11.夜会の準備
「…やだな」
今日はラディムの本格的な勉強が始まる。ラディムはその行き先にリアンがやっている魔道具開発アルノに見学を希望したのだ。先日錆びにくくするポーションを手にしてから気になっていたらしい。…リアンにとっては良くも悪くもある。
「リアン、どうした?」
報告を受け、しばらく放心するリアンにルーシャが声をかける。
「いいえ、なんでもないわ。それよりこれだけど」
リアンは紙を広げる。そこには新しい魔道具の提案と設計図があった。
ルーシャは伯爵の娘でその家に男子が生まれなかったため、男の子のルークとして育った。故に口調が男性っぽいのだ。ルーシャは今、この魔道具の企業の副会長だ。
「…こういう提案はリアンがだすのか?」
リアンの隣を当然のように陣取っているラディムが言った。
「基本的にはみんなの提案を集め、それを設計図にして私がまとめているだけよ」
ラディムはあの後からリアンによく近寄ってくるようになった。今まではわがまま放題だったらしく、多くの貴族から感謝されていた。
当のリアンは迷惑していた。
(当然狩り行きたい、とか、狩ったものを調理しろ、とか嫌がらせじゃない)
だがラディムはリアンの心知らず。
これは昼食や夕食でもそうだ。
毎日毎日誘いが来る。さずがに毎回は断れず、受けるたびに神経を削る。その時食べたものを覚えてないほどに。
そしてその日に限っていつもより爆睡する。
だが、良いこともある。リアンが誘いを受けるたびに、ラディムの侍女のティナから手作りのお菓子を貰う。
これが美味しいのだ。さすがラディムの侍女をしているだけある。
…ランにも見習ってもらいたいものだ。
*
こうして留学から何日かするとリアンとラディムの婚約の噂が飛び交う。
もうほぼ確定のようなものだ。
さらに、ラディムから婚約の申し込みがあった。それは国も承知しているという。
リアンは頷いた。公爵家リューグより女王になれる確率が高いからだ。…両方限りなく低いが。
だが、リアンはほぼ確実にできると踏んでいた。
*
リアンは手紙を見てため息を吐いた。
ついに、この日が来た。
一週間後、リアンは夜会を開かなければならない。この国には16から他国貴賓が来れば、王位継承権第一位は夜会を開かなければならない。リアンは17だ。
リアンが継承権が高いのは姉が問題児だからである。彼女は16で隣国のイドルイデに嫁いで行った。故に仲がいい。
リアンは立ち上がった。
夜会の準備のためだ。
料理長に夜会を告げ、音楽隊を選別し、部屋の装飾をやらせる。
寝る間を削って二桁の招待状を送った。当然、ラディムも中にある。
警備員の配置を再確認し、いよいよ始まる。
イベルの準備は終わったかな?




