18. 可哀想な、ラディムさん
訂正します。
男性不信→婚約嫌い
「ラディムさん」
「リアンか」
リアンは現在、ラディムが軟禁されているところに来ていた。
「気分はどうですか」
「……最悪だな」
「でしょうね」
即答するリアンにラディムは微妙な顔をする。
「……それで、話とはなんだ?」
リアンは今回、目的があってきた。
「今回のことです。私は微塵もあなたが犯人だとは思いません」
「何言っている?」
「とぼけるのが上手ですね。ですが、今までのあなたの人格、アレは演技でしょう?」
ラディムは目を細めた。
「気づいてたか。自信あったんだが」
「それは良しとして、今回は取引を持ち込みました」
それを聞いた途端、雰囲気がピリッとしたものに変わった。
「あなた方の国、内乱はまだ、収まっていませんね?実際、私と侯爵に攻撃を仕掛けました」
「なぜ分かる?」
「この事件、あなたでないならあなたを狙った帝国の誰かであるのは一目瞭然。そこから考えれば、簡単に推測がいきます」
それを聞いたラディムは笑いだした。
「どうやら、甘く見すぎていたようだ」
ラディムはすぐ、緩んだ顔を引き締める。
「取引はなんだ」
「私が、あなたの国の内乱を平和的に終わらせましょう。……そのかわり、私との婚約を破棄して頂戴」
「……お前が先にその条件をクリアすれば、こちらも婚約を破棄しよう」
リアンの口が弧を描いた。
「だが、いいのか?俺は帝国の皇子だぞ」
「構いません」
「それでいいのか?」
「勿論です」
即答するリアンにラディムは眉を寄せる。ラディムは男だ。こうして婚約破棄を条件にだされ、確認にも即答されると男としての自信を失う。たとえ、理由がただ婚約が嫌いだとしても。
「では、失礼しますね」
そんなことは微塵も知らないリアンは、颯爽と部屋を去って行った。
***
「ふふふっ、殿下ったら、見事に振られましたね」
見事にリアンとラディムの会話の中で気配を消していたティナが、とても愉快そうな顔でラディムの方にきた。
「お前は黙っておけ」
「だって。殿下が振られるなんて、初めてですもの」
「……」
「しかも、よりによって、王女様になんて!」
意地悪く笑うティナに、ラディムはさらに自信を失ってゆく。
「黙ってくんないかな?それ、地味に傷つくんだよ」
「まあっ!!」
途端にティナの目が輝く。ラディムは「しまった」と呟くが、もう遅い。
「殿下、恋に目覚めましたの?それは傷つきますね。初恋ですもの。なれば、私が殿下の名誉を挽回する手伝いをします!私、姉が欲しかったのです!!」
(……これは恋ではなく、男としてのプライドが折れただけなんだが)
いくら、ラディムがそうだとしても、ティナには伝わらないどころか、おそらく何しても伝わらない。
暴走したティナを止めるのは、相当大変だ。
「いい加減、黙ろうか。もうすぐ夕食だ」
恋の話となると、口が止まらなくなるティナにラディムはため息を吐く。
「黙りませんッ!黙れませんッ!いつも隙のない、殿下をからかえる、滅多にない機会なのですッ!!」
ラディムは笑った。されど、目は全く笑っていなかった。
「せっかくですので、もっと傷を抉っ〜〜〜ッ!〜〜〜〜〜ッ!」
咄嗟にティナの口を塞いだラディムが絶対零度の空気を纏いながら、ティナに質問した。
「もっと傷を、なんだって?」
するとラディムが本気なのを感じたのか、ティナはものすごい勢いで土下座をした。
物凄い勢いで土下座したにもかかわらず、全く失われていない気品は、慣れと手際の良さを感じる。
「次はない」
チッ。
「今、舌打ちしたか?」
ラディムはティナの方に振り返った。そこにはまだ、土下座したまんまのティナがいた。
「いいえ。全然、全く、さっぱり、微塵も、これっぽちもしていませんとも」
(よく、こんな状態でそんなこと言えるな)
ラディムはティナの図太さに呆れた顔を浮かべる。
「まあいい」
ラディムがそう言うたびに、光の速さで頭をあげるティナにラディムは口を開く。
「さっさと夕食の準備しな」
最終的にはティナを許してしまうラディムであった。




