15. 晴れぬ空
大変、長らくお待たせしました。
「聞きたいのはそれだけですか」
リアンは紅茶を飲むと言った。
「あなたに説明してほしい。…この事件の詳細を」
なるほどとリューグは内心ため息をついた。この人は試しているのだ。私たちが本気でこの人と同盟を組むのか。
リアンのことだ。大体予測できているのだろう。
正直に言って同盟を続けるか、嘘をいい、同盟を破綻させるか。リューグはどちらも選ばなかった。
「ラディム殿下が留学する少し前、突然、僕に会いたいという人物が現れました。その人が交換条件で出したのが、ラディム殿下の失脚でした」
リューグはナレイアスを見た。
「それで思いついたのがこれでした。……侯爵に感染型ではないナレイアスを飲ませ、リアン殿下主催のパーティーで侯爵に感染型をつけ、もし、リアン殿下に感染しなくても、侯爵が餌食になれば当然、ラディム殿下が疑われます」
「公爵に濡れ衣をきせようとしたのは、ラディム殿下が疑われるとき、わかりやすすぎて逆にラディム殿下ではないのではないか、と疑われるためです。ラディム殿下はナレイアスの出産地の皇子ですし、内乱が終わったばかりです。うちの国を巻き込もうとしても、なんの不思議もありません」
「その、ある人物とは?」
「わからない。フードを深く被っていて、顔は見えませんでしたし、声も中性的で男性か女性か、わかりませんでした」
(厄介なことに、嘘と本当を混ぜているわね)
リアンは脳内で計算を始める。
(リューグと話すなんて人は限られるし、公爵家にフード被った怪しい人なんていたら衛兵に即捕まる。そんな下手な嘘を言っても庇う相手となると…)
すぐさま犯人を絞り込んだリアンはリューグに微笑んだ。
「そうですか。では私はこれで失礼します。あまり長居していると、(ラディム殿下が)面倒ですので」
「そうですか」
リューグは立ち上がり、従者を呼ぶ。
その従者とはある程度の知り合いなので、リアンが驚くことはなかった。
従者――もとい、パトラの横を通るとき、パトラが微かに口を開いた。
〔今度、私と会う機会をください〕
リアンは目を伏せると、すぐパトラを横切った。
***
あれで伝わったのだろうか?
パトラは少しづつ離れていくリアンを見つめていた。
「パトラ」
不意に声をかけられ、パトラはリューグに振り向く。
「なんでしょう」
パトラを見つめていたリューグだが、すぐに視線を外した。
「……なんでもない」
それだけを言うと、すぐに去っていった。




