16. リアンの帰り
時は少し遡る。
リアンがリューグのところへ行った時であった。
イベルは一人、考え事をしていた。
(リアン様が最後、ナライマを監視するように言ったのはどういうことだろう。いつもならここまで釘を刺したりしないからな)
すると目の前で衛兵が走ってくるのが見えた。
「イベル様、大変です……!」
「どうしたんですか」
「それが……イルオール侯爵が倒れました」
「ッ!!」
(それか!!)
「今すぐいきます」
イベルは早足で王宮から出て、牢に向かった。
そこには、血を吐いて倒れたナライマがいた。完全に意識を失っている。
「今すぐ医師を呼べっ!ただし、秘密裏に」
ナライマが倒れたとなると、ラディム殿下がうたがわれる。まだ、犯人が確定していないうちは、迂闊にラディム殿下を犯人にするわけにはいかない。国家問題となるからだ。
(ああ、クソ、どうなってる。リアン様、頼むから早く帰ってきてくれ!)
イベルは内心頭を抱えた。
***
リアンは馬に乗りながら思い出していた。
(そういえば、説明がめんどくさくてイベルにはなにも言っていなかったわね。イベルなら大体想像できるだろうけど、少し速めに飛ばすか)
リアンは馬の速度を少し上げた。
今頃イベルはどうしているかな?
そんなことを考えているうちに門が見え始めた。馬の速度を落とした先に、イベルが立っていた。
それを見たリアンは馬を止めて、馬から飛び降りた。
「リアン様!」
イベルは早速リアンを確保した。
「ちょっといいですか?」
「ええ。私もあなたに用がありますから」
イベルはリアンをサロンに連れていった。
***
「そーいうのは早くいってくださいよっ!」
イベルは全く、これっぽちもなにも言わなかったことを反省する気配のないリアンに、頭を抱えた。
「それはそうとして、イルオール侯爵はどうなったの?」
「リアン様のいうとおり、ナレイアスで意識を失っています。幸い致死量は飲まされていなかったようです。さらに王都では侯爵の噂がながれ、一向に止まる気配がありません」
「やっぱりね」
「にしても、分かり易すぎますね」
リューグは仮にも公爵家の子供だ。リューグが本気を出せばリアンがここまで暴くには、相当な時間と労力が必要だろう。
「たしかに、ばれたくないのなら、ね」
リアンの台詞にイベルは血の気が引く気分だった。
「……まさか」
「ええ。おそらく、リューグはバレて欲しかったのでしょう」
すると突然、扉が大きな音を立てて開いた。
「イベル様ッ!って、リアン殿下も!?失礼しました!」
「なにがあった」
イベルが衛兵を落ち着かせると、衛兵は話し始めた。
「ラディム殿下が、先ほどイルオール侯爵暗殺未遂により、逮捕されました」
イベルは今度こそ、蒼白になった。




