39. カラクリ
五日目。
シェターニアを取り戻したことにより無事に成人式は終わり、次期国王の座を明け渡す宣言がされた。
そして今、リアンは謁見の間に入っていった。
そこにはすでに王と王妃、シェターニア、その他公爵と僅かな人たちが揃っていた。
その中にはエランの姿もあり、少しばかりリアンの緊張を和らげてくれる。
「これで皆揃いました、陛下」
「では始めよ」
そのままリアンはシェターニアのいるところまで歩いき、残り約1メートルのところで留まる。
すると控えていたイベルがリアンに小ぶりな箱を差し出す。
そこには偽物に渡したはずの、蒼の石があった。
リアンは全く驚く気配を見せずに、それをイドルイデの緑と重ねる。
『我らここに同盟を誓う』
一方で完全に混乱しきっていたイベルは戻ったら早速尋問しようと密かに決意した。
***
「どういうことですかっ!」
「何が?」
自室に戻って最初の会話はこれであった。
「んなっ……とにかく、説明してもらいますからね!」
「どっから?」
「え? そんな前から色々やっていたんですか?」
するとリアンはえ? と言わんばかりに首を傾げる。
「………」
しばし流れる沈黙がイベルを突き刺す。そしてイベルは先ほどの発言を猛烈に後悔した。
(あ……完全に呆れてる……)
真っ青になるイベルに対し、何事もなかったかのようにジーッとこちらを見つめるリアンに気づき、イベルは切り替える。
「あ、えっと……リアン様があの人に渡したやつは偽物だったんですよね?」
「ええ。箱は本物だけど中身は偽物ね」
「いつ入れ替えたんです?」
「別に入れ替えたりしていないわよ。あなたに渡したときから偽物を入れていたから」
「さ、最初から!?」
「じゃあ、あの時の感動は何だったんですか!」
「か、感動?」
「とうとう国宝を預けてくださったという、王族の従者なら誰もが一度は憧れるこれの感動はっ、なんだったんだ!! 偽物なら最初から言ってくださいよ! 無駄に感動して損した気分ですっ!」
「え、えぇっと、ごめんね?」
「上の者は軽々しく謝ってはいけませんっ! そもそもなぜ疑問形なのです。謝るならちゃんと謝ってください! ていうか、これただの愚痴なので謝らなくて結構!!」
(……なんだろう、この茶番……ていうか主人に、しかも王族に愚痴ってる時点で色々台無し……)
「もともと目的はイドルイデに恩を売りつけること。同盟は保険だった。……でも姉上がね……」
つまりこの人はシェターニアを助けることででかい恩を売り、自分の背後に着かせることで玉座を手にしたかったのだろう。
女王にとってもイドルイデに後ろ盾になってもらうのは悪い話じゃないし、次の王を探すのに手間が掛からずに済む。ついでに自分で後ろ盾を得たのだ。王としては申し分ない。
だが、エランとしては同盟を成立させたく、リアンに最初から偽物を入れるように言った。結果的にエランは正しかっただろう。流石に本物の蒼の石を使ってでは面目ない。
「あー。そういうことですか」
そのセリフを聞くなりリアンは立ち上がった。
「これでいいわね?」
「ちょ、待ってください!」
「今度は何?」
「なんで僕じゃなくてコレーを交渉に呼んだのです!」
途端、沈黙が走った。リアンの、イベルへの視線が痛い。だが、イベルにはそれを気にする余裕はなかった。
「あなたじゃ目立ちすぎるから。それにコレーには仕事してもらう予定だったから」
「フゥ、よかった。無能すぎて厄介払いされたかと思った」
「……あなたの中で私という存在は一体どうなってるの?」
「王になるためなら手段を選ばない人」
リアンは硬直する。そんな人だったかなと今までの言動を振り返る。確かに、
「……間違っては、ない、かな」
「ハハハ。……ところで、ランは?」
「ああ、仕事中」
リアンは真顔になる。
どうもさっきから嫌な予感がする。
そしてそれは現実になった。




