22. それぞれの思惑
大使が去った後、女装姿のイベルはサロンに向かった。
バンッ
イベルは扉を開けるなり、今までかぶっていたカツラを投げ捨てた。
「あーもうやだッ」
怒りで頬が紅潮するイベルに対し、サロンにいたリアンは笑っていた。
リアンが片手をあげると、たちまち侍女たちがイベルを元に戻した。
「どうだった?」
「最悪だったね」
イベルは勢いよくソファーに座った。
「ふーん。で?」
イベルが投げ捨てたカツラを片手で弄ぶリアンの前で、イベルは怒りを爆発させた。
「あの大使何なんだ!下心丸出しで気色悪いッ!」
「そりゃそうでしょう。うちの魔道具は経済的にかなり役立っているし、他国では未知のもの。しかも私の代理となると相当上の立場とわかる。たとえ国で繋がるとしても、個人の繋がりを確保したいのでしょう」
イベルは思いっきりしかめ面した後、気分を切り替えた。
「で、検討はついてるんですか?」
「ええ。でも、確定はしていないから、確かめたいの」
「それでわざわざ仕掛けるのですか」
「ええ。一見、帝国に徳は無いように見えるけど、実は大きいメリットがある」
***
会議室にて。
重大な会議が行われた。
会議の途中、茶に盛られた毒によりリアンが倒れた。
これにより会議は終了。警吏が犯人を絞った結果、犯人は魔道具機関の管理者ラクラと特定。
さらに毒の種類がナレイアスだったため、帝国に追及した。
ラクラには少し前、帝国の大使と密室で二人でいたとの証言が出たためでもある。
結果、大使は必至に首を横に振り、帝国は大使を切り捨て、多額の見舞金と大使の首が渡された。
***
「思ったより、あまり収穫がなかったわね」
ラクラもといリアンは倒れるリアン――イベルを見た。
実は会議に出ていたリアンはイベルで、ラクラはリアンだったのだ。
二人とも顔が似ているため、リアンがラクラをやっても違和感はなかった。
「それにしても、イベルさん、よく寝ますね」
本当はリアンが倒れる予定だったが、イベルがそれを許さなかった。
「ナレイアスだからね」
従者が毒でやられても平然としているリアンにコレーは言った。
「確証は持てたのですか?」
「それは十分持てた。だが、証拠にはならない」
「そうでしょうね」
リアンは小さく呟いた。
「本当、これだから王族関連は面倒くさいのよ」
***
「殿下」
ティナな声にラディムは振り向いた。
「なんだ」
「本当に、何もしないんですか」
あれだけ準備したのに?とその目が伝える。
ラディムは首を横に振った。
「何も、では無い。まあ、手紙を書くだけだかな」
ラディムはティナに手紙を見せた。
「もし俺がリアンの立場ならを考えてどう俺が動いたら有利になるか、できるかを考えた」
ラディムはその手紙を封筒に入れ、窓から来た鳥に咥えさせた。
鳥を無事に飛ばした後、ラディムは小さく呟いた。
「あいつが了解してくれればもっと簡単にできたのに……」




