4.決意
リアンは部屋に戻るなり頭を抱えた。
「……最悪だ」
するとコレーがリアンに紅茶を出した。
「どうされました、リアン様」
死んだ目をしたリアンの代わりにイベルが口を開いた。
「女王陛下に新しい縁談を持ってこられたんですよ」
「あら、あなたリアン様でしたの?」
「リアン様ではありませんが、あの状態のリアン様と話すのは相当難しいと思いますよ?」
リアンは椅子に座ってブツブツ呪文のような言葉を言いながら、放心している。
「そうですね。おそらく、あれはジルク様と婚約された時より酷いでしょうね」
「で、どうしてこうなったんです?殿下ならまだ婚約にもなっていない縁談なんて潰すのは簡単ずぎる」
遅れてやってきたランにイベルが説明する。
「相手が問題なんです。なんせ、三大公爵家アスコールの次男のリューグ様ですからね」
コレーはため息を吐いた。
「……どうりで死んだ目をしているはずです」
「ん?どういうこと?」
「アスコール公爵家とは一度婚約破棄をしているんです。さすがにもう一度は難しいでしょう」
さすがに二度も潰しては公爵家の顔に泥を塗ることになる。
それを理解したランは口を開いた。
「殿下でも?」
「難しいでしょうね」
「まだ、縁談話で済んでいるからいいんですがね」
「婚約したら結婚確定でしょう」
次々と追い討ちをかけられたランは絶句した。
「そこまでヤバイ相手なんですね……」
「これを断るには相当な理由がいるでしょう」
ランはコレーの台詞に食らいつく。
「例えば?」
「公爵家以上の相手、他国の王子殿下との婚約などになりますね」
それを聞いたランの顔が引きつった。
「……そりゃ死んだ目になるよ」
「まあ、リアン様は公爵家より帝国の第一皇子のことについて頭を抱えていらっしゃるようですが」
「ええ。今度このアングニュートルに留学する予定のようです」
「なんで他国の皇子。……!!」
ランの反応にイベルとコレーが頷く。
「そう、その皇子と婚約すればいんです」
「つまり、その皇子と仲良くなっておけ、ということなんです」
「……殿下には究極の難関」
「あの、リアン様ですからね。そりゃ、ああなりますよ」
「イベル……今、なんて言ったのかしら?」
突然、リアンの声が聞こえてイベルは機械のように振り返った。
「げ。リアン様?いつ、ご復活されたのですか?」
「イベルがさっき言った台詞のあたまらへんよ」
「ついさっきじゃないですか……」
リアンは気合いを入れ直すと宣言した。
「さあ、なんとしてでも、たとえイベルを女装させてでもやってやるわ」
イベルはなぜか女装するとリアンと瓜二つになるのだ。
「……今なんか不吉な単語が聞こえたのは、気のせいだろうか……」
イベルの呟きを目尻にリアンは行動を開始するのだった。




