31. 警告
翌日。
「リアン……。きみ、昨日はホントなんてことをしてくれたんだい」
エランは頭を抑える。どうも、朝から頭痛がするのだ。
「それはこちらのセリフです、姉上。あなたこそなんてことをしてくれたのですか!」
そう言い返すリアンも頭を抑えている。
これは昨日のランの料理が原因であった。
「ランの料理を手伝っただけだよ」
リアンは「あなたが手伝うから、余計に悲惨なことになるのでしょう」という言葉を呑み込み、呆れた視線を遣す。
本来のランの料理なら、食べて寝た翌日にはあまり支障はないが、エランが手伝うと、暫くこの頭痛が続くようになるのだ。
ランの料理は下手だが、エランはそれ以上に下手なのだ。
尚、本人は正常な味覚を持ちながら、自分が料理が下手なのに気付いていない。
なぜなら、エランが手伝う相手がランだけに限られているからだ。
ラン自体が下手なのに、そこに自分が手伝っても自分が苦手なことに気づけないのだ。
「そもそも、なぜ姉上はこちらにいるのです」
今リアンたちがいるのは、リアンの執務室だ。
リアンは頭痛がする中で、必至にペンを走らせている一方、エランはソファーで寛いでいた。
(本当なんなのよ、この差は。できることなら私だってソファーで寛ぎたいわよ!)
思わずペンを強く握る。
「妹の様子を見るついでに、昨日の苦情を伝えに来た」
エランがそういう間にも、ペンはミシミシと不吉な音を立てる。
「そんなに強く握ると、折れるよ」
ボキッ
(……しまった)
「わぁー。とんだ怪力姫だ」
まさか本当に折るとは思はなかったのか、エランは目を見開いている。
「あ、そうだ」
突然、思い出したように、エランは懐を漁る。
「これ、あげる」
エランがリアンに渡したのは、一封の手紙だった。
「これは?」
「まあ、見てみて」
「………」
それには、この大陸の北に位置する小国群の政情が事細かに記されていた。
小国群は四つの国があり、よく戦争を起こしている。
なので、いつも定期的に姉から情報をもらっている。
アングニュートルはこの小国群から遠く、得られる情報が限られるためだ。
読み進むにつれ、リアンの顔は次第に険しくなっていく。
「ヤバルガがやけに大人しい……」
ヤバルガは小国群の東に位置する国で、この四国の中で一番疲弊していない国だった。
国境での小競り合いはしているものの、他の国を攻めるようなことはしていなかった。
ここ二ヶ月はずっとそうだ。
――何かが引っかかる。
何か、大事なことを見落としているような……
「それより、うちに来る準備はどう?」
リアンはハッと正気に戻った。
一見、この質問は妹が自分の国に来るのに楽しみにしているようだが、その真意を見抜いたリアンはニヤリと笑う。
「今のところはちゃんと出来ているわ」
「それは何より」
エランは満足そうに頷く。
「それとさ、気をつけた方が良いよ」
リアンはなんのことか咄嗟に思いつけず、首を傾げる。
エランはニヤリと笑った。
「どうやら、今回の連中は相当な手練れのようだ」




