36. 一日目 後編
お待たせしました。
煌びやかな照明の照らす大広間で貴族たちは談笑していた。
その中心にリアンはいた。
その表情は楽しんでいるように見えるが、心の中では「さっさと終わらないものか」と顔を顰めていた。
この夜会が始まってからしばらくして、ようやく救いの手が差し伸べられた。
「やあ、特使殿。久しぶり」
貴族の輪を割って入る存在に目を丸くする。
「っ! エクレール侯爵夫人、お久しぶりです」
そこには夫にエスコートされた姉がいた。
「これは、特使殿の姉君ですか」
エランの夫とは会ったことはあるが、非公式だったため、正式に顔を合わせるのはこれが初めてだった。
「お初お目にかかります、殿下。ルクシル・エクレールと申します」
「初めまして。リアン・ディア・アングニュートルです」
さて、とエランは貴族たちの方に視線を向ける。
「すまないね君たち、ちょっと下がってもらえるかな? 妹と話がしたいんだ」
エランはリアンに近づこうとする貴族たちを追いやる。
追いやられた貴族たちは不満そうにしながらも、渋々と引き下がっていく。
「随分やってくれましたね」
エランは不満そうな貴族たちを流し見て肩を竦める。
「ああ、全くだ。これで私の評判はどんどん下がっていくんだなぁ」
(自業自得でしょ)
「それは置いておいて、どう? シェターニアの様子」
そう言われてリアンはシェターニアの方を見る。
彼女はピンと背筋を張り、貴族たちの挨拶を受けていた。
「特に異常は見受けられませんが……なぜ?」
「なんか気になってね。ほら、きっと対策している奴らもいるだろうしって」
確かにそうかも知れない。
リアンは少しの異常も見逃さんとシェターニアの姿を見つめる。
「じゃあ、もういくよ」
「え」
リアンはギョッと振り返る。
このまま姉に戻られてはまた貴族に囲まれるではないか。
「これ以上いたら、本気でヤバいから」
エランはこちらの様子を窺ってる貴族を横目にいう。
「私もなんだけど……」
ちょうどエランにだけ聞こえる大きさで呟くが、エランは聞こえないフリをして去ってしまった。
エランがいなくなった途端、我先にと押し寄せる貴族たちを眺めて、リアンはこっそりため息を吐いた。
***
二日目。
二日目は午前中は視察、午後にシェターニアのお茶会に招待されている。
視察と言っても、決まったルートを淡々と馬車で進んで眺めるだけである。
視察が終わった後、着替えて案内された庭までいく。
その庭にはシェターニアと姉のエラン、金髪碧眼の少女が二人いた。思ったより少ない。
「本日はお招き頂き、ありがたく存じます」
「こちらこそ。どうぞ席についてくださいな」
リアンは促されるままに席に座る。
「初めまして、リアン様。エリシア・ファーレンと申しますわ」
「……アリシア・ファーレン、です」
「ファーレン……確か、公爵家の方、ですね?」
その言葉にアリシアとエリシアは頷く。
「その通りですわ」
「そ、そうですっ」
ファーレン公爵家は長らく中立をとっていた貴族だ。
そこでリアンはハッとなる。
ここにいるのは自分を除いてエラン、ファーレンの令嬢二人にシェターニアだ。
「お気づきになりましたか? リアン様」
クスリと笑うシェターニアを見てリアンは本能的に感じる。
「ここはわたくしの味方となってくれるものが集まった場所。ここで相談したいことがありますの」
この人は、
「リアン様。わたくしの証人となってくださらない?」
本物の王族だと。




