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2.婚約破棄 後編

ブックマーク、ありがとうございます。


誓約書→契約書



ウィケル公爵のセリフ

リアン様→リアン殿下


リアンはカルナー先生を見つめた。

リアンは幼い頃から王族としての教育を積んでいるので、仮面の下の感情を読み取るのがうまかった。

リアンはカルナー先生の感情を読み取る。


(…恐怖と怯え、ね)


カルナー先生は平民でもう、数十年は学校に勤めていた。だからか、仮面を作るのがうまく、なかなか見抜ける人はいないだろう。

普段は明るく、常に笑っている人だが、そんな人が仮面の奥深くに感情をしまうのは相当の理由があるはずだ。

常人なら、ここで諦めるだろう。

この厚い仮面を取らせるには相当な準備がいる。

だが、今回は相手が悪かった。なんせ相手はリアンなのだ。

当然リアンはそんなことを予測済み。とっくに対抗策はできていた。


「カルナー。お前はリアンがシェイラを虐めたところを見たんだってな」


「…確かにリアン様はシェイラ様のドレスを汚しておられるところを拝見しました」


リアンはジルクの勝ち誇った笑みにイラッと内心ドス黒いものが溢れ出た。

婚約破棄は望むところだ。だが、王族としての品位を落とす真似は我慢できない。王族としての品位を落とすことは、自分の母親の品位も落とすこととなる。


チラチラとリアンに疑いの色が入った視線が刺さる。

リアンはそれらを無視すると従者に合図する。

すると三大公爵家のウィケル公爵が重々しく口を開く。


「リアン殿下は本当になされたんですかな?」


「いいえ」


「その証拠は何処にございますか?」


「今、出しましょう。私がやっていない証拠を」


リアンの従者がリアンに書類を渡した。


「では、始めにドレスの件ですが、これは事故です」


「ほう」


「このドレスはシェイラさんが足を私の机にぶつけた時にインク瓶が割れてしまい、中身が溢れたのを彼女がドレスで拭いてしまったものです」


ジルクは何言っているとばかりにリアンを睨みつける。


「この誓約書にインクについての弁償代等の伯爵と女王様の署名があります」


「他はございますかな?」


「ええ。続いて教科書の件についてですが、こちらは彼女の鞄の中で水筒の水が溢れたようです。その時に水浸しになってしまったとか。こちらはすでに新しいのを先生から配布されているはずです」


「嘘だ!」


「その証拠に彼女の教科書が水浸しになった翌日、彼女が新品の教科書を持っていた、という目撃情報があります」


ジルクは口を半開きにしたまま微動もしない。


「あとはネックレスの件ですね。こちらはどうやらジルクがシェイラさんに贈ったもののようですね。婚約者を差し置いてシェイラを優先するとは、いい度胸ですこと」


これを聞いたジルクの視線が泳いだ。


「これは彼女の学校の帰りに小動物を発見し、その動物を触ったところ、警戒され噛まれた拍子に慌てて手を離し、その小動物の爪がネックレスに引っかって糸が切れてしまったようです」


「ではなぜカルナーはリアン様が虐めたと申し上げたのでしょうか」


「それについてはジルクがカルナー先生を脅して利用したようですね。証言しなければ彼女の父が勤めている店を潰すとのこと。既にカルナー先生から契約書を受け取っています」


それを聞いた貴族たちはジルクたちに疑いの目を向け、ジルクは非難の声を上げる。


「俺はそんなことはしていないっ!!こいつらがカルナーが見たと言ったんだ」


ジルクの無様な言い訳に公爵がため息を吐く。


「…これを見る限りジルク殿の方に非があるようですな」


「違うっ!確かに彼女は虐めたんだ!…お前たちが最初に証言したんだろう?」


すると取り巻きたちが一斉に否の声を上げた。


「…リアン殿下、婚約は破棄されますかな?これはあまりにも酷すぎる」


「私としては今すぐ婚約破棄をしたいところです」


公爵はリアンの即答に乾いた笑みを浮かべる。


「この案件については陛下に提出するとしましょう」


「もう、してありますよ?」


「…それ程までに婚約がお嫌いだったのですな」


その台詞を言う公爵の顔は疲れ切っていた。





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