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46. 信じる


夜中、コレーは公爵家に潜入するために準備をしていた。盗聴器や暗器などをカバンの中に詰めて行く。

コレーはふと引き出しの中に大事にしまってあったリアンが幼い頃の写真を見つけ、硬直した。わずかに震える手でそれを持つ。そこには幼いリアンとアデルが写っているものだった。ひょっとしたら、これで人生が終わるかもしれない。

その危険性は嫌でもコレーの中に染み付いていた。だが、その写真を持って行くことはできない。見つかれば、リアンか女王あたりの間者だと一瞬でバレてしまう。

確かに、死ぬことに恐怖を抱いていたコレーだが、それ以前に主人を害される恐怖の方がはるかに大きかった。


コレーはその写真を抱く。本当は怖くて、怖くて堪らない。抱く時が経つにつれ、手の震えが増していく。だがそれでも、コレーの決意は揺るがなかった。

コレーは写真をゆっくりと離した。そして元の場所にしまい、荷物を持って部屋を出る。そして扉を閉める時、そっと呟いた。


「さようなら」


ストンと、コレーの中にその言葉がおちた。これでもう、未練はないと言わんばかりに扉を突き放す。そしてカバンを持ってこの宮を去ろうとした時、足が止まった。


「で、んか」


目の前にはリアンが仁王立ちして構えていたのだ。


「違うでしょう、コレー」


そう言うとリアンはコレーに近づき、肩に手をおいた。


「そこは『さようなら』ではなく『またね』だと思うのだけれど?」


「……ぁ……」


ああ、そうだとコレーは思う。自分にはもう、帰る場所があるのだ。ならば、次にいう言葉は。


「はい、”また”会いましょう」


そう言うと、リアンは満足そうにコレーから離れる。


「ええ、コレー。次会う時を楽しみにしてるわ」


その言葉にコレーは涙がこぼれそうになって目頭を押す。そしてコレーは歩き出した。




***




とある通路の隠し部屋にて。


「う、うぅっ」


盗み聞きしていたランが泣き始めた。


「ちょっーー声抑えてくださいっ」


同じく盗み聞きしていたイベルは慌ててランを宥める。この部屋は使用人用のため、通路の声が聞こえると同時にこちらの声も向こうに聞こえるのだ。


「だってぇ、だって、いい話じゃないですか。むしろ、わたしが代わりたいくらいです」


「ちなみに、どちらと?」


「……両方、ですかね?」


その言葉にイベルは微笑を浮かべる。さっきの光景にふと、胸の奥にチクリと刺さるものがあった。もし、自分がリアンに隠していることを話したとして、リアンはコレーと同じく自分を信じて慰めてくれるだろうか。結局答えを見つけられないまま、宙を仰ぐのだった。





注意:この小説は恋愛小説ではありません

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