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24. 大会議 後編


「何故、何故お前がここにいるっ!」


ゴーランは驚きのあまり立ち上がった。


「……兄さんの……為さ」


扉から飛び込んで来た人物は、息を切らして座り込んだ。


「ねえ……女王様」


彼は顔を上げた。


「これで……良いんだ……よね?」


彼は一枚の紙を女王に渡した。

その紙は第四皇子のコーリスを次期国王として認めるとあった紙だった。

帝国では四人のうち、二人の公爵と帝王のサインと血判が押されていた。


「コーリスッ!!」


コーリスと呼ばれた彼は笑った。


「父上。幾ら僕が父上の最愛の母に似ていても、父上はやり過ぎた。父上以外僕を王にしたいと思う人はいないし、僕は王位なんか望んでいない」


「コーリス!お前は王族になんだ。王になろうとは思わんか!」


そう言われてコーリスは顔をしかめた。


「思わないよ。僕は完璧までとはいかなくても王の権限、そしてその責任の重さを十分理解しているつもりだ。父上だってわかっているんだろう?王は責任の塊だと!」


コーリスは立ち上がった。


「王族や貴族は大抵みんな裕福な暮らしをしてるけど、それは無料じゃない。その税の分、期待されているんだ。その期待を裏切れば民は反乱を起こし、革命が起こる。帝国は無駄にデカイから各地で起こる反乱には手を追えない。その隙をついて隣国が攻めてくるかも。そんなプレッシャー中にただでさえ身体が弱い僕を放り込もうとしている。それがどんなに残酷なことかわかるだろう!!」


ゴーランはコーリスに憐れみの視線を向けた。


「コーリス、そんなことは臣下に任せれば良い。そうすれば楽に生きられる」


「それが僕は嫌なんだ!そんなことすれば臣下が勝手に政治をし、責任は僕に丸投げ。僕は信用を失い、いつしか臣下の顔色を伺うことになる。そんなことではこの国は分裂する!帝王という者がいて始めて帝国がやっていけるのに、それじゃ王位を兄さんに渡した方がずっといい……!」


コーリスは今までの迫力が嘘だったかのように、力なく地面に視線を落とした。


「僕はズルい。僕は小さい頃から身体が弱くてろくに動けなかったからずっと父上の様子を見ていた。だからこそ、余計に王になりたくなかった」


コーリスは手が震えているのがバレないように拳を握った。手に爪が食い込み、指の間から血が流れている。


「僕は卑怯だ。僕はただ父上と静かな田舎に住んでみたかった。本で読んで、憧れたんだ。……父上、これに署名と血判を」


そう言ってコーリスがゴーランに渡した紙は、ラディムを次期国王に認めるとあった紙だった。すでに四公(四人の公爵の総称)のサインと血判がある。


「お、前」


唖然とするゴーランを見て、コーリスは微かに笑った。


「父上の臣下、ちょっと脅させてもらったよ。……やっぱり僕は卑怯だ。父上、父上は僕のこと、嫌いになった?」


ゴーランは今にも泣きそうな顔をしたコーリスを力一杯抱きしめた。


「馬鹿を……馬鹿を言うな。そんなこと、あるわけがない。お前は、私が認められる唯一の息子だ。流石我が息子。まさか臣下がこんな一瞬で手のひらを裏返すとは……」


ゴーランがコーリスを唯一の息子というのは仕方なかった。なぜならコーリスの正妃であるアネゴラ以外は、ゴーランの後ろにある権力と財産に夢中で、ゴーランとの愛がカケラもなかった。


「おい、馬鹿親子。話は終わったか?終わったならさっさと血判を押してほしいんだが」


ふと聞こえるはずがない声に首を傾げながらゴーランが視線をあげると、そこにラディムがいた。


「ラディム!?お、お前、軟禁されたはずじゃ……」


元々実の父から愛されていないと知っていた為、さほど動揺せずラディムは口を開いた。


「安心しろ。ちゃんと軟禁はされた。ただ解放が早いだけだ」


「早いにも程があろう!」


普通ラディムの疑いが完全に晴れてからだすものだが、女王はラディムではないと確証を持っていた為、さっさと出したのだった。


「ゴーラン殿、血判は押しますか?」


女王はゴーランにナイフを渡した。

ゴーランは深く息を吸うと、コーリスを見た。


「……コーリス、最後の質問だ。本当に、王位は要らないんだな?」


「要りません」


あんなに弱かった子が、今ではこんな凛々しくなったのを喜ばしく、寂しく思いながらも、ゴーランは頷いた。


「……わかった」


ゴーランは親指を軽く切り、それを紙に押し付けた。




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