。よかった、と安堵すると、アデルはリアンの服の裾を引っ張って、後ろを指差した。
「お姉様、あっち行こ」
「え? ……でも……」
そう言ってリアンはチラリと女王の方をみる。女王はそれに気づくと、小さく頷いた。
それを見たリアンは椅子から降りると、女王に礼をとった。
「先に失礼します」
「いってらっしゃい」
そう言われると、リアンはアデルについていった。
***
「ーーハッ」
ふと意識が戻ったリアンは飛び起きた。
「ゆ、め?」
リアンは己の腕を見つめる。先ほどまであった何か、大切なものを失ってしまったような気がして。
ふと夢の内容を思い出そうとして、昨日のお茶会を思い出した。綺麗な庭に、見慣れたティーセット、そして。
「……アデル」
偽物のアデル。本物と入れ替わるようにやって来た、偽物。どこかぎこちなくて。不器用で。その姿が、どうしても本物と重なる。
「……ッ……なんでっ」
なぜあの時弟について行かなかったのか。なぜ弟はいなくなったのか。なぜ、戻って来たのが偽物なのか。なぜーー本物と偽物が重なってしまうのか。
考えれば考えるほど疑問が尽きない。いつまでも尽きない疑問に諦めようとした時、テーブルの上に置いてある赤い箱が目に入った。
「っ……」
あれは確か、お茶会の最後に偽物に渡された中身を見ていない箱だった。気になって、ベットから降りて箱を開けた。
「……ぇ」
驚愕した。ありえないと、何度も何度も中を見直した。だが、何度見ても、その中身は変わることがなかった。中には箱と同じく紅い髪飾りがあった。砂糖のように小さい緑の宝石が散りばめられたそれは。あの日、あの時、あの庭で。本物がくれたのと、酷似した髪飾りだったーー。
↓ここから先は作者のどうでもいい呟きです。
あれ? もしかして、この小説書き始めてから、一年経ってるようなーー。
てことで、遅れて気づきましたって、もう1ヶ月ちょい? 経ってました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます! ほんと、不定期だからね。それに半分ノリで書いてるし。だから所々設定が曖昧でして。しかも昔の話は見直せないくらいに黒歴史化してる……。
というわけでかなり早いけど、メリークリスマス。良いお年を。なんてね。ほんと、この作者かなりの怠け者ですから、今言わないと今年も言えない気がして……。
どうでもインフォメーションでしたね。一応まだ続きますので、よろしくお願いします。
この作品を気に入ってくれたまだブックマークしてない方や、評価つけてない方は是非よろしくお願いします。




