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19. ランのお料理(2)

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


リアンたちはラディムのところを去ってから、リアンの自室に戻っていた。

コレーはリアンのお使いのため、ここにいない。


「で、リアン様。どうやってラディム殿下の容疑を晴らすんです?」


「証拠を探すなんて面倒だから、証拠を作るわ」


絡んでいるのが国の頂点だとすると、証拠を隠滅されている可能性が高い。


「どうせ、ラディム殿下ではありませんからね」


「どうやって作るんです?」


するとリアンはニヤリと笑った。


「ふふふ、ラディム殿下が軟禁されている今、ナレイアスで事件を起こします」


「ナレイアスはどこで手に入れるんです?」


「何言っているの?ナレイアスはもう、あるじゃない」


「え……?あ!侯爵から取ったやつか!」


イベルの台詞にリアンは頷く。


「今度、帝国の大使がこちらに来ることになっているわ。ナレイアスを流出してしまった詫びと、ラディムさんを切り離すために」


「その後にまた会議があるのよ。そこで仕掛ける。致死量ほどは盛らないから大丈夫よ」


リアンの毒盛ります宣言にイベルは頭を抱えた。


「なんか、この人(リアン様)の将来が心配になってきた……」


幸いリアンには聞かれなかったのか、怪訝そうな顔をしている。


「それで、誰に盛る気ですか」


「私」


「…………は?」


イマイチ情報を飲み込めていないイベルに、リアンはため息をつく。


「だから、私」


「いや、わかってる。その発想なんなの?自殺行為でしょ!一国の姫がやっていいことじゃないよッ!」


イベルのツッコミにリアンは冷えた声で答える。


「それを踏まえて私が一番いいと思っているわ。そうすれば私は被害者認定され、刃は別のところへ向かう。罪人も架空のものを作れる。私の企業の従業員が脅されたとでもすれば、私の失態にはならない」


「その従業員は?」


「イベルも知っているでしょう?私の企業には余計な戸籍がある。私のためのね。他にも、もしもを想定した場合のための戸籍がある。私が生まれた時と同時に二人の人物が生まれた」


「片方は従業員としての戸籍も入れている。その戸籍を使う」


それでは殿下の逃げ道が減るとイベルは反論しようと口を開いたが、横槍が飛んできた。


「リアン殿下!」


元気な声に振り返ると、そこにランがいた。……片手に怪しいものを持って。


「ラン、どうしたの?」


「ふっふっふ、ジャジャーン、クッキーですっ!」


ゴンっと勢いよくテーブルに置かれたクッキーに、リアンは目を丸くさせた。


(ランの手作りにしては見た目が普通……)


ランの手作りは基本的、見た目で目眩がするほどだが

、今回はいたって普通のクッキーだった。そのせいだろう。油断したのは。


「「んぐっ!!」」


いきなり口にクッキーを突っ込まれたリアンとイベルは、すぐに蒼白になった。


((……味がしない))


このクッキーはチョコチップも砂糖も使っているはずなのに、味がしないのだ。

それに加えてパサパサな食感は口の中の水分を奪う。

さらに口に突っ込まれたことにより、二人は呼吸困難に陥った。


「あれ?二人とも、どうしたの?」


顔を青くしたり赤くしたりと忙しい二人の異変を感じたのか、ランは訝しげな様子で二人を見た。

そこに救世主(コレー)が現れた。


――カチャリ


扉が開いた途端に見えた景色の状況を一瞬で把握すると、コレーはすぐに水を二人に飲ませた。


「「ゴホッ」」


コレーは無事に復活したと確認すると、ランに視線を向けた。どうやら今年の冬はブリザードが吹き荒れるようだ。


「ラン?」


珍しく殺気に似たオーラを纏うコレーにランは戸惑った。


「こ、コレー?」


「今すぐ私の部屋にいらっしゃいな」


そのセリフと氷のように貫かんとする視線で、ランはコレーの地雷を踏んだことに気づいた。


「は、ひゃいッ!」


その迫力に押されて舌を噛んだランはこの後、ずっとコレーに説教されたそうだ。

その翌日、リアンはランの姿を一度も見かけなかった。





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