無重力
私は長い間生きてきた、
地面に這いつくばって生きてきた、
地球に引っ張られて生きてきた、
大地と共に生きてきた。
私は空を見上げていた、
空には数多の子供がいた、
皆んな楽しそうな顔をして、
自由自在に泳ぎまわっていた。
私は地面から離れられず、
ただ両手ばかりをぱたぱたと動かしてみたりしたけども、
それごときで飛べるものでもなく、
今日だって空を見ている。
やがて大きくなって、私は理科を学んで、
本当はみんな地面に引っ張られるはずなのよ、と教わった、
それがただしいはずなのに、
あの子たちはなぜ空を飛べるのだろうか。
私は長い間生きていく、
子らもいつか地に落ちて自分の足で歩いていく、
私は長い間生きてきた、
ずっと自分の足で歩いてきた。
愛されていると知っている、
愛されていると知っている、
愛されていると知っているのに
「愛されない」と涙が言うのはなぜなんだ。
なんでなんだよ。
教えてくれよ。
疲れただけでハグをしてもらえる、
眠る前にひたいにキスをもらえる、
おにぎりを握りなおしてもらえる、
何も言わずに話を聞いてもらえる、
寂しいときは頭をなでてもらえる、
それだけのことをしてもらえる、
もらえない、もらえない、
私が悪い。全部私が悪いのだ、と楽な解決をして
古い熊のぬいぐるみと抱きしめあった。
これも全部思春期だ、
大人になるうえで必要だ、
保険の先生も言っていた、
こぼれる涙も思春期だ、
ホルモンの暴走の作用点だ。
だから悲しくなんて無いんだよ。
あいも変わらず空を飛び続ける子らがいた、
親に大事にされた子供には重力がかからないんですって、
地球よりも強く抱き上げてくれる父が母がいるから。
私は長い間生きてきた、
地面にはいつくばって生きてきた。
重力の作用点は物体の中心にあるように書きましょう。




