10. 研究室にて
長くなりました。
翌日、リアンは魔道具の商売の為に、研究室に来ていた。この研究の人員は殆どが女性だ。それはリアンが男性不信のためである。
「あ、リアン殿下」
部屋に入ってきたリアンに気づき、作業していた人達が礼をとる。
「あれはできたの?」
「もちろん、出来もなかなかいいですよ」
「見せて頂戴」
「これです」
従業員が持ってきたのは絨毯だった。その絨毯は特殊で、その絨毯から季節に合わせて冷気や熱が出るようになっていた。性能は勿論、見た目も清楚で上品なデザインになっている。
「…これならいけそうね」
リアンは絨毯をじっくり見てから言った。
「今日中で後どれくらいできるかしら」
「後、早くて二、三枚かと」
「ギリギリね」
「そうですね。もう少し、人手を確保しておきます」
「そうして頂戴」
作業員から離れてそのまま歩いていく。
「殿下、また注文が来ました」
すると別の作業員から声がかかった。
「今度は何?」
「ラリィが30に、ルナが20です」
ラリィとルナは魔法食品で、食べると疲労回復などの効果がある特殊な食べ物だ。
「またなの?」
「ええ。最近多いですね」
「…期間はいつまで?」
「来週末です」
「なら、別にまわして」
「了解です」
するとまた声がかかる。
「殿下、光鳥のことですか」
「なんですって?」
光鳥と聞いてリアンはピクリと反応する。
光鳥は元々人懐っこい火鳥に特殊な光粉を飲ませることにより、暗いところで全身が光るようになる。
メリットは自動で光ることや、冒険者などで常に松明を持っていたのが光鳥になることで、両手が空くことだ。何が起こるかわからない状態で片手しか使えないのは心細い。
デメリットは夜になっても光ること。でもそこは特殊なアクセサリーをつけることでその効果を抑えられる。ただし二週間に一回はそのアクセサリーが吸収した魔力を放射しなければならない。
「光鳥の改良に使う光粉ですが、在庫がなくなってきています」
そういえば、最近光粉がなかなか見つからなくなっていると聞いたことを思い出したリアンは、少し考えてから言った。
「…第二騎士団はそのまま探索を依頼。それから第三騎士に周辺の岩山に探索を依頼して」
「了解」
「リアン」
「今度は何…って、ラディムさん!?」
リアンはラディムに気づくと微かに跳ねた。
「今頃か」
(そういえばラディムはお茶会の招待、殆ど断っていたわね。…そりゃ暇ね、明後日までは)
明後日からはラディムは本格的に体験をする。
リアンはラディムに訝しげな目を向ける。
「何故ここに。こちらは関係者以外立ち入り禁止ですが」
「いや、俺は関係者だ。既に女王にサインをもらっている。…にしても、物凄い入るのに手間がかかるとこだな」
リアンの目の前に許可書をみせるラディムに内心ため息をこぼす。
「当然でしょう。国家機密ですから」
ここでは他国と違うやり方で魔力付与しているので、バレたら国の半分の利益を下げる。
それでも、まだ半分というのが凄い。普通なら8割は損するだろう。
「その国家機密以外の観察は認められている」
「なら、いいでしょう」
ラディムは貴賓だ。ここの作業員に押し付けることができず、リアンは内心かなりのダメージをくらっている。
ラディムは辺りを見回す。
「にしても生活用具ばかりだな。戦闘用の物はないのか」
「ええ。それが流出してしまうと戦争が起こりますから。基本的には生活用具ばかりです」
ラディムが目を見開く。
「それ以外もあるのか」
「あると言っても、錆防止などの効果があるポーションなどですね」
「そのポーションはどう使うのだ?」
ラディムの目の奥に野心がないと感じたリアンは説明を始めた。
リアンが感じることしかできないなんて初めてだ。だから余計慎重になる。
「その効果を付与したい対象にポーションをかけ、10秒置いてから水で洗い、拭くだけです。それで一週間くらい持ちますね」
「もっと期間が長いのはないのか」
「そうなると大量生産が難しくなります。付与師も魔力が無限にあるわけではありません。これでも、最大値です」
付与師は魔力付与を専門としている人だ。
「なら、試しに使ってみよう」
ラディムはリアンが反応するより先に短剣を取り出す。
ラディムは王位争いが凄いところにいるので、短剣の装備は自衛のために許可されている。
ラディムは短剣に錆防止のポーションをかけ、10秒待って水で洗った。
「な、何しているんですか!」
リアンは混乱して叫んだ。
「見ての通り、試してるだけだが」
ラディムは短剣を拭きながら答えた。
それを見て、帝国にこれの便利さを知って貰えば儲かるのではないかと考え、止めるのをやめた。
「これでいいんだな」
「え、ええ」
すると今度は水をかけた。そしてそのまま放置する。
何十分経っても水をかけた時と同じ状態の短剣を見たラディムは目を見張った。
「これは凄い。…200。200本欲しい」
「え」
いきなりのご注文の数にリアンは一瞬戸惑う。
「ざ、在庫を確認してきますっ」
作業員が真っ先に扉の奥に入っていく。
(ナニコレ、アラテノイジメデスカ?)
あまりの作業員の素早さにリアンは固まる。
「いつまでにですか」
「今日中にだ」
「ざ、在庫、150です」
今から作っても、ポーション専用作業員だけじゃ足りない。材料もつい先日注文したばかりで、今残っている分でギリギリだ。できれば残りを別に回したかったが、仕方ない。
「手の空いている全ての作業員にポーションを優先するように言って。それと残っている材料も全て使って頂戴」
「りょ、了解ですっ」
こうして無事にポーション200個売られたのだった。




