1.婚約破棄 前編
不定期になりますが、よろしくお願いします。
「リアン・ディア・アングニュートルっ!」
卒業式後のパーティ会場で指名されたリアンは内心溜息を吐きながら婚約者を見る。
「…そんな大声を出すなんてはしたないですね、ジルク」
ジルクはリアンの翡翠の目を鋭く睨みつける。
「本日をもってお前との婚約を破棄させて頂く」
その言葉にリアンの口の端が僅かに上がる。
(待ってました〜婚約破棄♪)
その嬉しさに声がうわずらないようにリアンはかつてないほど神経を使い、必死に抑え込んだ。
「それはどういうことでしょう」
「お前が我が愛するシェイラを虐めたからだ!」
(やはりね)
「その証拠にシェイラは卒業式に出席できてないじゃないかっ!」
リアンはジルクが浮気していたのは知っていて、放置したのだ。
それは婚約破棄をする為。勿論、ジルクが事実を作り上げると知っていて、だ。
リアンはこのアングニュートル王国の第二王女である。
対するジルクはアスコール公爵家の長男である。
だからジルクが婚約破棄するにはそれなりの理由がいる。
シェイラは伯爵令嬢だ。
だが、甘い。
「その証拠はどこにあるのでしょうか」
「あれを出せ」
ジルクが一言言うと彼の取り巻きがリアンの前に次々と証拠品を並べていく。
インクの染みたドレスに水浸しになった教科書、バラバラになったネックレス。
リアンは全ての証拠品に目を通した後、口を開いた。
「では、私がやったという証拠はどこにあるのでしょう」
「リアンがやったところを見たという証人がいる」
ジルクが勝ち誇ったような顔をして自分の横を指す。
見ると全員ジルクの取り巻きだった。
ジルクの性格からすると、証拠品をこれだけ出しておいて証人がこんな適当なはずがない。
だからリアンだけが気付けた。
(…それだけの筈がない)
会場にいるその他の人たちが訝しげな視線をジルクに向ける。
「あともう一人いる」
そう言って出てきたのはうちの学年の先生のカルナーだった。




